国防意識と幸福度(2024年4月2日『産経新聞』-「産経抄」)

 
ミャンマー・ネピドーで実施された国軍記念日のパレードで行進する兵士ら(共同)

 

 最近の国際ニュースをチェックしていると、徴兵制をめぐる話題が目立つ。

▼軍事クーデターから3年余りが過ぎたミャンマーでは国軍が徴兵制を導入すると発表した。国軍は国内で民主派や少数民族武装勢力と戦闘を繰り広げてきた。従軍すれば自国民に銃を向けることになる。兵役を逃れようと国外に脱出、あるいは反政府の武装勢力に加わる若者が急増している。

パレスチナ自治区ガザ地区で軍事作戦を進めるイスラエルでは18歳以上の男女に徴兵義務が課せられてきた。ただユダヤ教超正統派の教徒たちは免除されている。国民の大多数は徴兵制自体には理解を示すものの「不公平」に対する批判の声が高まり、政権を揺るがす騒動になっている。

▼日本ではどうか。徴兵制の議論以前の問題として、衝撃的な世論調査の結果をかつてコラムで紹介した。「戦争になった場合、あなたは国のために戦いますか?」。世界各国の18歳以上の男女を対象にした調査の設問の一つである。「はい」と答えた割合が日本は13・2%に過ぎなかった。世界79カ国・地域の中で最低である。

▼先月には世界143カ国・地域を対象に国連団体が調査を行った「世界幸福度ランキング」が発表された。7年連続1位のフィンランド以下、2位デンマーク、3位アイスランド、4位スウェーデン、5位イスラエルが上位を占めた。アイスランドを除くいずれの国も徴兵制を採用している。北欧の国々には、ロシアの軍事侵略に立ち向かうウクライナへ強力な支援を行ってきたという共通点もある。日本は前年から4つ下がる51位だった。

▼国民の国防意識と幸福度に、果たして関連があるのかどうか。どなたか識者の見解を伺いたいものだ。