コロナ公費全廃(2024年3月25日『しんぶん赤旗』-「主張」)

治療控えで感染拡大・重症化
 いまも感染者が発生し続ける中で、政府は新型コロナウイルス感染への公費負担を3月末で全廃するといいます。患者の自己負担はほかの病気と同じように原則1~3割の窓口負担になり、ワクチンも無料から有料に、医療機関のコロナ病床への財政措置、診療報酬の特例措置も廃止されます。患者負担が重くなり受診や治療控えが起きれば感染が拡大し、ことに高齢者や基礎疾患のある人は重症化し、命の危険にさらされます。

とても払えない薬代に
 新型コロナウイルスは季節性インフルエンザよりも感染力が強く、他の感染症と同列に扱えません。政府は昨年5月にコロナの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同じ5類に移行しましたが、その後も医療機関や高齢者施設で集団感染が発生しています。厚労省は今回の措置について、感染状況は3週続けて減少していると説明しましたが、減少前は10週連続で上昇し、「10波」と言われました。減少は10波が収まったにすぎません。変異株も続出しています。長期の後遺症に苦しむ人が多発しているのも深刻です。

 公費負担の廃止で患者負担が大きく増えるのは治療薬です。もともと全額公費負担でしたが、昨年10月から一部自己負担が導入され、医療費の窓口負担3割の人は1回の治療で9千円の負担になりました。4月以降、公費負担が廃止されると窓口3割の人の場合、重症化リスクのある人向けの「ラゲブリオ」は1回の治療で約2万8千円の自己負担に、軽症~中等症向けの「パキロビッド」は3万円、「ゾコーバ」は1万6千円と大変高額になり、とても払えないという人が続出しかねません。

 コロナワクチンも無料から有料になります。自治体の定期接種の対象は65歳以上と60~64歳で重い基礎疾患を持つ人に限定され一部自己負担(7千円程度)となります。それ以外で接種を希望する人は全額自費です。入院医療費補助は、現在、高額療養費制度を適用したうえで公費で最大1万円の補助がありますが、4月からは補助が廃止されます。

 医療機関への病床確保料は全廃されます。当初、最大30万円で現在15万円の高齢者施設の施設内療養の補助もすべて廃止されます。

 日本感染症学会、日本化学療法学会、日本呼吸器学会の3学会は2月8日、厚労相新型コロナウイルス感染症治療薬の公費支援の継続を求める要望書を提出しました。今年に入って再び感染者が増加し各地で入院患者が急増していると指摘し、世界的には新たな変異株が主流となっており、今後も流行が起きる可能性は高く対策が必要だと訴えています。

 昨年10月以降、治療薬の処方を拒む患者が出ており、支援措置の廃止でワクチンの接種率は下がり、診療・治療拒否が発生し、医療ひっ迫につながるとして公費支援の継続を求めています。

十分な治療体制確保を
 感染の早期発見、十分な治療と後遺症を含めたケアの体制確保は依然として重要です。感染拡大が起きれば、国民生活だけでなく経済にも重大な影響が及ぶのはこの間のコロナ禍の教訓から明らかです。感染症対策は国の責務です。軍拡と大企業優遇の予算を抜本的に見直し、コロナ感染の公的負担全廃を撤回することを求めます。