集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の施行から29日で8年。政府は平和主義の堅持を掲げながらも、憲法9条に基づく専守防衛からの逸脱を続ける。憲法解釈の恣意(しい)的な変更を起点とする安保法が日本を再び「戦争ができる国」「軍事大国」に導く。
日本が英国・イタリアと共同開発を進めている次期戦闘機=イメージ、英BAEシステムズHPの動画から。政府は殺傷能力のある武器輸出を禁じる原則を転換し、26日の閣議決定で戦闘機の第三国への輸出容認に踏み切った。
日本製戦闘機が外国の戦争に使用され、人を殺傷しても、日本は国際社会に対し「わが国は平和国家だ」と胸を張れるだろうか。
武器禁輸の方針を転換
戦後日本は国内外に多大な犠牲を強いた戦争への反省から、憲法9条で戦争放棄と戦力不保持を誓った。その後、日米安全保障条約で米軍の日本駐留を認め、自衛隊を保有するに至ったが、他国に軍事的脅威を与えない「平和国家」の道を変わらず歩んできた。
攻撃を受けたときに初めて防衛力を用いる専守防衛、他国領域を直接攻撃する敵基地攻撃能力の不保持、国際紛争を助長しないため武器を輸出しない武器禁輸原則、防衛費をおおむね国内総生産(GDP)比1%程度に抑える節度ある防衛力整備などである。
これら平和国家の礎を成す防衛政策は安倍晋三政権が2015年9月19日に成立を強行し、翌16年3月29日に施行した安保法以降、次々と転換された。
もはや、かつて国際社会から高い評価と尊敬を勝ち得たとする平和国家の姿はそこにはない。
自国が直接攻撃されていないにもかかわらず自国と密接な関係にある外国への攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使を巡り、歴代内閣は「憲法9条のもとで許される実力の行使を超え、許されない」との解釈を堅持してきた。
この判決から集団的自衛権の行使容認を導き出すのは、自分に都合よく無理に理屈をこじつける牽強(けんきょう)付会が過ぎる。
不戦の誓い死文化進む
岸田文雄内閣は、安倍政権が13年に制定した国家安全保障戦略をさらに改定。歴代内閣が「憲法の趣旨ではない」としてきた「敵基地攻撃能力の保有」を容認し、他国領域を直接攻撃できる長距離巡航ミサイルの整備を進める。
防衛費も関連予算を含めてGDP比2%に倍増させる方針へと大きくかじを切った。そして今回の戦闘機の輸出解禁である。