仙台高裁判事、遺族侮辱で罷免判決 SNS投稿巡り初 弾劾裁判所(2024年4月3日『毎日新聞』)

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弾劾裁判所へ向かう仙台高裁の岡口基一判事(右)=東京都千代田区で2024年4月3日、玉城達郎撮影
弾劾裁判所へ向かう仙台高裁の岡口基一判事(右)=東京都千代田区で2024年4月3日、玉城達郎撮影

 

 ネット交流サービス(SNS)への投稿で殺人事件の遺族を傷つけたとして訴追された仙台高裁の岡口基一判事(58)=職務停止中=に対し、国会の裁判官弾劾裁判所(裁判長・船田元衆院議員)は3日、罷免とする判決を言い渡した。罷免判決は2013年以来で、戦後8人目。SNSの投稿を巡って裁判官の罷免の可否が争われた初のケースだった。

 岡口判事は任期満了の今月12日までで退官する意向を示していたが、法曹資格を失い、退職金も支払われないことになる。判決への不服申し立てもできない。

 岡口判事は東京高裁判事だった17年12月、東京都江戸川区の女子高校生が殺害された事件について「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」とツイッター(現X)に投稿するなど、19年11月までの計13件の表現行為で訴追された。

 検察官役の裁判官訴追委員会は、岡口判事が抗議を受けても遺族を侮辱する投稿を繰り返したと指摘。罷免の理由となる「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に当たると主張した。

 岡口判事の弁護側は、これまでの罷免判決は重大な職務違反や犯罪行為が主な理由で、岡口判事のSNS投稿とは根本的に内容が異なるとし、罷免の理由にはならないと反論していた。

 裁判官の身分は憲法で保障されている。病気などで職務ができない場合を除き、国会議員14人で構成される弾劾裁判所で3分の2以上の賛成が必要な罷免判決が出ない限り、辞めさせられない。罷免されても、5年以上経過すれば弾劾裁判所に法曹資格回復の申し立てができる。【遠藤浩二