同性パートナー(2024年4月4日『しんぶん赤旗』-「主張」)

同性パートナー(2024年4月4日『しんぶん赤旗』-「主張」)

権利保障に踏み出す司法判断

 生活を共にしてきたパートナーを殺害された打撃は異性であるか同性であるかで異なるものではない―。最高裁は、同性パートナーが、犯罪被害者給付金の対象となる「遺族」に含まれるという初の判断を示しました(3月26日)。同性カップルの権利保障に踏み出した重要な判断です。

 原告は20年以上連れ添った同性のパートナーを殺害されました。遺族給付金の支給を愛知県公安委員会に申請しましたが、同委員会は殺害された被害者と原告が同性だという理由で不支給を決めました。原告は2018年、不支給の取り消しを求めて提訴しました。

■制度の目的を重視

 給付金制度は、遺族の筆頭に「犯罪被害者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)」をあげています。この中の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に、同性カップルが含まれるかが争われました。

 同制度は、犯罪によって不慮の死を遂げた人の遺族の被害を早期に軽減することや、犯罪被害者の「権利利益の保護が図られる社会の実現」を目的に掲げています。原告側は、こうした制度の目的を踏まえることを強く主張しました。

 最高裁は遺族の範囲を考えるにあたり、これを踏まえました。

 判決は、犯罪被害者基本法の基本的施策の一つが給付金制度の充実であることからすれば、法の解釈では制度の目的を「十分に踏まえる必要がある」と指摘しました。犯罪被害者支援法が給付金を受け取れる遺族として「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」を掲げているのは、民法上の配偶者に該当しない者であっても、民法上の配偶者と同様に精神的・経済的打撃の早期軽減を図る必要が高いからだとしました。

 そのうえで、その必要性は「被害者と共同生活を営んでいた者が、犯罪被害者と異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものとはいえない」とし、同性パートナーを「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」と認めました。

 最高裁は二審判決を破棄し、原告と被害者が事実婚関係にあったかどうかの事実認定のため名古屋高裁に差し戻しました。

 パートナーが殺され大きな打撃を受けた遺族が、事件から10年間保護されずにいたのです。法の目的に照らして速やかに遺族給付金を支給すべきです。

■社会の意識は変化

 一審判決(20年)と二審判決(22年)はいずれも、同性カップルを、民法上「婚姻の届出ができる関係」である異性カップルと同様にみる社会通念、社会的意識が醸成されていないことを理由に同性パートナーを遺族と認めませんでした。それに対し、最高裁判決は社会通念や意識の醸成について触れませんでした。

 同性カップルを異性カップルと同等に保障すべきだという社会通念や意識の前向きな変化により理由の根拠が失われているのです。

 「結婚の平等」を求めた裁判で札幌高裁は、憲法は同性間の結婚について異性間と同じように保障しているとしました(3月14日)。同性カップルの権利保障、結婚の平等の法整備が急がれます。