台湾地震に関する社説・コラム(2024年4月10日)

台湾地震 息の長い支援で恩返しを(2024年4月11日『河北新報』-「社説」)


 台湾東部沖地震は、今月3日の発生から8日たった。山間部の孤立状態が解消され、倒壊したビルの解体も進む一方で、景勝地「太魯閣(タロコ)国立公園」などでは行方不明者の捜索が続く。東日本大震災の経験を最大限に生かし、細やかな支援を息長く続けたい。

 台湾当局によると、これまで16人の死亡が確認され、負傷者は1100人余り。地震の規模はマグニチュード(M)7・2。1999年に2400人以上が死亡した台湾中部地震以来の規模という。

 震源周辺の地下はプレート(岩盤)が重なる複雑な構造で、過去にも大きな地震が頻発。今回、震度4だった沖縄県与那国島では津波が観測された。互いに余震への警戒を怠らないようにしたい。

 台湾では大きな地震のたびに建物の倒壊が相次ぐ。震度6強と最も揺れが強かった東部の花蓮県では、市街地で複数の建物が倒壊した。政府は中部地震を機に耐震基準を厳格化したが、築50年以上の建築物が多数あり、耐震性の強化が急がれる。

 一方、地元当局は発災直後から慈善団体や市民と連携し、スムーズな避難所運営を進めた。平時の備えが生きた形で、見習うべき点も多い。

 人口約2342万人の台湾は、東日本大震災で国・地域別で最大規模の200億円超の義援金を提供してくれた。浄財を届けに被災地を訪れた台湾人も少なくない。物心両面の多大な支援は、今なお被災者の心に刻まれている。

 官民による温かな励ましは、復興を進める力となった。津波で被災した宮城県南三陸町の南三陸病院が寄付金で再建され、岩手県大槌町福島県相馬市などでは災害公営住宅が整備された。各地の被災者に住宅再建の見舞金が配られ、仙台市には交流促進協定を結ぶ台南市から1億4千万円近い寄付が届いた。

 2016年と18年に台湾で起きた地震では「恩返し」を合言葉に東北でも募金活動が活発に行われた。今回も各地で寄付の呼びかけが広がる。

 復興支援を機に強まった台湾との関係は、観光や経済など多方面で深化している。

 新型コロナウイルス禍前の19年、東北を訪れた外国人宿泊客の約4割を台湾が占めた。昨年1月に仙台空港台北を結ぶ定期便が約3年ぶりに再開し、7月には定期便を利用した航空貨物の輸出も回復した。

 宮城県大衡村では、SBIホールディングスと台湾の力晶積成電子製造(PSMC)による半導体工場の建設計画が進む。27年の稼働に向け、台湾から技術者や家族が移り住む見込みだ。「日台友好」をさらに強固にしたい。

 日本政府は、約1億5100万円規模の緊急無償資金協力を決めた。一日も早い復興を目指し、ニーズに応じた支援を届けたい。私たちも隣人を支え、困難な時期をともに乗り越えよう。

 

台湾地震1週間 支援の手、差し伸べよう(2024年4月11日『秋田魁新報』-「社説」)
 
 台湾東部沖地震が発生して10日で1週間となった。いまだ余震が続く中、崖崩れなどによる行方不明者の捜索が続く。

 台湾と日本は地震が多いという共通点があり、これまでも互いに助け合いが行われてきた。被災地と被災者へ物心両面から支援の手を差し伸べたい。

 地震震度6強で東部・花蓮県に被害が集中する。10日夕現在で死者13人、負傷者1100人余り。建物の損壊は1470世帯以上に影響。不明者6人の捜索が続く崖崩れは山間部にある観光地「太魯閣(タロコ)国立公園」などで発生している。

 台湾周辺は、東のフィリピン海プレート(岩盤)と西のユーラシアプレートが重なる複雑な地下構造。複数のプレートがぶつかり合う日本と同じ地震多発地帯だ。

 1999年、台湾中部で発生した地震では2400人以上が死亡。日本からは救助隊派遣や仮設住宅提供などが行われた。これに対し2011年の東日本大震災では台湾から救助隊が派遣され、巨額の支援金が送られた。地理的に近く、災害時に助け合う関係は心強い。

 1月の能登半島地震に際しても台湾側で募金活動が行われ、被災地に寄付金が届けられた。今回の台湾地震に対しては、東日本大震災の被災地の自治体でいち早く支援が表明され、全国各地に広まっている。本県でも民間団体の交流がある大仙市などで「台湾へ恩返しを」と支援金の募集が始まった。

 台湾とは県レベルでも関係が深い。秋田空港と台湾・桃園国際空港(桃園市)を結ぶチャーター便運航が昨年12月から始まった。秋田港に寄港する国際クルーズ船とともに、本県のインバウンド(訪日客)需要の柱として期待されている。県を挙げての支援が望まれる。

 台湾の地震には災害対策という観点から学ぶべきことがありそうだ。市街地で損壊した道路や橋がほとんどなかった一方、もろくも倒壊した建物があった。耐震性の問題が指摘されている。どのような対策が求められているのか、教訓をくみ取りたい。

 被災現場への迅速な救助隊出動、避難所運営の手際よさについては被災者の満足度が高いようだ。地元自治体と慈善団体、住民のスムーズな連携の背景には日頃の訓練や綿密な連絡があったという。こうした備えを国や自治体をはじめ関係者が貪欲に学ぶ必要があろう。

 崖崩れ現場などでの行方不明者捜索で、トルコが派遣したドローン専門チームが活躍している。トルコも日本と同じく地震大国に数えられる。昨年2月のトルコ・シリア大地震が記憶に新しい。

