奥能登の教員に出勤強要…4割が「あった」「感じた」 被災地の早期学校再開に課題(2024年4月2日『東京新聞』)

 
 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県奥能登地方の小中学校再開を巡り、県教職員組合能登支部が出勤の強要について教職員にアンケートし、約4割が「強要があった」「強要を感じた」と答えていたことが分かった。再開がより早かった自治体の教職員の方が「強要があった」という回答が多く、災害時に学校を急いで再開することの課題が浮き彫りになった。(日下部弘太、加藤祥子、酒井博章)
 アンケートは、奥能登地方の輪島市珠洲(すず)市、能登町穴水町の4市町の小中学校で働く教職員を対象に1月中に実施した。組合によると、全教職員は290人、組合員は186人で回答したのは75人だった。
 
出勤強要についての教員アンケートの結果

出勤強要についての教員アンケートの結果

 出勤の強要が「あった」「感じた」の回答が計29人(38.7%)、「なかった」が35人(46.7%)、「何とも言えない」が11人(14.7%)。4市町の中で最も早い1月11日から一部の小中学校を再開した珠洲市では、回答した教員の56%が出勤を強要されたと感じていた。
 自由記述では、「1カ月間出てこられなかった先生に対し、(管理職が)『出てくるのが遅い』と発言。一時期、職員室に全職員の出勤率が書かれていた」「電気もなく電波も届かない学校へ集めるのはどうかと思った」(いずれも珠洲市の教員)などの回答があった。本紙の取材では、出勤を求められたことに重圧を感じたが、無理に学校に行って精神的な不調をきたした教員もいた。

◆「教員への配慮やケア、検証すべき」

 珠洲市教育委員会の担当者は、早期再開を目指したことが教職員の負担となり、出勤を強要されたと感じた回答の多さにつながった可能性を認めた。再開された学校では久しぶりに会えたことを喜ぶ子どもたちの姿もあり、「早期再開は良かったと思う」と話した。
 早稲田大の本田恵子教授(学校心理学)は学校の早期再開に「危機管理では、なるべく早く日常に近い状態に戻すことが基本。教委などには、子どもの学習保障をしなくてはという責任感があったと思う」と理解を示すも、「現場の教職員に対する配慮やケアが十分だったのか、検証するべきではないか」と指摘した。