テント、ペット同伴、手話で話しかける学生…日本と異なる台湾の災害への向き合い方(2024年4月6日『産経新聞』)

被災者のために小学校の体育館に設置されたボックス型の避難所=5日、台湾東部・花蓮市五十嵐一撮影)

花蓮(台湾東部)=五十嵐一】 台湾東部沖地震で大きな被害が出た花蓮市では、余震による倒壊など二次被害の危険がある家屋の住民らが避難生活を強いられている。現地の行政当局は発災後4時間で避難所を開設、プライベートにも配慮した取り組みに注目が集まった。6日で地震発生から4日目。取材を進めると、同じ地震大国である日本との違いも見えてきた。

市中心部にある中華国民小学校には発生直後、約140人が避難。体育館とグラウンドに約60のテントなどが設営され、被災者が簡易ベッドの上でくつろぐ姿もあった。

日中は30度近くまで気温が上がる。地震でインフラは大きな被害は受けていないため、冷房や温水シャワーを増設する対応もとった体育館内の方が利用者は多い。

「蒸し暑いけど、屋外の方がいい」。家族4人で避難した男性(62)は愛犬も一緒だ。「ほえて周りの迷惑になるのは避けたい。トラックで散歩もできるし、助かっているよ」。

日本でも大規模災害が起きるたびに、課題になるペットとの避難所生活。施設の運営責任者は、被災者のプライバシーに最大限配慮したことに加え、素早く避難場所を用意できる仮設テントの利点も強調する。

物資の配給も、日本とは異なる。避難所の入り口にはブースが設置され、子供たちの遊び相手をするボランティアの姿も。現地の宗教団体などが菓子や飲み物を寄付しているほか、地元のレストランが弁当を提供している。4日はロブスターや豚の角煮を使った弁当が並んだ。画一的な食事を被災者に振る舞う日本とは大きく異なる。

花蓮市によると、災害時に用意する食事は大半が寄付で賄われる。担当者は「寄付が多く集まりすぎて、断るケースもある」と内情を明かした。今回の地震で50人分のカステラを寄付したという沈雅恵さん(43)も「他人が困っているとき、助けるのは当たり前」と話す。

ニーズの変化や分別、保管などの理由から、個人の支援物資をなるべく断る傾向がある日本とはここでも異なる。

避難所では、体育館の壇上から高校生らが聴覚障害者に対し、手話で話しかける姿もみられた。台湾では多様な言語の伝承などを目的に2019年、言語発展法が施行された。小学生から手話を習う子供が増えているが、避難生活を余儀なくされた障害者の孤立化を防ぐことにも一役買っているという。

花蓮市の魏嘉彦市長は産経新聞の取材に「東日本大震災をはじめ、日本の経験からわれわれは多くを学んだ。大切なのは被災者の心配を取り除くことだ」と強調した。台湾の被災地から、日本が学ぶことも多くあると感じた。