コロナ公費支援終了 再流行への備え怠るな(2024年3月23日『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの治療や医療提供体制に関する公費支援が今月末で終了する。4月以降は入院費など患者の自己負担が増えることになる。

 新型コロナは昨年5月、感染法での位置付けが、危険度の高い「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられた。私たちの暮らしも、コロナ禍前の状況に戻りつつある。ただでさえ膨らみ続ける国の医療費を考えると、自己負担の増加は避けられない。

 とはいえ、目配りは欠かせない。4月から高額治療薬の費用は1~3割の自己負担となり、最大1万円の入院費の補助もなくなる。経済的に苦しい人が診察や治療を控えることも予想される。特段の配慮が国に求められる。

 私たち自身の努力も不可欠だ。インフルエンザと同様、うがいや手洗いの徹底などでコロナ感染の拡大を防ぐことである。大流行を食い止めることにもつながるはずだ。

 予防に努める上で、気になるのはワクチン接種がどうなるかだろう。今までは国が全額を負担しており、無料で受けることができていた。

 今年秋から各自治体が年1回のワクチン定期接種を始める。国は、自己負担が最大7千円程度になるよう費用を助成する。低所得者が自己負担しなくて済むような対応を講じるべきである。

 ただ、定期接種は65歳以上の高齢者と、60~64歳で心臓や腎臓などの機能に障害があるといった一定の基礎疾患のある人に限られている。

 秋までに打ちたい人や対象外の世代の人は、4月以降は任意接種となる。原則、全額自己負担となる。インフルエンザのワクチンより数倍高く、接種しない人が多く出るかもしれない。無料のうちにと駆け込み接種が増えれば窓口が混乱しかねない。医療機関は備えを急いでほしい。

 予防にどれほど注意を払っていても感染する恐れはゼロにはならない。万一発症したら、どうすればいいかも気にかかる。2類相当のとき、コロナ病床に割かれたのは全体の4%ほどに過ぎなかった。人口比で世界有数の病床数を誇る割に寂しい状況だった。

 国は、5類移行後は広く一般的な医療機関での対応を目指している。そのため、コロナに限らず感染症が疑われる発熱患者を診療したら、報酬を加算することを2024年度の診療報酬改定に盛り込んだ。入院の必要な患者が放置されることのないよう、それぞれの地域で対策を練り上げておいてもらいたい。

 厚生労働省によると、今月10日までの1週間に報告された全国の患者数は、5週連続で前の週に比べ減少した。しかしコロナウイルスが消えたわけではない。新たな変異株が発生していないか、国は監視を続けている。再流行を防ぐ備えを怠ってはならない。

 後遺症対策も急がれる。岡山大など個別に対応している所もあるが、深刻な実態の調査や原因解明、治療法の開発はこれからだ。国主導で進めなければならない。国民の健康を守る責任があることを忘れてもらっては困る。