能登半島地震で被災 校舎で寝泊まりの教職員に居住空間を提供(2024年3月30日『NHKニュース』)

能登半島地震で被災し、学校の校舎などで寝泊まりしながら対応している教職員たちを支援しようと、被災地の小中学校にプライバシーが確保された居住スペースが設けられ入居が始まりました。

能登地方の学校では、自宅が被害にあったり道路の寸断により通勤が困難になったりして、避難所から通う教職員や学校の校舎で寝泊まりしながら勤務を続ける教職員もいて、環境整備が課題となっています。

こうした状況を受け、石川県教育委員会と協定を結ぶ都内のNPO法人が、PTA連合会や企業の協力のもと、珠洲市輪島市能登町の小中学校の教職員を対象に、3つの小中学校の校舎内に居住スペースを設ける取り組みを始めました。

このうち、珠洲市の緑丘中学校では30日から入居が始まり、利用する教員らがNPO法人のスタッフとともに家具を運び入れていました。

校舎の空き教室を利用した居住スペースには、個室と共有エリアが設けられ、木製の板で仕切られた個室は施錠もでき、プライバシーが確保されていて、共有エリアには冷蔵庫や調理場所、ソファーなどが配置されています。

30日に入居した輪島中学校の南豪史教諭は、珠洲市に自宅がありますが避難指示が出ているため、2か月余り職員室で寝泊まりしながら勤務を続けてきました。

南さんは「寝泊まりしている職員室では、途中で目が覚めてしまうこともありましたが、ここではリラックスして生活できると思います。しっかり回復して、その分、子どもたちのために頑張りたいと思っています」と話していました。

NPO法人「カタリバ」の今村久美代表理事は「自身もストレスを抱える中で、子どもたちの笑顔を支えるのは大変だと思いますが、この場所で気持ちをリセットすることで、心を穏やかにして働いてもらえたら」と話していました。

教育委員会によりますと、3つの学校で合わせて23の個室が設けられ、まずは希望があった小中学校の教職員15人が入居する予定だということです。

石川県教育委員会の金子俊一教育次長は「現状、希望した人は全員入居できており、まだ少し余裕があるので、これから希望する人がいれば対応していきたい。教員が元気に子どもたちの前に立って指導にあたることが奥能登の復興にもつながると考えている」と話していました。

3か月近く校舎や車で寝泊まりする教職員も

能登半島地震の被災地の学校では、3か月近く校舎に寝泊まりしたり車中泊をしたりして、子どもたちへの対応を続けている教職員たちもいます。

石川県輪島市にある県立輪島高校では、能登半島地震で自宅が全壊や半壊するなどした教職員も少なくなく、多いときには10人ほどが学校などに駐車した車内で寝泊まりし、現在も少なくとも4人が車中泊を続けているということです。

平野敏校長(59)も、観光名所「朝市通り」の近くにある自宅が大規模半壊の被害を受け、3か月近く学校の校長室で寝泊まりしながら勤務を続けてきました。

学校には風呂や洗濯機がないため、平野校長や車中泊をしている教職員は、週末になると金沢市などの家族や知人のもとで、入浴したり洗濯したりして対応しているということです。

校長自身は4月から石川県が確保した宿泊拠点に入居できることになりましたが、入居の条件にあわない教職員は車中泊を続けるということです。

平野校長は「教職員たちはみな自分の生活もあるのに、学校の子どもたちのために献身的に勤めているので、申し訳なさと感謝の気持ちでいっぱいです。体の疲れももちろんですが心のほうも心配で、気丈にふるまってはいますがふとした瞬間に伝わってくるものがあります」と話していました。

この春、輪島高校では新入生76人が入学予定ですが、地元に残る生徒のほか、金沢市内や避難所からオンラインで授業を受ける生徒もいることから、個々の状況に応じた学習支援が求められていて、教職員たちが新学期に向けて準備を進めているといいます。

校長自身も生徒が輪島の街づくりに携わるプロジェクトを進めるなど、できることから取り組んでいきたいとしています。

平野校長は「どんな環境でも、子どもたちに今できることを1つずつ提供していきたい。長い闘いになると思いますが、体調を崩さないよう心のケアも含めてお互い気をつけながら取り組んでいくしかないと思っています」と話していました。