「紅麹」健康食品(に関する社説・コラム(2024年3月29日)

小林製薬の「紅麹」サプリは、コレステロールを下げるとうたっている

機能性表示食品(2024年3月29日『山形新聞』-「談話室」)

▼▽たった一つの豆粒で空腹を満たすことができる。たとえ瀕死(ひんし)の状態であっても口に入れるとすぐさま体力は元通り。先日急死した漫画家鳥山明さんの「ドラゴンボール」に出てくる架空の食べ物「仙豆(せんず)」のことである。

▼▽風変わりな“仙人”だけが育てられ栄養価が極めて高い。主人公の孫悟空をはじめとする登場人物たちがこれで何度も窮地を脱した。漫画と知りつつ、不思議な力を秘めたこの粒を欲しがった人は多いことだろう。こちらも豆粒ほどの大きさだが想定外の作用で激震が走る。

▼▽小林製薬の「紅こうじ」入りサプリメントを摂取していた4人の死亡が判明した。悪玉コレステロール値を低下させる効果が見込める「機能性表示食品」の謳(うた)い文句とは裏腹に、腎疾患症状を引き起こす事例が続出。自主回収命令が出されたが流通量が多く、時間を要する。

▼▽名の通った会社の製品という安心感から買い求めた人は多いだろう。健康被害を把握してから公表まで約2カ月かかり、原因も特定できていないという。これでは消費者の不安は増すばかりだ。機能性表示食品制度そのものへの信頼性も揺らぎかねない。同社の責任は重い。


小林製薬のサプリ/被害拡大の防止に力尽くせ(2024年3月29日『福島民友新聞』-「社説」)
 
 小林製薬の「紅こうじ」成分を配合した機能性表示食品のサプリメントを摂取し、腎疾患などの健康被害を訴える人が相次いでいる。100人近くが入院し、サプリ摂取との因果関係が疑われる死亡事例が4件確認されている。

 厚生労働省は「有害物質が含まれている疑いがある」とし、本社のある大阪市に対し、食品衛生法に基づく措置を取るよう通知した。「紅麹(べにこうじ)コレステヘルプ」など3商品に回収命令が出された。

 対象商品が手元にある人は絶対に服用してはいけない。摂取した人で、尿の出が悪い、手足がむくむなど腎機能の悪化が疑われる症状があれば、医療機関を受診し、保健所に相談する必要がある。

 被害の報告が多い紅麹コレステヘルプは2021年2月から今年2月末までに約100万個が販売された。小林製薬はあらゆる手段を講じて使用中止を呼びかけ、回収を急がなければならない。

 国や自治体などには、サプリを摂取した人の相談や、症状がある人と医療機関の仲介支援などに当たる体制の構築が求められる。

 小林製薬健康被害の可能性を把握したのは今年1月中旬で、小林章浩社長が報告を受けたのは2月だった。今月22日の公表までに2カ月余りを要したことについて、会見した小林社長は「報告を受けた時点で何らかの形で回収になるだろうと覚悟した。当該の商品が原因となっているか分からず判断できなかった」と述べた。

 回収になる可能性を認識していながら原因究明に時間を費やして公表が遅れ、被害の拡大を招いた恐れがある。最優先で取り組むべき健康被害の防止を軽視した対応と言わざるを得ない。

 小林製薬によると、紅こうじの一部から検出された「カビ由来の未知の成分」が健康被害につながった可能性がある。成分の調査には1、2カ月ほどかかるとみられる。調査を進め、被害との因果関係を究明することが急務だ。

 小林製薬の紅こうじ原料を使った商品を取り扱う企業は170社以上ある。厚労省はきのう開かれた会議でこれらの企業に対し、過去に医師から健康被害が報告された製品がないかどうかなど自主点検を依頼する案を提示した。対象となる企業名も示された。

 企業名の公表は消費者の不安を軽減し、小林製薬とは無関係の紅こうじ製品への影響を小さくする上で欠かせない。一方で取引先企業への問い合わせが集中するなどして混乱が拡大しないよう、国は点検で得られた正確な情報を迅速に公表することが重要だ。

