自民党の派閥の裏金事件を受け、来週にも行われるという関係議員への処分。 党内で最も不記載の額が大きかった二階元幹事長が今週、次の選挙に出馬しないと表明しました。 その裏金で購入していたとする大量の書籍、およそ3500万円分。
その後、それらの書籍はどうなったのか、取材しました。
『義理(G)と人情(N)とプレゼント(P)』3500万円分の書籍の行方【報道特集】
■二階元幹事長の書籍“爆買い”
自民党・二階俊博元幹事長 「自らの政治責任を明らかにすべく(岸田総理に)次期衆議院選挙に出馬しないことを伝えました」 自民党の処分を前に、自らの進退を決めた二階俊博元幹事長、85歳。 記者 「お年を考えてということではない?」 二階元幹事長 「お前もその歳来るんだよ。馬鹿野郎」 政治資金パーティーをめぐる不記載の額は5年間で3526万円と、二階氏が最も多い。
問題発覚を受けて二階氏の事務所は収支報告書を訂正。新たに公開した領収書から明らかになったのは“書籍の爆買い”だった。
買っていた本は、二階氏に焦点を当てたものから、他の政治家が執筆したものなど17種類。幹事長時代を含む2020年からの3年間に合わせて2万7700冊、3470万円あまりを支出していた。
■3500万円書籍代のナゾ
領収書には、書籍代の受け取り先として複数の企業名が記されていた。17の書籍のうち、最も支出額が多かったのが、「ナンバー2の美学・二階俊博の本心」。二階氏についてこう紹介している。
「二階が人心掌握に長けているといわれるその極意というのは『義理(G)と人情(N)とプレゼント(P)』といわれ、多くの関係者から“二階のGNP”と呼ばれているという」
二階氏はこの本を5000冊、合計1045万円分、購入したという。
取材を進めると、出版社も把握していない不可解な金の流れがあることがみえてきた。
村瀬健介キャスター 「5000冊という大量の書籍を購入したことになっていますけれども、その書籍の出版社がこちらです」 編集長が取材に応じた。5000冊が二階氏によって購入されていたことを全く知らなかったという。
ブックマン社 小宮亜里編集長
「ちょっとこれは知らなかった。青天の霹靂でした」
本を監修した人物から、出版する大半、6000冊を“自分が買い取る”と条件を提示され、出版を決めた。その人物は政界に広く人脈があり、二階氏とも何度か対談する仲だった。
ブックマン社 小宮編集長
「政治家さんの本って売れないので、(監修者が)「僕が買い取る」と言うので出版を進めました。ポケットマネーなのかもしれないし、その辺はあまり深く考えなかった」
ーー出版に政治資金が使われているっていうのは…
ブックマン社 小宮編集長
「もうそれがわかってたら(本は)出さないですよ。裏金と呼ばれるもので買われてたっていうのはちょっと想像してなかったというか」
二階氏は、5000冊分の代金を、この出版社ではなく、本の監修を務めた人物の会社宛てに振り込んだとしている。支払われたのは“定価”での合計1045万円。一方 出版社は、その会社に割引価格、 約815万円で売ったという。差額230万円はこの会社の利益になっているのか?会社を訪ねた。
村瀬キャスター
「二階さんの政治資金の件で取材をしておりまして。どういったご事情かを伺えないかと思いまして参ったんですけど」
監修者は不在。改めて書面で取材を申し込んだが期限までに回答はなかった。
■大量の書籍の行方は・・・
別の書籍代は、二階氏の地元・和歌山で支払われていた。二階氏が公表した手書きの領収書には、書籍代を受け取ったのは、出版社ではなく和歌山の印刷会社と記されている。和歌山に向かった。支払先である印刷会社を訪ねると、社長が取材に応じた。
印刷会社の社長
「今回のこの本に関しては、うちから販売したっていうよりは、印刷物を納めさせてもらったっていう」
ーー二階事務所に納めた?
