小林製薬「紅麹」 腎疾患で1人死亡 入院確認や連絡は70人余に(2024年3月26日『NHKニュース』)

小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを相次いで発症した問題で、ことし、1人が腎疾患で亡くなっていたことを会社が明らかにしました。

これまでに入院が確認された人や入院の連絡があった人は70人余りに広がっていて、会社は、対象となる製品の使用を中止するよう呼びかけるとともに成分の分析を進めています。

全国では紅麹原料を使った商品を自主回収する動きが相次いでいて、記事ではNHKが調べた自主回収を行っている商品の一覧を掲載しています。

「紅麹コレステヘルプ」 3年間継続購入の1人亡くなる 

小林製薬は、「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことから、この成分を含む3種類の機能性表示食品の自主回収を進めています。

会社によりますと、機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を2021年4月から先月までおよそ3年間継続して購入していた1人が亡くなっていたことが、遺族からの連絡でわかったということです。

会社は25日、想定していない成分が含まれている可能性がある製品の製造番号、18種類を明らかにしていて、亡くなった人は、このうち製造番号、「X304」と「H306」それに「E301」を購入していたということです。

今月22日に今回の問題を発表した直後から3600件を超えるメールが寄せられ、遺族からは今月23日の夜にメールで連絡があったものの、週明けの25日まで確認が遅れたということです。

会社は製品と死亡との因果関係が疑われるとしていて、26日夜、遺族に会い、詳しいいきさつを確認することにしています。

入院確認26人 約50人から“入院した”連絡も

これとは別にこれまでに体調不良を訴えて入院したことが確認されたのは26人にのぼるほか、およそ50人から入院したという連絡があったということです。

会社は健康被害の実態把握を進め、対象となる製品の使用を中止するよう呼びかけるとともに製品から検出された想定していなかった成分について複数の大学の研究室と分析を進めています。

この問題をめぐっては、会社が自主回収を進めている健康食品に使用しているものと同じ紅麹原料が、子会社を通じて取引先に販売され、食品などに使われたことが分かっていて、食品メーカーなどが自主回収する動きが相次いでいます。

亡くなった人の購入品の製造番号を公表

小林製薬によりますと、今回亡くなった人が継続して購入していたのは、会社が自主回収を進めている機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」です。

会社は、25日、想定していない成分が含まれている可能性がある製品の製造番号、18種類を明らかにしていて、亡くなった人は、このうち製造番号「X304」と「H306」、そして「E301」を購入していたということです。

製造番号は、製品パッケージの裏面の左下に記載されていて、小林製薬は製造番号にかかわらずこの製品を回収するとしています。

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「紅麹」商品の自主回収相次ぐ 品目は

全国では紅麹原料を使った商品を自主回収する動きが相次いでいます。

【サプリ系】

小林製薬は、会社で製造した「紅麹コレステヘルプ」、「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」、「ナイシヘルプ+コレステロール」の3つの健康食品を自主回収すると発表しました。

●神戸市に本社を置く化粧品メーカー「ノエビア」は、「ノエビア DHAEPA」の販売を中止し、自主回収すると発表しました。対象の製品は、8年前から小林製薬から仕入れた紅麹原料を使って委託先の静岡県のメーカーが製造していて、主に代理店を通じての対面の販売のほか、会社の公式サイトでも販売していたということです。

●愛知県小牧市の製薬会社「山本漢方製薬」はサプリメントの「内脂ブロッカー」という商品の製造を中止し、自主回収すると発表しました。会社は商品の購入者に対し、小牧市の本社まで商品を着払いで送るよう呼びかけています。

富山市の製薬会社「富山薬品」は、健康食品の「レッダームDX」と「ルーレンゴールド」の2つの商品について、販売先の全国の薬局に販売中止と自主回収の連絡を順次進めているということです。

福井県敦賀市にある食品メーカー「伝食」は、「祖の食庵納豆キナーゼ」を自主回収すると発表しました。

熊本県甲佐町の健康食品メーカー、「森川健康堂」は、「KIDSプロポリス」という商品の販売を中止し、自主回収すると発表しました。会社によりますと、この商品は、4年前から製造が開始され、あわせて3000袋ほどが販売されたということです。会社は、25日から対象の商品の販売を中止し、購入した商品の返送をホームページで呼びかけています。

香川県宇多津町の製薬会社、「芳香園製薬」は、「ノンコレッセン プレミアム」と、「エラスチンプラス&ナットウキナーゼ」の2種類の健康食品を自主回収すると発表しました。25日から販売を中止し、購入した人に対して、ホームページを通じて薬局での返品を呼びかけるなど、自主回収を進めています。

【食品・調味料系】

●東京に本社のある「紀文食品」は、「国産いか使用いか塩辛」など2つの商品を自主回収すると発表しました。「紀文食品」のホームページによりますと、会社が指定する送り先に商品を着払いで送れば、後日、購入代金を返還するとしています。

