「同盟のネットワーク深めていきたい」…日米首脳会談“厚遇”の理由(2024年4月11日)

アメリカを訪問中の岸田総理が現地時間10日午前、バイデン大統領としました。

首脳会談後、岸田総理は、ホワイトハウスで開かれたバイデン大統領夫妻主催の公式晩さん会に裕子夫人とともに出席しました。ポール・サイモンのライブなどで盛り上がった晩さん会ですが、冴えていたのは、岸田総理のスピーチでした。

岸田総理:「『主賓が誰なのかわからない』と妻の裕子が言っていました。だから、自分の席が、大統領の隣だと知ったときは安心しました」

そして、世界中に熱狂的なファンがいる人気ドラマ『スター・トレック』のオープニングを引用し、日米関係の親密さを強調し、スピーチを締めました。

岸田総理:「日本とアメリカは、かつてないほど強いつながりを持っています。『スター・トレック』からのセリフで締めくくりたいと思います。『勇敢に行く、誰も行ったことのないところへ』。勇敢に行きましょう。乾杯」

ホワイトハウス主催で公式晩さん会が行われるのは、岸田総理の訪米が国賓待遇だからです。アメリカ側に国賓として招かれた日本の総理大臣は、これまで4人しかいません。4人に共通するのは、日米関係が大きな節目を迎えたとき。特に安全保障の面で、新たなステージに移るタイミングでした。

岸田総理に関しても、バイデン大統領の発言からは、安保関連への期待がうかがえます。

アメリカ・バイデン大統領:「文雄、ホワイトハウスにおかえり。執務室で再会できてうれしい。防衛や技術分野も含め、さらに関係を深める方法を話し合いたい」

岸田総理は、首脳会談で武器の共同開発や指揮統合など、安全保障のさらなる強化を約束しました。

共同会見でバイデン大統領は、こう述べました。

アメリカ・バイデン大統領:「総理ご自身を称えたい。真の指導者です。あなたはアメリカとともに立ち上がっています。南シナ海を含む、航行の自由と台湾海峡の平和と安定のためです。総理、このパートナーシップを通じ、同盟関係を強化してきました。いま、日米同盟は全世界の指標になりました」

ロイター通信:「中国は、アメリカの同盟国を孤立させようとしてきた。しかし、日米会談で、バイデン大統領は、シナリオをひっくり返し、中国を孤立させようとしている」

その中国は、11日の会見で反発しました。
中国外務省・毛寧副報道局長:「(日米の共同声明は)台湾や海洋問題で、中国を攻撃し、中国の顔に泥を塗り、中国内政を横暴に干渉している」                   
  

ホワイトハウス前にいるワシントン支局の梶川幸司支局長に聞きます。

Q.バイデン大統領が国賓として岸田総理を手厚くもてなす理由は、何なのでしょうか

ワシントン支局・梶川幸司支局長:私も共同記者会見の現場にいましたが、バイデン大統領が、冒頭、改めて「同盟国との関係を再建する」と述べた言葉が非常に印象的でした。

価値観を共有する同盟国との関係を重視するバイデン政権にとって、気になるのは、このところ高まりつつある“内向きな”世論です。例えば、ウクライナ予算をめぐって「何でアメリカだけが負担するんだ」という批判があるなかで、岸田政権になって、防衛費増額を決めた日本は、アメリカの世論や議会対策という意味で非常にありがたい存在だということがいえます。

また、アメリカが中国に対抗していくうえで、日本は欠かせないパートナーです。バイデン政権は、日米同盟をインド太平洋の柱と位置付けることで、そこに韓国やオーストラリア、きょうはフィリピンの首相と会談しますが、ほかの同盟国を巻き込むことによって、“同盟のネットワーク”を深めていくという狙いがありますから、やはり日米同盟は大事ですし、岸田総理を歓待した狙いがそこにあると思います。

Q“同盟のネットワーク”を深めるという考え方は、アメリカ国内で理解されているのでしょうか。

ワシントン支局の梶川幸司支局長:必ずしもそうとは言えないと思います。大統領選で戦うことになるトランプ氏は、繰り返し、同盟国を軽視する発言を続けていますし、“内向きな世論”を自らの支持に結びつけようとしています。一方のバイデン大統領は、共同記者会見の終了間際、アメリカメディアからイスラエル・ガザ問題、ウクライナ問題で厳しい質問責めにあうなど、苦境に立たされています。バイデン大統領としては、日本との蜜月を演出し、西側の盟主としての信頼を取り戻すことによって、トランプ氏との違いを打ちだし、それを外交面の成果として、国民に訴えていく。そういう狙いがあると思います。

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