 

安全性を軽くみていた「紅麹」健康食品(2024年3月29日『日本経済新聞』-「社説」)

 体によいとされる「健康食品」を摂取して、なぜ病気にならなければいけないのか。本末転倒だ。

 小林製薬が製造した「紅麹(こうじ)」を原料とするサプリメントによる健康への被害が広がっている。これ以上、事態が深刻になるのを防ぐとともに、原因の究明に全力を尽くしてもらいたい。

 今月22日、小林製薬は腎臓病などの症状が出たとして、紅麹を成分とする健康食品の自主回収を始めた。これまでに少なくとも100人が入院、4人の死亡例が明らかになった。寄せられた相談件数も3千件超に上る。

 厚生労働省医療機関に対し健康被害が疑われる事例を確認するよう、協力を要請した。今後、被害の報告が増える公算は大きい。健康食品の被害としては異例の事態だ。小林製薬は多数の食品メーカーに原料を供給してきた。全容の把握を急がなければならない。

 小林製薬によると1月以降、複数の医師からの照会で判明し、社内調査を始めたという。これまでの分析で「意図しない成分」が一部に含まれていたが、これが原因かどうかは不明。摂取と発症との因果関係もまだわかっていない。

 国や保健所への報告は最初の症例報告から2カ月以上たっていた。回収や消費者への注意喚起の遅れが被害を広げた可能性もある。安全問題を軽くみていたと言わざるを得ない。

 今回の紅麹サプリは「機能性表示食品」と呼ぶ健康食品だ。コレステロールを下げる作用を持つ成分が入っており、医薬品と誤解を招きかねないほど、機能(効能)をうたってきた。

 健康な人が毎日、摂取するのだから、有効性への期待が大きいのなら、安全面へも十分に配慮する必要がある。商品化にあたって安全確認は万全だったか、製造工程や品質の管理に抜かりがなかったか、徹底的に検証すべきだ。

 根拠に基づいた健康への効果をアピールできる機能性表示食品は2015年に規制改革の一環で誕生した。有効性と安全性について国の審査はなく、企業が消費者庁に届け出をすればよい。健康産業の市場拡大をめざしてきただけに、制度の信頼性を揺るがす事態となったのは残念だ。

 消費者庁は約7千あるすべての機能性表示食品を対象に健康被害の報告がないか点検する。速やかに結果を公表し、消費者の不安解消につなげてもらいたい。

紅こうじサプリ 食の安全損なう深刻さ(2024年3月29日『東京新聞』-「社説」)

 小林製薬大阪市)が製造販売したサプリメントを摂取した4人が死亡、約100人が入院するなど健康被害が拡大している。サプリなど健康食品だけでなく国産食品全体の信頼をも損ないかねない深刻な事態。国の主導で原因解明と再発防止に乗り出すべきだ。
 健康被害が出ているのは小林製薬の「紅こうじ」成分入り機能性表示食品のサプリ。同社は1月15日に医師の連絡で腎疾患の症例を認識したが、所管する厚生労働省が事態を把握したのは2カ月以上が過ぎた3月22日だった。
 健康食品に限らず医薬品や食品を摂取した人に健康被害が出た場合、メーカーは直ちに公表した上で製造販売を中止し、関係省庁に報告するのが常識のはずだ。対応が後手に回った小林製薬の経営姿勢は、消費者の安全を軽視していると指摘せざるを得ない。
 健康被害が広がっている。小林製薬は自主的に調査を進めるが、結果を待つことなく、厚労省消費者庁など関連省庁は、食品安全法に基づいて立ち入り検査や関係者の事情聴取を行い、サプリと健康被害との因果関係の究明を早急に進めなければならない。
 健康被害を出した機能性表示食品は、国が効果や安全性を審査する特定保健用食品(トクホ)と異なり、安全性や機能を事業者が自主的に届け出る食品である。
 2013年6月、当時の安倍晋三首相がアベノミクスの柱の一つ、規制緩和による成長戦略として「健康食品の機能性表示を解禁する」方針を示したことを受け、15年4月に制度が導入された。
 調査会社の富士経済によると機能性表示食品の市場規模は年々増大し、24年には7千億円を超えると予測する。
 過度な規制で経済活動を阻害してはならないが、命に関わるような事例が起きかねない規制緩和を見過ごしては本末転倒だ。
 国は現在届け出のある約6800の機能性表示食品すべてを一斉点検する方針だが、それにとどまってはなるまい。安倍政権下で食に関しても行われた成長戦略としての規制緩和が妥当だったのか、根本から問い直すべきである。

