太陽光パネル 「大量廃棄時代」にどう備える(2024年3月28日『読売新聞』-「社説」)

 全国各地に相次いで設置された太陽光発電パネルが2030年代以降、耐用年数を超えていく。政府は今から、パネルの「大量廃棄時代」への備えに万全を期すべきだ。

 政府は、太陽光など再生可能エネルギーによる電気を、固定価格で電力会社が買い取る制度を2012年に始めた。

 再生エネの普及を優先し、当初は高い価格で買い取ることにしたため、導入が容易な太陽光発電への参入が急増した。現在、政府が認定した事業用のパネルの設置件数は、全国で約73万件に上る。

 一方、パネルの耐用年数は20~30年程度とされ、多くのパネルは30年以降に寿命を迎えることになる。20年には年間3000トン程度だった廃棄量が、30年代以降には最大で28万トンに増えるという。

 大量廃棄を見据え、今から太陽光発電事業者に対し、適切な処理対策を進めるよう徹底せねばならない。現状でも、大雪や台風などで破損したパネルが、撤去されずに放置されたり、不法に投棄されたりする事例が発生している。

 政府は22年度に、太陽光の発電事業者から、事業規模などに応じて毎月の売電収入の4~7%程度の積立金を徴収し、廃棄の際に払い戻す制度を始めた。

 ただ、廃棄費用が割高になる山間部などでは、積立金だけでは足りないケースが出てくると指摘されている。確実に廃棄が行われるよう、政府は積立金制度の有効性を再点検してもらいたい。

 現状では、使用済みパネルの多くは地中に埋め立て処分されているが、パネルには再利用できる銀や銅、ガラスなどが含まれる。こうした部材を回収し、再資源化する取り組みの強化が不可欠だ。

 発電できなくなったパネルを不法投棄したり、放置したりすることを防ぐ効果が期待できる。

 再利用を広げるには、金属や素材を低コストで回収する技術を磨く必要がある。国と企業は連携を強め、リサイクル技術の研究開発を加速させるべきだ。

 効率的にリサイクルを進めるには、全国規模で実施できる企業の参入が望まれる。現在は、リサイクルを行う際、自治体ごとに許可を得ねばならないが、政府は、国が一括で認め、全国展開をしやすくする法改正を行うという。

 意欲ある業者による事業エリアの拡大や、異業種からの大手企業の参入などを促したい。

 適切な廃棄とリサイクルの普及を、太陽光発電設備の着実な更新につなげることが重要だ。