SNSなりすまし広告の対策を 前沢友作さんら、自民党に要請(2024年4月10日『毎日新聞』)

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自身の顔写真を無断で使用される「なりすまし広告」の被害に遭い、自民党本部で勉強会に臨む前沢友作さん(右)と堀江貴文さん=東京都千代田区で2024年4月10日午後5時5分、北山夏帆撮影
自身の顔写真を無断で使用される「なりすまし広告」の被害に遭い、自民党本部で勉強会に臨む前沢友作さん(右)と堀江貴文さん=東京都千代田区で2024年4月10日午後5時5分、北山夏帆撮影

 著名人になりすまして投資などを勧誘する不正広告がネット交流サービス(SNS)に出回っている問題で、なりすましの被害に遭っている衣料品通販大手「ZOZO」創業者の前沢友作さんと実業家の堀江貴文さんは10日、東京都内の自民党本部を訪れ、国が早急に対策に乗り出すよう訴えた。

 会合終了後、前沢さんは「とにかくひどいので怒っています。日本は後手後手に回っている印象なので、素早い対応をお願いしたい」と話し、米国の弁護士と連携してフェイスブックの運営会社である米IT大手メタを提訴する準備を進めていることを明らかにした。

 堀江さんは「僕自身の正規の広告やクレジットカードが止められるなど、いろいろな被害が出ていることについても説明した。(会合ではプラットフォーム事業者に対して)厳しくやっていかなければいけないという力強い言葉をいただいた」と語った。

 警察庁によると、SNSを使った投資詐欺被害は2023年6月以降に急増。同年だけで2271件確認され、被害総額は約277億9000万円に上った。

 SNSには、前沢さんや堀江さんだけでなく、ジャーナリストの池上彰さんや経済アナリストの森永卓郎さん、ユニクロを展開するファーストリテイリング柳井正会長兼社長らさまざまな著名人になりすました広告が出回っている。中には、偽の音声や動画を人工知能(AI)で生成する「ディープフェイク」と呼ばれる技術を使った悪質なものもある。

 前沢さんは3月に自身のX(ツイッター)で、メタ側に問い合わせたところ昨年9月に返事があったと明らかにし、送付されてきた文書を公開した。

 メタ側は文書で「今後発生する詐欺的な広告を予測し、削除を行えるようにする措置を実施しています」としつつ、「もっとも、このような措置も完全なものではなく、広告等に生じる全ての問題を検出することは困難であることはご理解いただければと存じます」と釈明した。

 これに対し前沢さんは「開き直っている」と批判し、「では、詐欺で騙(だま)される人や、肖像権を侵害されたり名誉毀損(きそん)される人に対して、どのように考えているのでしょうか? 騙されたり傷つけられている人に対して何か損害賠償してくれるのでしょうか?」と抗議した。

 また、堀江さんは2月に自身のXで、メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が首相官邸岸田文雄首相と面会したとするニュース記事を引用し、「俺の詐欺広告やめさせろや」と書き込んだ。

 広告・マーケティングが専門の西山守・桜美林大准教授は「広告は消費者を誤認させたり、欺いたりしているだけでなく、著名人の肖像権も侵害している。あらゆる点で問題だが、プラットフォーム事業者がこれに対応できていないことはもっと問題だ」と語る。

 その上で、「日本で起きている問題を米国などにある本社がどれだけ深刻に捉えているかは疑問で、グローバル化の弊害ではないか。まずはプラットフォーム事業者がテクノロジーを駆使して防止しなければならないが、国が動かないと根本的な解決には向かわないので規制も必要だ」と指摘する。【畠山嵩、國枝すみれ】