 

紅こうじの被害/原因究明急ぎ拡大防止を(2024年3月29日『神戸新聞』-「社説」)

 小林製薬大阪市)の「紅こうじ」を使ったサプリメントによる健康被害が深刻化している。腎疾患などで4人が死亡し、神戸市の女性を含む100人以上が入院した。大阪市は自主回収の対象である3製品の回収命令を出したが、海外を含め被害が拡大する恐れがある。企業と国、自治体は原因究明を急ぎ、消費者の不安を払拭せねばならない。

 健康被害は昨年9月以降に製造されたサプリ「紅麹(こうじ)コレステヘルプ」に集中している。納入先は170社以上に及ぶが、最終的な流通先は把握できていない。原料供給先の食品会社なども製品の自主回収に追われ、事態を広げた責任は重い。

 サプリには未知の有害物質が含まれていたとみられる。同社によると、製造過程で別のカビなどが混入した▽紅こうじ菌の発酵過程で有害物質が発生した-のいずれかが考えられるという。


 過去には紅こうじから生じたカビ毒「シトリニン」による健康被害が欧州で確認されたが、今回の紅こうじの遺伝子はシトリニンを発生させにくい構造だったとされる。いまだに原因物質すら特定できないことを重く受け止めるべきだ。

 被害への対応にも問題がある。小林製薬は1月15日に医師から被害情報の連絡を受けながら、3月22日まで明らかにしなかった。死者の1人は2月まで摂取していたという。公表の遅れが被害の拡大を招いた可能性は否めない。同社の小林章浩社長はきのうの定時株主総会で対応の遅れを認め、謝罪した。

 問題のサプリは2015年に始まった機能性表示食品制度に基づき悪玉コレステロールの値を下げる効能をうたっていた。制度への信頼を大きく揺るがしかねない事態だ。

 サプリなどは成分を濃縮し商品化されるため、わずかでも有害物質が含まれていれば危険性が高まる。だが、機能性表示食品は安全性や効果の根拠となる論文データなどを国に届け出れば販売でき、実質的な審査などの手続きは要らない。臨床試験や国による審査が必要となる特定保健用食品(トクホ)と異なり、企業の責任に委ねられる部分が大きい。

 政府は、届け出済みの機能性表示食品全約6800件について緊急点検する方針を示した。企業任せにせず、原因究明と安全確保に国も責任を持って当たるべきである。

 過剰な不安の拡大や風評被害を防ぐ取り組みも求められる。

 紅こうじは古来、東アジアを中心に広く使われ、独自の発酵文化を育んできた。沖縄県の郷土料理「豆腐よう」などにも用いられている。通常の食品として摂取する分には心配がないことも周知したい。

 

「紅麹」で健康被害 原因究明急ぎ拡大を防げ(2024年3月29日『山陽新聞』-「社説」)

 「紅麹(べにこうじ)コレステヘルプ」など紅こうじ原料を使った小林製薬サプリメントを摂取した人に腎臓の病気が相次いでいる。因果関係が疑われる死者が既に複数出ており、100人以上が入院した。

 健康食品の安全性に関わる極めて深刻な事態である。同社は、手元にあっても使用しないよう呼びかけている。まずは被害の全容把握に努め、拡大を食い止めるよう全力を挙げなければならない。

 問題のサプリは血中の悪玉コレステロールを抑えるとうたう「機能性表示食品」だ。1月以降、医師らから健康被害の報告が寄せられ、社内で調査を始めた。原因は現時点で判明していない。

