超高齢化社会に不可欠な仕組みとして期待を受けて誕生したものの、使い勝手の悪さが指摘されて久しい。
成年後見制度の利便性向上を図るため、小泉龍司法相が民法などの見直しを法制審議会に諮問した。弁護士や司法書士、社会福祉士、親族らが後見人となって認知症の人や知的障害者らを支援する制度であり、使いやすさの観点から速やかな改善を求めたい。
後見制度は特定の人の法的行為を制限する明治以来の禁治産・準禁治産制度を廃止し、2000年に導入された。
後見人は本人に代わって預貯金管理や福祉サービスの利用手続きをしたり、契約を取り消したりできる包括的な代理権があり、日常生活の見守りを担うこともある。本人や家族が利用を申し立て、家庭裁判所が後見人を選定する。
高齢化の進展で成年後見のニーズは高まるが、現在は利用者本人が亡くなるまで事実上中止できない。後見人が財産管理など幅広い代理権を持つため、利用者の自己決定権が制限されかねないとの懸念もある。
団塊世代が全員75歳以上となる25年には、認知症の人が700万人前後になるとの推計があるにもかかわらず、成年後見制度の利用は22年末で24万5000人にとどまる。
知的・精神障害者を合わせると支援が必要な人は「1000万人を超える」との見方もあり、制度を利用しやすくする改正は喫緊の課題だ。
収入や資産が少ない人、身よりのない高齢者にとっては費用負担が重くのしかかる。利用者は生涯、月額2万~6万円が「相場」とされる報酬を後見人に払い続けなければならないからだ。
片や「報酬が少額だ」として後見人に手を挙げる弁護士や司法書士は少なく、利用者との隔たりの大きさを感じさせる。
市区町村が、利用者の生活状況に詳しい親族以外の人がなる「市民後見人」の養成を図りながら、不足を解消していかねばなるまい。
法制審では、相続の取り決めなどライフイベントの完了時点で利用を終了できる仕組みの導入を検討するという。
遠方への転居や、資産を使い込まれたなど、限られた理由でのみ後見人の辞任・解任を認める現行ルールの在り方も論点となるようだ。「身の回りの世話が必要になったので、弁護士から福祉関係者に引き継ぐ」といったケースなど、交代を柔軟に認める是非を探ることになろう。
「後見人の反対で、利用者が望む家族旅行に行けなかった」といったトラブルも少なからず起きているようだ。利用者の判断能力に応じ、後見人の代理権を制限するかどうかも議論の対象となる。
多様化するニーズを踏まえ、利用者の尊厳や意思を最大限に考慮しながら制度を抜本的に改善していくことが必要だろう。