新たな感染症危機に備え、医療機関に医療提供を義務づけることを柱とする改正感染症法が4月1日に完全施行される。病床や発熱外来が不足した新型コロナウイルス禍の教訓を踏まえ、医療体制を事前に確保する仕組みが整うが、義務化対象外の医療機関の協力取りつけには課題もある。
改正法は、国や自治体、健康保険組合などが開設する「公的医療機関等」などに医療提供を義務づけ、都道府県知事は、具体的な提供内容として〈1〉病床〈2〉外来診療〈3〉自宅療養者への医療――などを通知する。義務化の対象外の医療機関は、合意の上で知事と協定を結ぶ。医療機関が通知や協定に従わない場合、知事は勧告や指示ができる。
一方、確保見込みの病床は昨年12月15日時点で3万3723床と、政府が今年9月までの目標とする5万1000床の6割強にとどまる。新型コロナ流行時は、患者受け入れに伴う他の診療の縮小で大幅減収となったケースが多く、義務化対象外の医療機関には減収に対する懸念が根強い。厚生労働省は、国による財政支援について「感染症の特性や状況を踏まえて検討する」としており、引き続き協力を呼びかける考えだ。
改正法ではこのほか、都道府県をまたいだ医療人材の派遣や、マスクなどの物資を確保するための規定なども盛り込まれている。