 紅こうじは食品の着色や風味付けに広く普及しているが、紅こうじ菌の中には有毒物質「シトリニン」をつくるものもある。ただ、小林製薬の分析でシトリニンは出ず「カビ由来の未知の成分」が検出された。成分の特定には1~2カ月かかるという。

 健やかな暮らしを支えるはずの健康食品に、製造者さえ想定していなかった成分が含まれていたことで、消費者の不安は増す一方だ。どんな毒性があり、健康被害とどうつながっているのか。どこで混入したのか。早急に究明する必要がある。

 命に関わる問題だけに、対応の遅れも看過できない。同社は被害の疑いが生じた時点から発表まで2カ月余りを要し、行政へも相談しなかった。亡くなった1人は2月までサプリを摂取していたとみられ、この間に悪化した可能性も指摘される。

 厚生労働省小林製薬側に聞き取りを実施、全国の自治体に被害情報の収集を指示している。本社がある大阪市食品衛生法に基づき、対象商品の廃棄に向け早期回収を命じる行政処分を出した。

 今回の問題は、2015年の機能性表示食品の制度開始後、メーカーが健康被害を公表して自主回収する最初のケースとなる。制度は規制改革の一環で導入され「目の調子を整える」「記憶をサポートする」といった体への効能を国の審査なしに表示・宣伝できる仕組みだ。

 制度の信頼性そのものに疑念を抱かせる事態だとして、消費者庁は、他の食品で健康被害がないか届け出のある約6800件全てを緊急点検する。各企業が責任を持つべき安全確保や情報提供がおろそかになるような状況があるのなら、厳格化を含め制度の見直しが求められよう。

 品質問題は他社製品にも及ぶ。小林製薬製の紅こうじ原料は他の食品メーカーなどにも供給され、菓子や酒に使われていた。岡山県内のみそ製造業者のほか国内外で商品回収の動きが広がっている。

 健康被害に加えて風評被害が起きる懸念も拭えない。混乱を収めるため、企業だけでなく、国や自治体も細やかな情報提供など積極的に手だてを講じてもらいたい。

 

麹菌の力(2024年3月29日『高知新聞』-「小社会」)

 県内でも盛んな日本酒造りは昔から「一麹(こうじ)、二酛(もと)、三造り」といわれる。工程の重要度を表していて、肝はなんといっても麹という。
 
 ここでいう麹は蒸した米にカビの一種、麹菌を繁殖させたもの。酒の原料である米のでんぷんを糖に変える作用があり、酛をなす酵母がその糖からアルコールを生み出す。世界を見ても特殊で高度な発酵技術だと、国税庁が動画を制作して世界に発信している。
 
 興味深いのは、まだ科学的な知識がなかった大昔の祖先が麹菌の作用を「人の力の及ばない神の力」と考えた点。日本で「酒と神事が深いつながりを持つ理由の一つ」だと動画は紹介する。
 
 麹菌はみそやしょうゆの製造などにも使われる。麹菌もいろいろな種類があり、人体に有害なカビ毒を作るものも少なくないが、祖先が伝統的に使ってきた麹菌はその機能を失ったタイプだったとか。これもある意味、神秘的な話といえるのかもしれない。
 
 いまは科学も進んだのに、どうしたのだろうか。麹菌の一つ、紅麹菌を巡る騒動。小林製薬の紅麹サプリメントを摂取して健康被害を訴える人が続出している。死亡例もあるという。未知の毒なのか、あるいは製造過程で異物が混入したのか。理由ははっきりしないらしい。
 
 影響は他の食品会社にも広がっている。原因を「神のみぞ知る」にされてはたまらない。一刻も早い究明を。祖先が見いだしてきた麹菌の名誉のためにも。

 

紅こうじサプリ 被害拡大の防止が急務だ(2024年3月29日『熊本日日新聞』-「社説」)

 小林製薬大阪市)の「紅こうじ」のサプリメントを摂取した人の健康被害が拡大している。腎疾患などで複数の人が亡くなり、入院した人は90人を超えた。健康被害を引き起こした仕組みや、患者の症状との関連などは、まだ不明だが、さらなる被害を防ぐのが最優先だ。大阪市厚生労働省の通知を受け、同社3商品の回収命令を出した。店頭からの回収を急がなければならない。

