日米首脳会談、共同声明の概要判明 米国、防衛費の大幅増「歓迎」(2024年4月3日『毎日新聞』)

岸田文雄首相(左)とバイデン米大統領

岸田文雄首相(左)とバイデン米大統領

 岸田文雄首相とバイデン米大統領が10日にワシントンで実施する日米首脳会談で発表する共同声明の概要が判明した。米国は、日本が防衛費の大幅増に踏み切ったことや、2023年12月に防衛装備移転三原則と運用指針を改正して、自衛隊の地対空ミサイル「パトリオット」の米国への輸出を決めたことなどに「歓迎」を表明。安全保障面での協力を前面に押し出し、日米同盟の強化をアピールする。

 日本政府関係者が3日、明らかにした。

 共同声明では、日米両国が法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序をともに維持・強化する「グローバル・パートナー」であることを改めて確認。インド太平洋地域や国際社会の平和と安定に貢献していく姿勢を明示する。

 自衛隊は、24年度末までに一元的な部隊運用を担う「統合司令部」を新設する。これを踏まえ、在日米軍の新たな指揮・統制体系や自衛隊との連携強化を検討する。防衛装備品の海外輸出を巡り、日米間で新たな協議体を設置することも明記する。両政府は早ければ6月までに外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、外交・安全保障面の協力を加速させる。

 先端技術分野では、人工知能(AI)の研究開発について、日米の企業や大学が連携し、1億ドル(約150億円)規模を拠出する新たな枠組みを創設する方針を盛り込む。中国などを念頭に、経済力を使って相手国や企業に圧力をかける「経済的威圧」に対しても、サプライチェーン(供給網)の強化で持続可能な経済成長をけん引していく姿勢を示す。

 宇宙分野の協力では、米国主導の探査計画「アルテミス計画」で、日本人の月面探査への参加機会が2度保証されることを確認。米国人以外では日本人が初めて月面に着陸するとアピールする。

 人的交流では、新たに日米の高校生向けの留学支援制度を創設する。クリントン政権日系人初の米閣僚として商務長官を務め、22年に亡くなったノーマン・ミネタ元運輸長官の名が冠される予定だ。

 ロシアによる侵攻が続くウクライナへの揺るぎない支援方針や、対露制裁の実施も改めて確認する。中国が進める南シナ海東シナ海での海洋進出についても「不法な海洋権益に関する主張」などと反対し、台湾海峡の平和と安定維持の重要性を強調する。

 今回の首相訪米は国賓待遇の公式訪問で、15年の安倍晋三首相以来、9年ぶりとなる。首相は、日米首脳会談やフィリピンのマルコス大統領を交えた3カ国首脳会談を行うほか、米上下両院合同会議で演説する予定だ。【小田中大】

日米首脳共同声明の骨子

・防衛費の大幅増や防衛装備移転三原則の改正など、日本の防衛力強化を米国は歓迎

・防衛装備品の海外輸出について新たな協議枠組みを設置

人工知能(AI)に関する共同研究の枠組みを新設

・米主導の月面探査計画「アルテミス計画」で、日本人の参加機会を2度保証

・ロシアによる侵攻が続くウクライナへの揺るぎない支援を再確認

・日米は「グローバル・パートナー」として国際秩序を維持・強化