若者の体や性の悩み相談に応じるスウェーデン発祥の「ユースクリニック」の活動が、日本でも始まっている。家族や学校には話しづらいことを安心して打ち明けられる「街の保健室」のような場所で、予期せぬ妊娠などのトラブルから若者たちを守る期待があるが普及には課題もある。(渡辺真由子)
◆渋谷駅から徒歩10分「わかさぽ」の試み
若者らでにぎわうJR渋谷駅から徒歩10分。大通りからそれた一角に東京都が昨秋、「わかさぽ(とうきょう若者ヘルスサポート)」を開設した。カフェ風の室内にはソファが並び、性や健康に関する本などが閲覧できるスペースもある。月、木、土曜日にオープンする。
「私の月経量って普通?」「避妊できたか不安」―。主に都内に在住、在学する中学生以上の10代から寄せられる相談には、看護師や保健師らが対応する。この春からは、望まない妊娠の恐れがある女性が緊急避妊薬(アフターピル)を必要とする場合に、医療機関まで同行し処方につなげる取り組みも始める予定だ。都福祉局の担当者は「体の変化や心身に悩みを持ちやすい時期。不安に応えることができれば」と話す。
◆対面には抵抗感…電話やオンライン利用が大半
渋谷・スクランブル交差点のネオン(資料写真)
対面利用の施設に、まだ若者が気軽に足を運ぶ状況には至っていない。開設から半年がたった「わかさぽ」は来訪者はほとんどいなく、電話相談が1日数十件ある。上野皮フ科・婦人科クリニック(台東区)のユースクリニックも相談の7割は電話。2割がLINEなどのやりとりで、対面での利用は1割にとどまる。
◆生理用品配布や性感染症検査を入り口に
埼玉医科大の高橋幸子医師によると、スウェーデンでは利用への抵抗感をなくそうと、ユースクリニックの訪問が中学校の授業の一環として行われているという。高橋さんは「相談だけでは、利用の敷居が高い。日本でも生理用品配布や性感染症の検査など、利用のきっかけとなる工夫が必要では」と提言する。
性教育の普及などに取り組むNPO法人「ピルコン」の福田和子さんは、来訪者数が増えない背景を「性について話したり、知識を得たりするのがタブー視されてきたのも要因にあるのでは」と分析する。ユースクリニックのニーズは十分にあるとした上で「質の担保が課題。行政によるガイドラインの作成や、基準を満たしたユースクリニックの認証制度が必要ではないか」と提言する。
ユースクリニック 1970年代に取り組みが始まったスウェーデンには現在、約250カ所がある。利用対象者は13~23歳。施設に待機する医師や看護師に悩みを打ち明けたり、避妊具や生理用品を無料で受け取ったりすることができる。