【動画あり】津波後の海底に野生イルカの群れ…水中写真家・鍵井靖章さんと共同潜水調査 能登半島地震3カ月(2024年4月1日『東京新聞』)

 赤いお椀(わん)や消防団のヘルメットが砂地に沈み、船体が横たわる―。能登半島地震での海の変化を探ろうと、中日新聞社水中写真家の鍵井靖章さん(53)=神奈川県鎌倉市=と共同で、石川県珠洲(すず)市、能登町七尾市穴水町の沿岸部を潜水調査した。津波で流された生活用品など被災の爪痕だけではなく、野生のイルカの群れもカメラに収めた。

 鍵井靖章(かぎい・やすあき) 兵庫県生まれ。龍谷大を卒業後、1993年からオーストラリアやモルディブなどを拠点に撮影し、98年に帰国。これまでに約40の国や地域の海に潜った。水中写真家の国内第一人者で、東日本大震災後、定期的に東北に入り、被災地の海を記録する。

水中写真家の鍵井靖章さん

水中写真家の鍵井靖章さん

 3月11日から4日間、最深9メートルの海域に潜った。津波被害を受けた能登町白丸の海底で、奥能登伝統のもてなし文化「よばれ」で使われる赤い御膳やお椀、自転車やガスこんろを確認。珠洲市の飯田港では、地元消防団のヘルメットやホース、沈没船をとらえた。
 能登島北側の七尾北湾ではイルカの群れを発見。イルカは環境変化に敏感で、地震の影響が懸念されていた。のとじま水族館七尾市)の担当者は「今回初めてイルカの元気な姿を確認でき、ひと安心。地震津波で海の環境は大きく変化した恐れがあり、生態系を注視していく」と話した。(前口憲幸)
 

 能登半島地震津波 国土交通省によると、1月1日の地震による津波の浸水範囲は石川県珠洲市能登町志賀町で計約190ヘクタールに上る。これは東京ドーム約40個分の広さに相当。能登半島北東部に被害が集中し、東日本大震災以来の大規模津波被害となった。複数の場所で津波が高さ4メートル超に達していた痕跡が確認されており、地震発生の1分後に第1波が到達したとする分析もある。