青木の法則(2024年3月28日『山陽新聞』-「滴一滴」)

 やっと春らしい陽気になり、各地から桜の便りが相次いでいる。通勤電車から見える川沿いの並木も色を帯びてきた。寒暖めまぐるしい今年の桜は、季節の変わり目を手探りしていたようだ

気象予報士らが開花日を予想する基準の一つに「600度の法則」というのがあるそうだ。2月1日からの最高気温の積算が600度を超えると咲きごろという。岡山市では今月18日に達したが、開花は大幅に遅れている

▼風情ある桜とは比べようもないが、いま永田町で取り沙汰されているのが「青木の法則」だ。内閣支持率と党支持率の合計が50%を割り込むと政権は行き詰まる―。政局にたけ、自民党参院幹事長などを務めた故・青木幹雄氏が唱えた

共同通信の3月の世論調査で、岸田政権の両支持率の合計は44・6%だった。青木基準を割り込んだのは昨年12月に続いて2度目、政権発足以来最低の水準である

▼派閥パーティーの裏金問題では、9割以上が政治倫理審査会での派閥幹部の説明に納得していない。露出の多いダンサーを招いた党の不適切会合もあり、リーダーたる首相に厳しい目が向けられている

▼首相にとって当面の関門は4月28日に投票される衆院3選挙区の補欠選だ。全敗なら党内の「岸田降ろし」につながりかねない。とても花見気分どころではなさそうな政界の春である。