コロナ支援終了 今後も警戒は怠れない(2024年4月1日『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの治療や医療提供体制に関する公費支援が終了し、きょうから通常の医療体制に完全移行する。患者の窓口負担は原則1~3割となる。
 支援は昨年5月、コロナが感染症法上の分類で5類になってから段階的に縮小されてきた。政府は今冬の感染拡大にも対応できたことから、移行が可能と判断した。
 終息はなお見通せておらず、人の流れが活発化する時期に感染が拡大する可能性がある。高齢者らを中心に、重症化すれば危険な病気であることに変わりはない。
 自己負担の増加に伴い受診控えが増える恐れもある。行政は引き続き、流行の動向や新たな変異株の発生などへの警戒を怠らず、必要に応じ公費支援を再開するなど臨機応変に対応してもらいたい。
 治療薬の自己負担は先月まで最大9千円だったが今後、3割負担の人は1万5千円超の支払いが求められる。最大で月1万円だった患者への入院費補助もなくなる。
 ワクチンは無料接種が終わる。65歳以上の人などが対象となる年1回の定期接種に切り替わり、7千円程度の自己負担が生じる。
 対象外の人は任意接種となり、国の直近の試算では1万5千円程度が必要になるという。
 物価高が続く中、決して軽くない負担である。ただ受診を控えてしまうと感染や重症化のリスクが高まる。発熱などの症状が出たら診察を受けることが大切だ。
 保健所は24時間対応の専用電話窓口を廃止した。受診相談などは平日の日中に受け付けるという。
 深夜の相談ができず不安を感じる住民もいるだろう。声を聞き適切に助言するなどのきめ細かな目配りは一層欠かせない。
 忘れてはならないのが後遺症の存在だ。倦怠(けんたい)感や集中力低下などに長期間苦しむ人は今も多い。
 感染との因果関係の証明は難しく、治療法は確立されていない。社会の関心が薄れたという懸念の声も上がる。医療機関や勤務先の企業などが連携し、継続して支えることが求められる。
 コロナの感染拡大から4年が経過した。政府の対策はアベノマスクの配布など反省点も多く、教訓として生かさねばならない。
 能登半島地震では、多くの人が身を寄せる避難所などでコロナをはじめとする感染症が拡大し、医薬品不足などが課題となった。
 避難所の感染リスクはかねて指摘されてきた。少しでも抑えるための方策を、行政はさらに追求する必要がある。