中国、北朝鮮、ロシアの3か国について、安全保障上の脅威だと感じるかを聞いたところ、中国は91%で、同様の質問をした2023年3月の郵送調査の86%より5ポイント上昇した。北朝鮮は87%(23年3月調査87%)、ロシアは88%(同84%)と高い水準だった。
日本が防衛力を強化することに「賛成」は71%(同72%)で、「反対」は26%(同25%)。防衛力の抜本的強化を図るため、日本政府が22年12月に国家安全保障戦略など3文書を改定したことを「評価する」は「どちらかといえば」をあわせて50%。自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」の保有に「賛成」とした人は、「どちらかといえば」を含めて57%(22年7月調査62%)で、いずれも半数以上だった。
防衛力強化に向けて、政府は防衛費を23年度から5年間で総額約43兆円に増額することを決めている。防衛費の増額に「賛成」は53%で、「反対」の42%を上回った。財源として法人税、所得税、たばこ税の三つを段階的に増税し、27年度に1兆円強を確保する政府の方針については、「賛成」は28%(23年3月調査29%)にとどまり、「反対」は69%(同67%)だった。依然として増税には厳しい見方が多かった。
経済安全保障分野の重要情報を扱う資格者を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度」について、「賛成」は60%で、「反対」の33%を上回った。また、政府が、大学などの研究機関や民間企業の先端技術を防衛目的で活用することに「賛成」は75%に上った。
調査は2月6日~3月14日、全国の有権者3000人を対象に実施し、2074人から回答を得た(回答率69%)。
「安全保障」全国世論調査 質問と回答
◆あなたは、最近、日本の安全保障について、脅威を感じていますか、感じていませんか。
・大いに感じている 31
・多少は感じている 53
・あまり感じていない 13
・全く感じていない 2
・答えない 1
◆安全保障について、とくに関心を持っているものを、いくつでも選んでください。
・日本の防衛力や防衛体制 56
・日米安全保障体制 34
・中国の軍事力の拡大や海洋進出 59
・北朝鮮の核・ミサイル開発 62
・日本周辺におけるロシア軍の活動 35
・ロシアによるウクライナ侵略 47
・大量破壊兵器の拡散 21
・宇宙空間の軍事利用 16
・AI(人工知能)の軍事利用 30
・半導体など重要物資の供給網確保 18
・機密情報の流出 27
・その他 2
・とくにない 5
・答えない 1
◆日本が防衛力を強化することに、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 71
・反対 26
・答えない 3
◆防衛力強化のために、防衛費を増額することに、賛成ですか、反対ですか。また、その理由を自由にお書きください。
・賛成 53
・反対 42
・答えない 4
=自由回答は一部抜粋して別掲=
◆政府は、防衛力を強化するための財源として、法人税、所得税、たばこ税の3つを段階的に増税し、2027年度に1兆円強を確保する方針です。この方針に、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 28
・反対 69
・答えない 3
◆防衛費を増額するための主な財源について、あなたの考えに最も近いものを、選んでください。
・国債の発行 13
・防衛費以外の予算の削減 39
・増税 9
・その他 7
・防衛費の増額は必要ない 28
・答えない 4
◆日本と密接な関係にある国が攻撃を受けたとき、日本への攻撃とみなして反撃する権利を、「集団的自衛権」といいます。この権利を使うことを限定的に認めている安全保障関連法を、評価しますか、評価しませんか。
・評価する 49
・評価しない 48
・答えない 4
◆安全保障関連法は、アジア・太平洋地域の平和と安定に、役立っていると思いますか、役立っていないと思いますか。
・役立っている 58
・役立っていない 36
・答えない 6
◆日本の安全を守るため、自衛隊と米軍が連携を強化することに、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 78
・反対 18
・答えない 4
◆同盟国のアメリカ以外の国や地域と防衛協力を進めることに、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 73
・反対 23
・答えない 4
◆次の3つの国について、日本の安全保障上の脅威だと感じますか、感じませんか。順にお答えください。
◇中国
・大いに感じる 58
・多少は感じる 33
・あまり感じない 6
・全く感じない 1
・答えない 2
◇北朝鮮
・大いに感じる 56
・多少は感じる 31
・あまり感じない 9
・全く感じない 2
・答えない 2
◇ロシア
・大いに感じる 50
・多少は感じる 38
・あまり感じない 8
・全く感じない 2
・答えない 2
◆中国は今後、台湾に軍事侵攻すると思いますか、思いませんか。
・思う 65
・思わない 31
・答えない 4
