後半国会 不信の払拭へ成果を出す時だ(2024年3月30日『読売新聞』-「社説」)

 政治資金の問題で、いつまでも国会審議が滞っているようでは困る。資金の透明化など具体的な改革案を決める段階だ。山積する重要課題についても成果を出す必要がある。

 2024年度予算の成立を受けて岸田首相が記者会見した。首相は「デフレ脱却への道は、いまだ道半ばだ」と述べ、賃金や投資を抑えるコストカット型経済からの転換を図る考えを強調した。

 物価の安さを求めるデフレ心理を改め、賃上げが当たり前の社会を目指す首相の狙いは妥当だ。

 首相は「来年以降に物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる」とも語った。引き続き政権を担う意欲を示唆したとも言えよう。

 だが、内閣支持率は極めて低い水準にある。首相の思惑通りに政局が展開するかは不明だ。

 国民の政治不信を 払拭ふっしょく するにはまず、自民党の派閥による政治資金規正法違反事件の責任問題を処理せねばならない。

 自民党は来週にも、収支報告書への不記載があった安倍派や二階派の議員を処分する方針だ。首相は党総裁として、安倍派の元幹部から事情を聞いた。

 首相が党内処分の調査に加わるのは異例だ。自らの指導力を強調したかったのだろうが、首相が担うべき役割とも思えない。

 首相は政治資金規正法改正の自民党案を早急にまとめて、各党との協議に入るべきだ。

 与野党は近く衆院に特別委員会を設置し、規正法の改正論議を始める予定だ。議員に対する罰則の強化や、議員個人が政党から受け取る「政策活動費」の見直しなどが論点となる。

 政治資金以外にも解決すべき課題は多い。経済安全保障上、重要情報を扱う人を政府が認定するセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度の創設法案など、重要法案の審議が控えている。

 適性評価制度は、経済安保の観点から重要な技術や情報が外国に流出することを防ぐ狙いがある。公務員や企業の社員を対象に、政府が身辺を調査し、問題がない人を認定する仕組みだ。

 野党の一部は、身辺調査によってプライバシーが侵害されかねないとして反対している。だが、身辺調査は本人の同意が前提だ。

 政府は法案の意義を丁寧に説明するとともに、調査に同意しない人がそれを理由に不利益を被らないよう適切な措置を講じたい。

 衆院議員の任期は残り2年を切っており、後半国会は解散含みの展開となるだろう。