印刷会社の社長
「お届けした。その対価としてお金をいただいたという形」
二階事務所から支払われた金額は、あくまで『原稿を印刷し、製本した代金』だという。
印刷会社の社長
「元々担当していたのがうちの叔父でして、亡くなりまして。詳しい内容に関しては分からないです。二階さんとのやり取りとか」
ーーどこに送ったんですか?こんな大量な本を?
印刷会社の社長
「二階事務所さんですよ」
ーー御坊市?
印刷会社の社長
「はい」
ーー3000冊も?
印刷会社の社長
「はい」
これまで二階事務所は購入した書籍は、「“選挙区外”の行政や議会関係者などに配布した」と説明していた。なぜ、 “選挙区外”と強調しているのか?公職選挙法に詳しい上脇教授は・・・
神戸学院大学 上脇博之教授
「(配布するのが)選挙区内の人であれば違法な寄付、公職選挙法違反の『選挙区内の者に対する寄付』になってしまいます」
領収書に記された9社を取材したところ3社から回答があった。二階氏が購入したとする1万1500冊(3社合計)のうち、約7000冊は地元・和歌山県御坊市の二階事務所に送ったという。
書籍は、選挙区内の有権者には配られていなかったのか?古い本を持っていた人がいた。商店街の理事長をしていた父親のものだという。
御坊市の有権者
「ありました。なんか分からないけど、父親ロータリーに入っていたんで、こんなのいっぱい。こんなのって失礼よな、二階先生の」
ーーこれ、どうしたんですか?
別の有権者は、以前、二階氏の集会で、本が無料で配られていたと話す。
御坊市の有権者
「二階さん本人が来て何か(集会)するときにくれた。2~3冊もらったよ。わしは近所やし」
さらに、収支報告書に記載された本を、無料でもらったという有権者も…
御坊市の有権者
「3回か4回ほどいただいたと思うんですけど、あの人は幹事長時代、本をこまめに出された」
自宅に貼られたポスター。男性は長年、二階氏を支援してきたという。
御坊市の有権者
「もう3年ぐらい前の話になるんかな。新風会(二階氏の政治団体)の方でお世話する人がうちへ持ってきてくれた。『これは二階さんが出版された本ですから、読んでおいてください』って言ってね、持ってきてくれました」
「いやいやそんなお金なんか(払わない)。その前にも持ってきてくれました。新風会の役員会に出席したときにいただいて帰ってきたこともありました」 これまで二階氏を支えてきたが、今回の「裏金問題」で不信感を抱いているという。 御坊市の有権者 「あの人が幹事長になって、自分の思うようにお金を使うようになる。もうお金にまみれた、そういうような政治じゃなしに、もっと純粋な方に(任せたい)と」
上脇教授は… 神戸学院大学 上脇博之教授 「これは弁明としてはおそらく『“選挙区外”の人に配布した』というのが、“嘘の説明”になってしまいますね。むしろ、疑念が生まれてしまったが故に、もっと説明責任を果たさないと(国民に)納得してもらえないと思います」
■政策活動費50億円の使途は
なぜ、収支報告書の訂正で書籍代を付け足したのか。 二階氏については、幹事長時代に党から受け取っていた政策活動費50億円の使い道についても疑問の声が上がっている。 政策活動費は、どう使ったかを収支報告書に記載する義務がない。 上脇氏は、書籍の購入には裏金ではなく、この政策活動費が使われていたのではないかと推測する。
神戸学院大学 上脇博之教授 「本当は政策活動費で買っているのに、裏金問題が発覚したから、ここをどうやって凌ごうかと。だったら、本を買ったことにしようということで、すでに買っているやつを付け替えて、政治団体が支払ったことにしようと疑われても仕方がないと思う。真実の支出ではなくて、それはもう書けないので」
二階氏の事務所は、取材に対し、こう回答した。 二階氏の事務所 「政治家は国民のために政策を実行することが本分です。広報の一助として書籍を通じた発信もしてきました。収支報告書の不記載につきましては、断腸の思いであり、自らのけじめを皆様にお伝えさせて頂いたところであります」
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