維新、またぞろ「大阪都構想」もくろむ? 市長が提唱「区のブロック化」は不人気万博に代わる頼みの綱か(2024年4月10日『東京新聞』)

 
 前回の大阪府知事選と大阪市長選の「ダブル選」から9日で1年。このタイミングで、大阪維新の会の横山英幸市長が市内24区の「ブロック化」を提唱したことに注目が集まっている。区の統合とも取れるこの案にメリットはあるのか。かつて大阪都構想でも区の再編は問題となった。ブロック化は都構想への布石なのか。(宮畑譲)

◆具体的な中身は「まだまだこれから」

 「市内でも区ごとに課題はばらばら。ブロックごとに特色ある施策を展開していくべきだと思う。(ブロック化で)より地域の特性に応じた行政を的確に効率的に展開できる」
吉村洋文大阪府知事

吉村洋文大阪府知事

 4日、記者の囲み取材で「ブロック化のメリットは」と問われた横山市長がこう答えた。実現時期やブロック長の権限など具体的な中身については「まだまだ今後」などと述べるにとどめた。前日の3日には、吉村洋文知事が「維新の会で進めていこうというわけではない」としつつ、都構想が再浮上する可能性について問われると「ゼロではない」と答えていた。
4日に記者が質問する前段として、市が3月に公表した「新・市政改革プラン」の中で「複数区のブロック化の効果的な仕組みを検討する」と明記していたことがある。さらに、昨年6月の市議会本会議では、維新議員の質問に答える形で横山市長は「検討を深める」と答弁していた。

◆「今でも大阪市の行政区は大きい」

 行政区の再編といえば、今年1月1日から浜松市が以前の7区から3区に集約した。これにより、区ごとの人口は約3万人~61万人になり、人口規模の差は広がった。市長として再編を進めた鈴木康友氏は「区役所の数を減らし、市の裁量で置ける行政センターにすることで臨機応変に業務の中身や人の配置を換えられる」と語っている。
 しかし、地方自治総合研究所の今井照特任研究員は「問題のレベルにもよるが、人口数万人単位でなければ、住民の意思を適正に反映するのは難しい。今でも大阪市の行政区は大きいくらいだ。カバーする範囲や人口規模が大きくなれば、防災や福祉といった問題に対して役所の目が届きにくくなる」と再編のデメリットを指摘する。

◆都構想を問う住民投票は2回とも否決

2020年11月1日、大阪都構想 の是非を問う二度目の住民投票が 反対多数に。記者会見する当時の松井一郎市長(右)と吉村洋文大阪府知事

2020年11月1日、大阪都構想 の是非を問う二度目の住民投票が 反対多数に。記者会見する当時の松井一郎市長(右)と吉村洋文大阪府知事

 今井氏は、1999年以降に行われた「平成の大合併」の後にそうした事態が起きたとして、「生活支援が必要な人を支えるのは行政の役割。行政区に対して大阪市には大きな権限がある。無駄があるというのなら、市が調整すれば済む話だ」と言い、再編の必要性を疑問視する。
 横山市長が所属する維新の会は、かつて大阪都構想を政策の「1丁目1番地」と掲げていた。都構想では、大阪市を廃止し、4特別区に再編することで府と市の二重行政の解消を図るとしていた。2015年と20年に賛否を問う住民投票が行われたが、いずれも否決された。
 2度目の否決後、24行政区を八つの「総合区」に再編する代替策が浮上したが、立ち消えになった。今、にわかに浮上したわけではなさそうなブロック化。背景には何があるのか。

◆「求心力を保つため打ち上げたのでは」

大阪・関西万博をPRするイベントに登場した公式キャラクターのミャクミャク

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 大阪在住のジャーナリスト、吉富有治氏は「万博の評判が悪く、維新の求心力を保つための目玉が他にない。有権者の関心を引くために打ち上げているのではないか」と維新の思惑を読む。1年前のダブル選時点では公約としなかったが、吉富氏は維新が都構想を諦めたとは考えていない。
 「2度目の住民投票の否決から時間がたっておらず、今は都構想とは言い出しづらい。しかし、ブロック化がうまくいってもいかなくても、『ブロック化には限界がある』という理屈で持ち出す可能性はあるとみている。3度目の住民投票に至る第一歩ではないか」