受験を頑張ったご褒美に、まぶたを二重にしたい―。中高生の間で美容整形が身近なものになっています。進学などで初対面の人との出会いが多い春は受診も多いそう。
専門医によると、のりなどで二重にする「アイプチ」の延長線の感覚で来院する人が目立つとのこと。コンプレックスを解消するため、そして、なりたい自分になるために美容整形のハードルが下がっているようです。
■受験が終わったら「やりたいことリストの一つ」
広島県内の女子生徒(18)は高校の卒業式を終えた3月上旬、メスを使わず医療用の細い糸で二重のラインをつくる「埋没法」の手術を受けた。自分の一重まぶたがコンプレックスだった。「大学受験が終わったら自分へのご褒美に、やりたいことのリストの一つだった。これが勉強のモチベーションにもなったんです」と笑顔を見せる。
女子生徒は二重まぶたに憧れ、中学2年のころからアイプチやアイテープを使ってきた。「一度試したら全然目の大きさが違うからびっくり。それ以来、二重をつくらずに外出するなんて無理になった」と明かす。
「しっかり二重」や「奥二重ふう」など、これまで独自に研究を重ねてきた。目元のコンディションの悪い日はうまくいかず、登校前に焦った朝もあった。そんなある日、動画投稿サイト「ユーチューブ」でアイプチによるまぶたのトラブル動画を見て、次第に整形を考えるようになった。
■「これからは自信を持って会話できる」
高校2年の時、思い切って母親(55)に相談すると、前向きに考えてくれた。母も20代のころ、アイプチを使ってまぶたが赤くかぶれた経験があるという。「私も二重に憧れがあったので、娘の気持ちがわかる」という母。
「見た目にとらわれすぎるのは良くないと思いつつ、大学という新たな環境で自分に自信を持ってスタートを切ってほしいという思いもあるんです」と話す。親の目が届く今なら術後も安心と承諾したという。
費用は約10万円。手術は20分ほどで終わり、女子生徒は目元を冷やしてすぐ帰宅した。医師からは、目元が腫れたり内出血が出たりするダウンタイムはしばらく続くと説明を受けた。手術から1週間後、腫れは残っていたが友達に会った。友達も整形に肯定的で「どんな感じだった?」と興味津々だったという。「同級生でもやってる子は多い」と、女子生徒も整形のことは隠さず話している。
4月からは関西で大学生活を送る。新生活に合わせて、アイプチをしていた頃には使いづらかったクリーム状のアイシャドーベースを買った。「アイプチに気付かれないか不安」と、これまでは相手と目を合わせて話すのが苦手だったが「これからは自信を持って会話できるかな」とはにかんでいた。
■手術後の違和感、早めに再受診を
医療法人さくら美容クリニック(中区)の棒谷智之院長(60)は、最近の傾向として「二重手術がアイプチやアイテープの延長線にある」と指摘する。中高生の受診も目立ち、新生活など環境が変わる前の2、3月が特に多いという。 同院の二重手術では、埋没法とまぶたを切開して二重ラインをつくる切開法の2種類がある。個人差はあるが、埋没法を受けた場合には、腫れやつっぱり感が1週間から1カ月程度続き、内出血することもある。
まれに、糸の結び目が小さなしこりとなって目を閉じたときに見えるほか、目の中に異物が入ったようなごろごろした感覚が続くこともあるという。
棒谷院長は「気になることがあれば早めに治療を受けた病院を受診して」と呼びかける。
■美容医療のトラブル相談 広島は4割が10~20代
広島県内24カ所の消費生活相談窓口に寄せられた美容医療サービスに関する相談件数は、2023年度(2月末時点)に56件あったという。そのうち10~20代は4割の23件に上り、5年前の2・6倍に増えている。この6年間の相談内容は、医療脱毛に次いで二重まぶたの手術が多かった。
広島市消費生活センター(広島市中区)によると、格安で手術が受けられるという広告を見てカウンセリングに行ったら、高額契約を強要された例もある。比較や検討をしないまま即日契約したり、施術を受けたりするのはトラブルに発展しやすいという。
成人年齢の引き下げにより18、19歳は保護者の同意が不要だが、センターの担当者は「契約に不慣れな年齢。親に一度相談したり、一緒に契約に行ったりすると安心」としている。