加速する米軍と自衛隊の一体化 アメリカの戦争に引き込まれる恐れは 安全保障関連法施行8年(2024年3月30日『東京新聞』)

 
 集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法が施行されてから29日で8年となった。自衛隊幹部が米国製巡航ミサイル「トマホーク」を米軍と情報共有して敵基地攻撃に使う可能性に言及するなど軍事的な一体化は加速。4月の日米首脳会談では米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化で合意する方針だが、強大な米軍の影響力で自衛隊の指揮権の独立性が損なわれ、日本が米国の軍事行動に巻き込まれる懸念は消えない。(川田篤志

◆海自トップ「トマホークで日米連携攻撃も可能」

 海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は26日の記者会見で「日米がそれぞれのトマホークで同じ目標に攻撃を行うことはシステム上は可能だ」と表明。「実施するかどうかはその時の戦術判断による」と強調した。
 岸田政権は2022年末に改定した国家安保戦略で敵基地攻撃能力の保有を決めるなど、16年3月に安倍政権で施行された安保法を受けた防衛政策の転換を次々と進める。「存立危機事態」になった際、集団的自衛権の行使で自衛隊が敵基地攻撃を行う可能性があり、日米が協調したトマホークの運用も想定される。
 
 制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長も28日の会見で「トマホークはもともと米軍の装備なので、さまざまな形で日米連携が行われていく」と指摘する。日本は米国からトマホーク(射程1600キロ以上)を最大400発購入することを決めており、25~27年度にかけて順次納入される。
 在日米軍は25~29日、米海軍横須賀基地で海自の隊員らに対し、トマホークの実戦配備に向けた初めての教育訓練を実施。トマホークの運用に必要な座学研修や、米艦艇での実戦を想定した訓練を行った。今後も2カ月ごとに日米で訓練を行い、運用に習熟した隊員を増やしていくという。

◆岸田首相は「独立した指揮系統」を強調するけれど

米海軍横須賀基地

米海軍横須賀基地

 木原稔防衛相は29日の会見で米軍の支援を歓迎し、安保法施行に伴い「日米同盟はかつてないほど強固となり、抑止力、対処力は向上した」と主張した。
 だが、米国がサイバーや衛星などを含め圧倒的な軍事力と情報収集力を誇る中、日米の軍事的な一体化が進めば進むほど、有事の際に日本が主体性を発揮しにくくなり、米国の意向に左右される側面は否定できない。トマホークの発射でも、日本が狙う相手国の軍事拠点の選定などで米軍の能力に頼らざるを得ない。
 岸田文雄首相は4月のバイデン米大統領との会談で、敵基地攻撃能力の保有を踏まえ、日米の共同対処能力の向上に向け、米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化で一致する見通しだ。
 首相は「自衛隊と米軍は独立した指揮系統に従って行動する」と繰り返すが、共同作戦計画などで一体的な運用がさらに強まるのは確実だ。日本が独立した指揮系統を維持できるのか、米国の軍事行動に組み込まれる事態は想定されないのか、疑問は尽きない。