「再構築協」初会合 鉄路を生かす策、追求を(2024年3月27日『中国新聞』-「社説」)

 利用が低迷するJR芸備線備後庄原庄原市)―備中神代新見市)間の存廃を話し合う再構築協議会がきのう広島市で始まった。国が行司役となり、JRと関係自治体が赤字ローカル線の将来像を協議する初の試みである。存続させるか、バスなどへ転換するか、原則3年以内に結論を出すという。

 住民生活に欠かせないと存続を求める広島、岡山両県、庄原、新見両市と、不採算路線の廃止を図りたいJR西日本では当然立場は違う。初会合でも浮き彫りになった。

 それでも同じ舞台に上がった以上、どうすれば鉄路を生かせるか、過疎に直面する沿線の地域づくりや観光振興の観点など、さまざまな角度から追求してもらいたい。

 中国山地を縫うように走る同区間は、芸備線の全長の4割超を占める。再構築協の設置を要請したJR西は人口減少や道路整備の進展を利用低迷の理由に挙げ、「大量輸送という鉄道の特性を発揮できていない」と主張。バスやタクシーも含めた公共交通全体を見直す必要性を唱えた。

 民間鉄道事業者が経営面から廃止を考えるのは一定に理解できる。だが利用者が減るたび減便を繰り返し、ダイヤをさらに不便にしていった従来の対応は、沿線住民に誠実といえるだろうか。初会合でも、JR西からは需要の掘り起こしに向けた考えは示されなかった。そんな姿勢で、自治体側と共通認識に立てるのだろうか。

 公共交通の役割は採算性だけでは論じられない。都市部で稼ぎ、地方の赤字を埋めてサービスを維持する「内部補助」は公益事業の基本だ。広島県が「なぜ維持できないのか」と説明を迫ったのも当然だろう。新型コロナウイルス禍で悪化したと強調していた収支は改善傾向にある。

 鉄道ネットワークの観点からも議論を深めたい。議長を務める中国運輸局長は再構築協で取り上げるのに否定的な見解を示したが、地域から鉄道網の価値を考える視点は必要ではないか。同区間では備後落合で木次線と、備中神代の二つ東の新見で伯備、姫新両線とそれぞれつながる。インバウンド(訪日客)もにらんだ観光の需要掘り起こしには、ネットワークであることが不可欠だ。

 自治体側からはこのほか、住民の移動実態の詳細調査や駅周辺の魅力づくり、駅から先の2次交通の充実などの提案があった。従来の枠組みなどに縛られることなく議論し、調査や実証実験へと段階を進めたい。鉄路を生かす地域づくりに取り組む場合、国は中立的な立場を強調するだけでなく、財政面を含めた後押しをしっかりとすべきだ。

 全国第1号の再構築協は赤字路線存廃のモデルケースとして全国から注目される。沿線の未来を描く策を導き出せるか。ことは同区間だけの問題ではない。だからこそ鉄路の可能性を探る、開かれた議論を積み重ねたい。