韓国総選挙で長ネギ論争 「タマネギ男」も「心の中に長ネギ」(2024年4月8日『毎日新聞』)

 

長ネギを持って支持者と一緒に記念撮影する祖国革新党の曺国代表(中央右)=ソウル近郊の京畿道で2024年4月8日午後4時31分、日下部元美撮影

長ネギを持って支持者と一緒に記念撮影する祖国革新党の曺国代表(中央右)=ソウル近郊の京畿道で2024年4月8日午後4時31分、日下部元美撮影

 

 10日投開票の韓国総選挙(定数300)を前に、「長ネギ」が最大のキーワードになっている。日本で「タマネギ男」の名で知られる進歩系新党「祖国革新党」の曺国(チョグク)代表は、南部・釜山で事前投票をした後、ネット交流サービス(SNS)に「釜山は長ネギ栽培で有名な街。心の中に長ネギを抱いて投票した。長ネギ革命!」と投稿。投票所への長ネギの持ち込みを巡っても議論が起きている。

 発端は、3月中旬の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の発言。スーパーマーケットを訪れた尹氏は、長ネギについた値札を見て「長ネギ875ウォン(約100円)なら妥当な価格だ」と述べた。近年、韓国では物価が大幅に上昇しており、物価高対策も選挙の争点になっている。尹氏の発言に対して「875ウォンは破格の安さで(通常の長ネギの値段は)妥当ではない。庶民の生活を知らないのでは」といった声が上がり、野党陣営も尹氏の発言を批判。与野党間でネギが1束だったのか1本だったのかが論争に発展した。

 かくして長ネギは政治的なアイコンとなり、野党支持者は集会で「尹錫悦 長ネギ」と書かれたプラカードやネギを掲げるようになった。韓国語で同じつづりの「長ネギ」と「大破(大敗)」をかけた形だ。

長ネギを投票所に持ち込むのが禁止されたことを風刺する画像=祖国革新党のフェイスブックから
長ネギを投票所に持ち込むのが禁止されたことを風刺する画像=祖国革新党のフェイスブックから
 

 事前投票が始まった4月5日、中央選挙管理委員会は投票所の運営職員に対し、「長ネギを持った選挙人には投票所の外に長ネギを保管した後、投票所を出入りするよう案内する」といった通達を出した。市民から「長ネギを持って投票に行けるか」との問い合わせを受けたためとしている。

 中央日報によると、政府への抗議の意味を込めた長ネギの持ち込みは「政治的行為」にあたり、「他の選挙人に心理的な影響を与える可能性がある」と判断されたという。ただ、投票後に、投票所の外で長ネギを持って写真を撮ることは可能としている。

 野党陣営はこの措置をこぞって批判し、最大野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)代表は「本当に奇怪な話」と述べた。SNSにも「長ネギが描かれたTシャツを着て投票した」「タマネギはだめなのか」などと皮肉る投稿が相次ぎ、第三極として勢いにのる曺国氏は「『長ネギ』を恐れる勢力、『大破』されるだろう」と投稿した。【ソウル日下部元美】