●大阪に本社がある「大塚食品」は、「あわ 紅豆腐」を自主回収すると発表しました。対象となるのは、賞味期限が再来年7月までのものです。

●栃木県日光市にあるパン製造・販売会社「金谷ホテルベーカリー」は、「いちごブレッド」「いちごロール」「春のあんぱん」の3つの商品を自主回収すると発表しました。会社では、対象の商品を購入した人に対し、日光市土沢にある本社まで商品を着払いで送るようホームページなどで呼びかけていて、後日、返金するとしています。

名古屋市の豆菓子専門店「豆福」は「豆だくさん」や「えびしおアーモンド」など13の商品の自主回収を決めました。当面は対象の商品の販売を休止するということです。

滋賀県東近江市にあるパンの製造販売店「パンのカワバタ」は、「いのちのパン」の販売を停止し、自主回収しています。

●福岡市博多区に本社のある商品の通信販売会社「ZEROPLUS」は、「悪玉コレステロールを下げるのに役立つ濃厚チーズせんべい」の自主回収を発表しました。すでに購入した人には食べずに返品するよう呼びかけています。

紀文食品 「国産いか使用いか塩辛」

 

岡山県の「キミセ醤油」は、「五穀紅麹みそ」と「五穀炊き込み紅麹ごはん」の2種類の商品を、自主回収すると発表しました。使用された紅麹原料は、腎臓の病気などを発症したことが報告されたものとは、品番が異なるということですが、同じ工場で製造されているため、安全を期して回収することにしたとしています。
回収の対象は、
▽みそはことし1月1日以降に購入されたもの、
▽炊き込みごはんは賞味期限がことし6月1日以降のものとしています。
会社では、商品が手元にある場合、着払いで送るよう呼びかけています。

●東京・銀座のデパート「松屋銀座」は、テナントとして入っている味噌専門店「味噌蔵※徳兵衞」が販売した「秘伝熟成紅※糀みそ」の販売を中止するとともに自主回収を始めました。
※「徳」は心の上に一、「衞」は異字体製品名は「糀」※

●長野県に本社のあるみそメーカー、「竹屋」は、「タケヤみそ『塩ひかえめ紅麹仕立て』」の販売を一時中止するとともに自主回収すると発表しました。
この商品の販売は▽長野県諏訪市の直売所と、自社のホームページのオンラインショップのみで行っていたということで、スーパーなどに流通している商品はないとしています。

●長野県茅野市の「山高味噌」は、「ヤマタカ信州甘口紅麹みそ」の販売を休止し、回収を進めています。

京都市に本社があるみそ製造販売の「本田味噌本店」、みそ製造卸の「西京味噌」、食品製造販売の「京都一の傳」「京都やま六」のあわせて4社は、みそやしょうゆ、みそ漬けなどの商品の自主回収を始めました。取引先に卸していたほか、店頭や各地のデパートで販売したり通信販売で取り扱ったりしていたということです。4社が使った紅麹原料は、小林製薬が回収を進めているものとは異なる種類ですが、予防的措置として自主回収を決めたとしています。

岡山県備前市にあるみその製造販売会社「馬場商店」は「紅糀みそ」や「紅麹あまざけ」など11の商品を自主回収すると発表しました。

大分県別府市にある「フジヨシ醤油」は、「カトレアさんの元気みそ」と「みそカボスドレッシング」の2つの商品の販売を中止し自主回収すると発表しました。問題となっている健康食品に使われていたものとは別のものだったことがわかったということです。会社は安全性に万全を期すとして紅麹原料を原材料から外したうえで販売の再開を検討しているということです。

●鹿児島県霧島市の「福山黒酢」は、「桷志田」ブランドとして販売している「紅麹黒酢」と「紅麹ドレッシング」、それに「紅麹ドレッシング」の販売を中止し、自主回収すると発表しました。

新潟県長岡市にある清酒の卸販売などを行う「原商」は「新潟紅麹甘酒720ml」の自主回収を始めています。

竹屋 「タケヤみそ『塩ひかえめ紅麹仕立て』」

【酒系】

京都市に本社のある大手酒造メーカー「宝酒造」は日本酒の「松竹梅白壁蔵「澪」PREMIUM〈ROSE〉」、およそ10万本を自主回収すると発表しました。

●愛知県蟹江町の酒造会社「甘強酒造」は、小林製薬が回収を発表した紅麹原料を使用している可能性があるとして、「紅麹梅酒」の販売を一時的に中止するとともに自主回収することを決めました。

●長野県伊那市の酒造会社「仙醸」は、県内外のスーパーで販売していた「黒松仙醸どぶろくロゼ」の販売を休止するとともに自主回収にあたっています。

宝酒造 「松竹梅白壁蔵「澪」PREMIUM〈ROSE〉」

【その他】

●東京・町田市の食品販売会社「富澤商店」は、商品の「紅麹パウダー10グラム」の自主回収を行うと発表しました。会社のホームページによりますと、この商品に小林製薬が製造した紅麹を使用していると取引先から報告があったということです。会社は購入者に対し、商品の使用を控えるとともに指定した送付先に料金着払いで送るよう呼びかけています。