◆政府は、2022年12月に防衛力の抜本的強化を図るため、国家安全保障戦略など3文書を改定しました。自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」の保有や、2023年度から5年間の防衛費の総額を43兆円に増やすことなどが柱です。あなたは、この改定を全体として、評価しますか、評価しませんか。
・評価する 13
・どちらかといえば評価する 37
・どちらかといえば評価しない 32
・評価しない 16
・答えない 2
◆防衛力強化のため、政府は、どのようなことに重点的に取り組むべきだと思いますか。いくつでも選んでください。
・攻撃されない安全な距離から攻撃できる長射程ミサイルの開発 26
・ミサイル防衛システムの強化 53
・次期戦闘機の開発 13
・偵察や攻撃用の無人機(ドローンなど)の導入 33
・人工衛星の活用 40
・AI(人工知能)の活用 29
・弾薬の生産能力の向上や弾薬庫の増設 9
・自衛隊の部隊・物資の輸送能力の向上 25
・自衛隊の駐屯地・基地の集約や強靱化 19
・自衛官の確保や福利厚生の充実 28
・空港や港湾の整備・強化 26
・同盟国や友好国との連携 58
・その他 4
・とくにない 7
・答えない 3
◆自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」を、日本が持つことに、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 24
・どちらかといえば賛成 33
・どちらかといえば反対 29
・反対 12
・答えない 2
◆政府は、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転3原則」を改定し、一定の要件を満たせば、同盟国のアメリカや友好国に対し、ミサイルなどを輸出できるようになりました。この改定を、評価しますか、評価しませんか。
・評価する 47
・評価しない 49
・答えない 4
◆日本は、イギリスやイタリアと次期戦闘機の共同開発を行っています。日本が、共同開発した戦闘機を友好国に輸出することに、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 52
・反対 44
・答えない 4
◆サイバー攻撃によって、電力や空港、鉄道といった重要インフラ(社会基盤)の機能が停止し、国民生活に深刻な影響が出るという不安を感じますか、感じませんか。
・大いに感じる 43
・多少は感じる 46
・あまり感じない 8
・全く感じない 1
・答えない 2
◆政府は、国家安全保障戦略に、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ、「能動的サイバー防御」の導入を盛り込みました。その内容について、それぞれ、賛成か反対かをお答えください。
◇サイバー攻撃を受けた民間企業などと情報共有すること
・賛成 89
・反対 7
・答えない 4
◇攻撃者が使うサーバーを把握して被害を防ぐため、通信事業者から情報提供を受けること
・賛成 88
・反対 8
・答えない 4
◇攻撃元のシステムに侵入し、無力化すること
・賛成 82
・反対 12
・答えない 5
◆政府が、大学などの研究機関や民間企業の先端技術を防衛目的で活用することに、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 75
・反対 20
・答えない 5
◆大学などの研究機関や民間企業の先端技術が海外に流出することを防ぐため、政府は十分に対策をとっていると思いますか、思いませんか。
・思う 10
・思わない 86
・答えない 4
◆政府は、政府職員や民間人らを審査して、経済安全保障上、重要な先端技術などの機微情報を取り扱う権限を与える「適性評価制度」を作る方針です。この方針に、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 60
・反対 33
・答えない 7
◆日本の政府は、核兵器について、「持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則の政策をとっています。あなたは、この非核三原則を、今後も守るべきだと思いますか、それとも、国際情勢に応じて改めてもよいと思いますか。
・守るべきだ 48
・どちらかといえば守るべきだ 25
・どちらかといえば改めてもよい 14
・改めてもよい 10
・答えない 2
◆日本の安全を守るためには、アメリカの核戦力に頼ることが必要だと思いますか、思いませんか。
・思う 54
・思わない 42
・答えない 4
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【調査方法】全国の有権者から無作為に3000人(250地点、層化2段無作為抽出法)を選び、郵送法で実施した。2月6日に調査票を対象者に郵送し、3月14日までに返送されたのは2128。対象者以外による回答などを除くと有効回答は2074。回答率69%。
回答者内訳=男49%、女50%、その他1%
▽18~29歳9%、30歳代11%、40歳代15%、50歳代20%、60歳代18%、70歳以上26%。
小数点以下四捨五入。グラフや表の数値は、合計が100%にならないことがある。