「政治権力に忖度や迎合しない報道を」 田中優子氏、前川喜平氏ら市民グループがテレ朝HDに株主提案(2024年4月8日『東京新聞』)

 政治権力のテレビ報道への介入に対抗する市民グループテレビ輝け!市民ネットワーク」は8日、テレビ朝日ホールディングス(HD)に、権力に忖度(そんたく)や迎合をしないことなどを求める株主提案を行った。
「テレ朝の放送番組審議会は、見城徹氏が委員長であるため形骸化しているのではないか」と指摘する阪口徳雄弁護士(中)ら=8日、東京都内で

「テレ朝の放送番組審議会は、見城徹氏が委員長であるため形骸化しているのではないか」と指摘する阪口徳雄弁護士(中)ら=8日、東京都内で

 グループは昨年に発足し、田中優子前法政大総長と前川喜平元文部科学次官が共同代表を務める。メンバー48人でテレ朝HD株を計約4万株購入し、株主提案する準備を進めてきた。
 提案では、テレ朝HDに(1)公平公正な報道を行うという放送法の理念に照らし、権力に対する忖度や迎合をしない(2)過去10年の間にあからさまな圧力があれば第三者委員会にかけて調査する(3)放送番組審議会の委員らの任期に上限を設ける(4)前川氏を社外取締役に就ける―の4点を求めた。テレ朝HDは、6月の株主総会で回答する予定だ。
 田中氏は、記者会見で「テレビを批判するためでなく、励ますための提案。テレビの影響力はまだまだ強い。信頼しているがゆえにしっかりしてほしい」と指摘した。事務局の阪口徳雄弁護士は「安倍政権下でテレビは執拗(しつよう)な攻撃を受けたが、民放は発言しなかった。ならばわれわれが申し入れをしようとなった」と述べた。今後、大株主の朝日新聞や外国人投資家などにも働きかけるという。(望月衣塑子)
 
 

「テレビ輝け!視聴者ネットワーク」共同代表メッセージ
田中優子

 テレビはインターネットに押されているとは言え、まだ社会におけるメディアの中心であり、その影響力は多大なものです。とりわけ映像と音を伴った臨場感は私たちに身体的にも精神的にも、そして価値観や判断においても、大きな力を及ぼすものです。だからこそ、テレビ番組には公正であって欲しいのです。放送法第一条は、放送が「公共の福祉」に適合するべきものと定め、表現の自由を確保し、民主主義の発達に資することを定めています。
 しかしながら第2次安倍政権発足後、テレビ・メディアに対する様々な放送番組への介入や懐柔策が行われたことは、公開された行政文書でも明らかになりました。またジャニーズ問題にあっては、その検証と反省の番組の中でさえ、視聴率による売上や利益が最も重要な指標とされました。
 私たちは、テレビが政権、政治家、企業の介入に屈することなく、のびのびとその創造的な力を発揮できるよう、励まし支えるためのネットワークを、ここに立ち上げます。
田中優子


前川喜平

 メディアが果たすべき重要な役割は、主権者と権力者の間にあって、権力者の行動を監視し、主権者に伝えることです。メディアがその役割を果たさなくなれば、代議制民主主義は機能しなくなり、権力は私物化されるでしょう。
 しかし今、メディアの中でも最も影響力のあるテレビが、監視の対象であるはずの権力者によって、逆に権力側に取り込まれてしまっているのではないか。私はそこに強い懸念を抱いています。
 テレビがその本来の役割を取り戻して再び輝いてほしい。それが私の願いです。
前川喜平