赤いお椀(わん)や消防団のヘルメットが砂地に沈み、船体が横たわる―。能登半島地震での海の変化を探ろうと、中日新聞社は水中写真家の鍵井靖章さん(53)=神奈川県鎌倉市=と共同で、石川県珠洲(すず)市、能登町、七尾市、穴水町の沿岸部を潜水調査した。津波で流された生活用品など被災の爪痕だけではなく、野生のイルカの群れもカメラに収めた。
鍵井靖章(かぎい・やすあき) 兵庫県生まれ。龍谷大を卒業後、1993年からオーストラリアやモルディブなどを拠点に撮影し、98年に帰国。これまでに約40の国や地域の海に潜った。水中写真家の国内第一人者で、東日本大震災後、定期的に東北に入り、被災地の海を記録する。
水中写真家の鍵井靖章さん
3月11日から4日間、最深9メートルの海域に潜った。津波被害を受けた能登町白丸の海底で、奥能登伝統のもてなし文化「よばれ」で使われる赤い御膳やお椀、自転車やガスこんろを確認。珠洲市の飯田港では、地元消防団のヘルメットやホース、沈没船をとらえた。
能登島北側の七尾北湾ではイルカの群れを発見。イルカは環境変化に敏感で、地震の影響が懸念されていた。のとじま水族館(七尾市)の担当者は「今回初めてイルカの元気な姿を確認でき、ひと安心。地震と津波で海の環境は大きく変化した恐れがあり、生態系を注視していく」と話した。(前口憲幸)