 天然素材の着色料として使われる紅こうじは、蒸した米に紅こうじ菌を混ぜて発酵させて作るものだ。小林製薬は、想定と異なるカビ由来の成分が原因となった可能性があるとしているが、成分の特定はできていない。

 紅こうじは小林製薬以外にも製造企業が多い。原因が究明できなければ、消費者の不安は募るばかりだ。食品業界への影響も計り知れない。調査に全力を挙げ、サプリと健康被害の因果関係を明らかにしなければなるまい。

 最悪の事態を招いた小林製薬の責任は重い。1月中旬には医師からの問い合わせで健康被害の可能性を知っていたという。しかし、使用停止の呼びかけまで2カ月以上を要した。原因が判明しなかったため「公表すべきかどうか判断できなかった」としているが、もっと早く製品を回収し、使用停止を呼びかけるべきだった。利用者の健康を守ることを後回しにしたと言われても仕方あるまい。

 風評被害も心配だ。厚労省によると、小林製薬の紅こうじを使った商品を扱う企業は170社以上。熊本県内企業を含む各社は自主回収など対応に追われている。小林製薬以外の紅こうじやほかのこうじを使っている企業にも問い合わせが相次いでいるという。

 こうじ自体は古くからさまざまな用途で日本の食文化を支えてきた。冷静に向きあいたい。政府や自治体は、正しい情報を消費者に伝えたり、不安に耳を傾けたりする態勢づくりを急いでほしい。

 今回の健康被害とメーカーによる自主回収は、機能性表示食品として初めてのケースだ。体への効能を表示できる健康食品としては以前から「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」があり、2015年に機能性表示食品が加わった。トクホには国の許可が必要。栄養機能食品にはビタミンなどの含有量に規格基準がある。

 一方、機能性表示食品は、効能を裏付ける学術論文などを消費者庁が受理すれば「脂肪の吸収をおだやかにする」などの機能性を表示し販売できる。健康志向の高まりを受け、安全に関わる規制を緩和して生まれた形だが、政府の判断が妥当だったか改めて検証する必要がある。

 届け出済みの機能性表示食品は6千件超。消費者庁は全ての製品の緊急点検を実施する方針だが、それだけで安心を取り戻せるわけではあるまい。効能だけでなく、リスクに関する情報も消費者に知らせる必要があるだろう。安全性の視点から現行制度を見直し、改善策を探ってほしい。

 

あったらいいな(2024年3月29日『熊本日日新聞』-「新生面」)

 「あったらいいな」を企業スローガンにしているだけあって、アイデア豊富な会社らしい。歴代発売されてきた健康関連商品や衛生雑貨などを見ると、おなじみの銘柄がずらりと並んでいる。紅こうじサプリメントによる健康被害が広がっている小林製薬である

▼「アンメルツ ヨコヨコ」「熱さまシート」「ブルーレット おくだけ」。商都・大阪に本社を置く会社らしく、ネーミングもうまい。問題の紅こうじを含むサプリの一つは、悪玉コレステロールを減らすという「コレステヘルプ」

▼飲用していた複数の人が腎疾患などで亡くなり、入院患者数も90人を超えているから深刻だ。被害申し出はさらに増えるだろう。会社が医師からの連絡で問題を知ってから、公表するまで2カ月以上かかった。一刻も早く発表して使用を中止してもらうべきだったのに、そんな発想はなかったらしい

▼紅こうじに何があったのか、原因物質の特定はこれからだ。素材として紅こうじを使っていた他のメーカーにも影響し、酒やみそなどの販売中止が広がっている。小林製薬の社長はきょう大阪で記者会見するというが、何と説明するだろう

▼食品被害といえば、昭和の時代に赤ちゃん用粉ミルクにヒ素が混入した森永ヒ素ミルク中毒事件があった。食用油ダイオキシン類が混入したカネミ油症事件でも癒えぬ症状に今でも苦しむ人たちがいる

▼轍[てつ]を踏んではならない。「コレステヘルプ」と人々を助けることをうたいながら名に背くようでは商いの資格はない。