脱炭素に向け、日本が再生可能エネルギーの拡大を図るには、風力発電の活用が不可欠だ。海に囲まれた日本の特性を生かし、洋上風力発電に必要な技術基盤を確立したい。
政府は、洋上風力発電施設の設置を認める海域について、現行の日本の領海内から、排他的経済水域(EEZ)内にも広げるための「再生可能エネルギー海域利用法」の改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指している。
政府は、2040年までに洋上風力発電の容量を最大で、原子力発電所45基分程度に相当する4500万キロ・ワットまで増やす目標を掲げているが、現状は500万キロ・ワット程度にとどまっている。
日本国内での全発電量の中で、再生エネの比率は22年度で約22%だった。そのうち太陽光発電が約9%を占める。風力発電は1%に満たず、拡大の余地が大きい。
これまで、風力発電施設のほとんどは陸上に作られている。ただ、日本は平地が少なく適地が限られる。騒音への苦情も出ている。
一方、洋上は陸上より強い風が一定して吹くほか、騒音を気にせず大容量の施設を建てやすい。洋上風力の普及が再生エネ拡大のカギを握っていると言える。
洋上風力には、風車の支柱を海底に固定する着床式と、風車を海面に浮かべる浮体式がある。
現在、国内20か所以上の領海内で進められている計画は、大半が着床式で、場所は遠浅の沿岸地域だ。だが、日本周辺には、遠浅の海が少ないという弱点がある。
法改正により、洋上風力の設置を認める海域を、領海の約10倍の面積があるEEZまで広げれば、洋上風力の普及を加速させる効果が期待できよう。
浮体式は、50メートル以上の水深があっても設置できるため、EEZでも稼働することが可能だ。
ただ、浮体式は、台風などの荒波に見舞われても、流されないようにする必要がある。着床式と比べると費用がかかり、現状では、低コストで多くの設備を作る技術は確立していない。
このため、国内の大手電力会社や商社など14社が集まり、浮体式の量産技術の開発に共同で取り組む新組織を設立した。政府は、30年頃の商用化を目標に、開発費用の支援などを行う方針だ。
浮体式の量産技術を世界に先駆けて獲得することができれば、日本と同じように遠浅の海が少ないアジア諸国などの脱炭素にも貢献できるだろう。官民が連携して、技術開発を急いでほしい。