交流サイト(SNS)に殺人事件の遺族を傷つける投稿をしたなどとして訴追された仙台高裁の岡口基一判事(58)=職務停止中=について、裁判官弾劾裁判所(裁判長・船田元衆院議員)は3日、罷免判決を言い渡した。岡口氏は法曹資格を失った。弾劾裁判所は主文の言い渡しを後に回し、判決理由の朗読から始めていた。
裁判官弾劾法は、罷免事由を「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」があった場合などと定めている。
罷免判決は盗撮で罰金刑を受け、平成25年に罷免された大阪地裁判事補(当時)以来で、8人目。岡口氏は、SNS投稿を理由に訴追された初めての例だった。
訴追状によると、岡口氏は平成29年~令和元年、女子高生殺害事件の遺族やペットの返還をめぐる民事訴訟の当事者に対し、侮辱したり、社会的評価を不当におとしめたりする投稿をSNSなどにしたなどとされる。
裁判官訴追委員会側は、岡口氏が一般読者からの注目を集めることを期待し、投稿に及んだと指摘。「司法に対する国民の信頼を損なわせた程度は非常に大きい」として、罷免にすべきだと主張していた。
岡口氏は弾劾裁判で、投稿は判例紹介などが目的だったとし、遺族を傷つけたことを謝罪。今月12日の任期満了で裁判官を退官する意向を示していたが、弁護側は「罷免事由にはあたらない」と主張していた。
■弾劾裁判
国会の裁判官訴追委員会の訴追を経て、開かれる。弾劾裁判所は衆参各7人の国会議員で構成され、審理に関わった国会議員の3分の2以上が賛成した場合、罷免の判決を言い渡す。審理は原則として公開の法廷で行われる。判決は言い渡しと同時に確定し、法曹資格を失う。不服申し立ての方法はない。判決から5年経過し、弾劾裁判所が相当の理由があると判断した場合は、法曹資格が回復する。
SNS不適切投稿を繰り返した岡口基一判事に「罷免」判決 弾劾裁判所(2024年4月3日『東京新聞』)
裁判官弾劾制度 裁判官を辞めさせる唯一の制度。裁判官弾劾法では▽職務上の義務に著しく違反、または職務を甚だしく怠った時▽裁判官としての威信を著しく失うべき非行があった時―に罷免できると定めている。国会の弾劾裁判所で、衆参議員14人が務める裁判員が公開の法廷で審理する。判決は「罷免」か「罷免しない」の二択。3分の2以上の賛成があれば、罷免される。罷免されると、裁判官の身分だけではなく法曹資格も失う。
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