 余震で落石が頻繁に起きる中で、ドローンによる捜索の経験が豊富なトルコ隊が土砂崩れの有無などの確認を担っているという。新しい技術の積極的な活用にも学ぶことがありそうだ。

 

台湾地震/現地に心寄せ支援に全力を(2024年4月11日『福島民友新聞』-「社説」)

 台湾の東部沖を震源とする最大震度6強を観測した地震の発生から、1週間が経過した。台湾の消防当局によると、10日時点で16人の死亡が確認されており、1100人以上が負傷している。

 最も揺れが大きかった花蓮地域では建物が倒壊し、低層階部分がつぶれて住民らが閉じ込められたマンションもあった。山間部では落石や土砂崩れが発生し、道路や橋が寸断された。有名な観光地「太魯閣(タロコ)国立公園」などでは行方不明者の捜索が続いている。

 余震が相次ぐなか、被災した住民らは緊張の日々を過ごし、捜索活動も難航している。台湾政府には、捜索活動と被災者の支援などに全力を挙げてほしい。

 日本と同様に、地震が多発している台湾での大きな地震は、1999年に2400人以上が亡くなった台湾中部の地震以来だ。今回も電気や水道などのインフラ、老朽化した建物などの被害が深刻で、これからの復旧・復興は長期化が避けられない見通しだ。

 今後、被災状況が明らかになれば、インフラの復旧や仮設住宅の設置、住宅の再建など、東日本大震災を経験した日本、本県だからこそ、伝えられる知見や技術などがあるはずだ。99年の地震の際は日本から援助隊やボランティアらが現地に入り、仮設住宅の提供などに取り組んだ。今回も官民が連携し、人的支援をはじめ復旧、復興に貢献していくことが大切だ。

 日本と台湾は正式な外交関係にないが、親日家が多く、過去の災害時には支援を受けてきた。東日本大震災では、200億円超の義援金が寄せられている。

 県内では、震災時に支援を受けた自治体や、交流活動に取り組む民間団体が募金活動などを始めている。震災の苦しい時に受けた恩に報い、台湾の被災者を支えるため、一人でも多くの県民は募金などに協力してほしい。

 台湾の主要産業である観光業は今回の地震で施設の倒壊、宿泊客の予約キャンセルなど大きな打撃を受けている。しかし被害の大きい東部以外の地域では交通インフラが回復し、観光施設なども通常通りに営業しているという。

 昨年の本県への外国人宿泊者数のうち、最多は台湾からだ。1月からは福島空港と台湾を結ぶ定期チャーター便が運航している。

 震災以降、本県は正確な情報に基づかない風評などで被害を受けてきた。目的地の安全を確認して現地を訪れたり、特産品を積極的に購入したりすることが支援になることを理解しているからこそ、できる範囲で行動していきたい。

 

台湾地震/被災経験生かした支援を(2024年4月10日『神戸新聞』-「社説」)

 

 台湾で3日朝に発生した大地震で、これまでに確認された死者は10人を超え、負傷者は1100人余りに上る。発災から1週間となる今も行方が分からない人がいる。台湾政府は一刻も早い救出と支援に全力を挙げてほしい。

 台湾東部沖を震源とし、日本の気象庁によると、マグニチュード(M)は7・7と推定される。震度6強と最大の揺れが襲った花蓮(かれん)では市街地で建物が倒壊、山間部では土砂崩れや落石などが相次ぎ、道路が寸断された。花蓮県の有名観光地「太魯閣(タロコ)国立公園」では、外国人観光客を含む約700人が一時孤立状態になるなどした。

 台湾は、日本と同様に地震の多発地帯である。今回の地震は死者2400人以上、負傷者約1万人を出した1999年の台湾大地震以来の規模となるという。99年以降、建築物の耐震基準見直しなど対策は強化されたが、古い建物も多数残っているといい、被害の拡大につながった可能性もある。


 専門家によると、台湾周辺の地下は東のフィリピン海プレートと西のユーラシアプレートがねじれるように沈み込む複雑な構造をしている。過去100年間にM7級の大地震が10回以上起きており、今後も警戒が必要だ。台湾の当局は防災対策を抜本的に強化してもらいたい。

 日本と台湾は正式な外交関係はないが、過去の地震発生時には互いに支え合ってきた。

 99年の台湾大地震では、日本政府がいち早く救助隊を派遣したほか、阪神・淡路大震災の経験を生かした災害医療のノウハウや仮設住宅を提供するなどした。2011年の東日本大震災では、国・地域別で最大規模となる200億円以上の義援金が台湾から寄せられ、被災者を励ました。今年1月の能登半島地震でも台湾政府が民間に呼びかけ、25億円以上の義援金が集まったという。

 今度は日本が恩返しをする番だ。岸田文雄首相は「隣人である台湾の困難に際し、必要な支援を行う用意がある」と表明した。各地で募金活動が繰り広げられている。今後の復興を含め、教訓を生かした支援を通じ台湾との絆を一層深めたい。

 今回の地震では、沖縄本島八重山諸島に一時津波警報が出され、与那国島などで最大30センチの津波を観測した。能登半島地震津波が頭をよぎった人もいるだろう。被害はなかったが、高台への避難に際し交通渋滞が発生するなど混乱もみられた。今後の対策に生かす必要がある。

 最近、各地で地震の発生が相次いでいる。家具の転倒防止や備蓄の点検、避難経路の確認など、足元の備えをいま一度見直す機会としたい。