プロ野球開幕 伝統を胸に刻み熱いプレーを(2024年3月29日『読売新聞』-「社説」)

 プロ野球のセ・パ両リーグが29日開幕する。今年は日本のプロ野球誕生から90年の節目の年となる。選手らは長い歴史を胸に、はつらつとしたプレーで新時代を築いてほしい。

 日本のプロ野球の歴史は、1934年に遡る。ベーブ・ルースら米大リーグ選抜チームが来日し、各地で試合をした。その時に対戦した全日本チームのメンバーを中心に、巨人の前身である大日本東京野球倶楽部が創設された。

 翌年には阪神の前身にあたる大阪野球倶楽部も発足した。その後、戦争などの苦しい時期を乗り越えて、大きく発展してきた。

 今季、セ・リーグでは開幕戦から巨人と阪神伝統の一戦が行われる。昨季、2位以下に大差をつけてリーグ優勝を果たした阪神を相手に、球団創設90周年を迎える巨人がどう戦うか、楽しみだ。

 二軍監督や一軍コーチを経験し、戦力を熟知している阿部慎之助新監督の采配がカギを握るだろう。昨季の本塁打王、岡本和真選手らが個人記録をどこまで伸ばすかも気になるところだ。

 パ・リーグも、昨季独走したオリックスに待ったをかける球団が出てくるかどうかが焦点になる。新戦力加入で攻撃力に厚みを増した小久保裕紀新監督率いるソフトバンクの前評判が高い。両者も開幕戦で相まみえることになる。

 新人選手では、オープン戦で活躍したDeNAの度会隆輝選手、巨人の佐々木俊輔選手らに期待したい。若手の台頭は、球界全体の活性化につながる。

 すでに開幕したファーム・リーグ(二軍戦)には、今季から新設の「くふうハヤテベンチャーズ静岡」と、独立リーグで戦ってきた「オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」の2球団が参加している。

 二軍戦には将来有望な選手が多数出場している。地域の子供らに高い技術やスピード感あふれるプレーを披露し、ファンの裾野を広げてもらいたい。

 秋には国際大会「プレミア12」の開催も予定されている。昨春は、国・地域別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック」で日本代表「侍ジャパン」が優勝を果たし、日本列島が沸いた。海外勢との戦いに、再び期待が高まる。

 2023年のセ・パ公式戦の入場者数は計2507万人に上った。実数発表となって以降、最多だった19年の2654万人に迫り、コロナ禍前に戻りつつある。熱い戦いを繰り広げ、さらに多くの心をつかんでもらいたい。