宇都宮大4年生「除籍危機」に寄付の申し出続々 全額納付にこぎつけて涙「必ず社会に貢献し恩返しをする」(2024年3月30日『東京新聞』)

 
 宇都宮大4年生のフィリピン人女性(22)が、大学から「授業料を免除しすぎた」として合計44万円を3週間以内に納入するよう求められている問題を東京新聞が29日に報じたところ、18人の読者から寄付などの申し出が寄せられた。女性の代理人の指宿昭一弁護士の事務所にも記事を読んだとして9人から寄付や支援の申し出があった。このうち1人が全額分を指宿弁護士側に送金し、全額が29日午後、大学に納入された。(池尾伸一)

◆「こんなにも温かい人たちがいて、救われた」

地元FM局に出演した宇都宮大4年生の女性=2023年5月(本人提供)

地元FM局に出演した宇都宮大4年生の女性=2023年5月(本人提供)

 大学側は29日午後5時までに払わねば「除籍する」としていたが、読者の善意により期限ぎりぎりで除籍される事態が回避された。
 これからも学べることが決まった女性は「寄付の知らせを聞いて、涙が止まらなかった」と言う。「除籍になったら一から出直すしかない、と完全に覚悟していた。こんなにも温かい人たちがいて、救われた。必ず社会に貢献し恩返しをする」と語った。
 寄付をしたのはフィリピンで暮らした経験がある女性で、「4年生まで頑張ってきたのにかわいそうだ」と考えたという。
 読者からは本紙に温かい声が続々届いた。栃木県の男性は「必要なら大学に持っていく」、中国に滞在する男性は「ネットでみて助けたいと思った」とした。
 

◆宇都宮大「適正だった。謝罪も考えていない」

 この問題のきっかけは、宇都宮大が昨秋、後期の授業料について「両親の所得区分が変わったので免除額を縮小する」と通告してきたこと。さらに、大学は3年生時の授業料にまでさかのぼって差額を払うよう求めてきた。女性は分割払いを求めたが応じなかった。
 この問題について、盛山正仁文部科学相もこの日の記者会見で「丁寧な説明を欠いた」としたが、宇都宮大は「学則にのっとったもので適正だった」(学生支援課)との立場を崩していない。女性への謝罪も「考えていない」という。
 指宿弁護士は「大学側の説明は極めて不十分。このままならほかにも理不尽な要求で、運命が変わってしまう学生が出てくる懸念があり、さらに説明を求めていく」と語った。