山形県米沢市のみそやこうじの製造販売会社、「おたまや」は、「紅麹01」「紅麹03」「紅麹04」「紅麹08」「紅麹09」「紅麹11」の6種類の商品の販売を中止し、自主回収すると発表しました。会社によりますと、把握している範囲で去年12月中旬以降、少なくとも1400個余りが米沢市の店頭やインターネットで販売されたということです。

富澤商店 「紅麹パウダー10グラム」

【広がりは】

小林製薬によりますと、今回、該当する健康食品に使っている紅麹原料の供給先は52社に上りこのうちの複数の卸売業者を通じてさらに別の企業に販売されているということです。

このため回収の規模がさらに広がるとみて販売先や回収状況について確認を急いでいます。

厚労省 自主回収対象の14製品を公表 

厚生労働省は、食品衛生法違反のおそれがあるとして、自主回収となった食品について新たな健康被害の発生を防ぐため事業者に対し、「食品衛生申請等システム」での報告を義務づけて公表しています。

厚生労働省によりますと、「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことから、小林製薬が製造した紅麹原料を使った商品を自主回収する動きが相次いでいて、26日午後3時の時点で、同じ原料を含む別の商品14製品が回収の対象となっているということです。

厚生労働省によりますと、これらの製品では、今のところ健康被害は確認されていないということです。

厚生労働省は、これらの製品が手元にある場合は購入した店舗やメーカーに連絡するほか、ホームペ-ジのリストに掲載された保健所でも、体調不良などについての相談を受け付けているということです。

厚労相 聞き取り調査実施の方針を表明 

武見厚生労働大臣は26日午後、記者団に対し、食品衛生法に違反する有害な物質が含まれていないかなどを確認するため、会社への聞き取り調査を行う方針を明らかにしました。

厚生労働省によりますと、有害な物質が含まれていることが確認された場合は、法律に基づき、販売や製造、輸入などが禁止されることになります。

また今週中にも専門家らによる薬事・食品衛生審議会の調査会を開催し、小林製薬が製造した紅麹原料を使った関連製品への対応についても検討していく考えを示しました。

武見大臣は「ご遺族にお悔やみを申し上げるとともに 健康被害を受けた方の一日も早い回復をお祈りする。厚生労働省消費者庁で、小林製薬に対しては速やかに情報提供するよう指示し、全国の自治体に対しては健康被害についての情報を収集するよう指示した」と述べました。

腎臓内科医「成分の調査必要」 

腎臓内科が専門で帝京短期大学の篠田俊雄教授は「どんな成分が、腎臓病を引き起こしたのかはまだ分かっていないため、原因については今の時点でははっきりしたことは言えない。過去には肥満治療のための漢方薬を服用した人が、相次いで腎不全になったことが問題になり、調べると植物に含まれる成分が原因だと分かったケースもあるなどよく分からない成分が腎不全を引き起こすことは起こりえることだ。また、有毒な成分ではなくても ある物質にアレルギー反応が起きて、腎障害を引き起こした可能性も考えられる。まずはどんな成分が含まれていたのかしっかりと調べる必要がある」と話しています。

専門家「原因物質の究明急ぐ必要」 

東京大学 唐木英明名誉教授

小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題について、食の安全の問題に詳しい東京大学の唐木英明名誉教授は、「紅麹は、シトリニンという腎機能障害を引き起こす毒素を作る場合があることが知られているが、会社の調査では、その毒素は入っていなかったと報告されている。

毒性の強い何らかの物質が何らかの原因で混入した可能性を考えるしかなく、まずは、その原因物質の究明を急ぐ必要がある」と指摘しました。

また、「通常、微生物を扱う企業では、雑菌が外から入らないように厳重に防護しているが、今回の製品が作られた工場で長年、何事もなかったのに、なぜ突然、あるロットだけで有害物質が混入してしまったのか、想定しない事故なのか、人為的なミスなのか、その経緯の検証が必要だ」と話しました。

そして、「紅麹は古くから食品の着色料として使われていて、その色素自体には危険性はない。問題は今回のサプリメントなのでもし摂取した人で尿が出にくくなったり、体がむくんだりするような症状があれば、すぐに医療機関を受診してほしい」と話しています。

「紅麹」めぐり2014年に国が注意喚起 

「紅麹」をめぐっては、2014年に内閣府食品安全委員会が、紅麹菌を由来とするサプリメントの摂取が原因と疑われる健康被害がヨーロッパで報告されているとして、注意喚起を行っています。

それによりますと、フランスでは、実際に紅麹菌に由来するサプリメントの摂取と関連が疑われる肝障害などの届け出があったとして、服用前に医師に相談するよう注意喚起していて、EUヨーロッパ連合では、当時、一部の紅麹菌が生むカビ毒の「シトリニン」について、サプリメントに含まれる基準値を設定していました。

一方、小林製薬は、今回、「シトリニン」についてはサプリメントの原料となった紅麹からは検出されていないとしています。

「機能性表示食品」とは 

「機能性表示食品」は、パッケージに、健康の維持や増進に役立つという食品の機能を表示したものです。

販売前に、事業者が食品の安全性や機能性の科学的な根拠などを、国が定めるルールにのっとり消費者庁に届け出て公表する必要がありますが、許可制ではなく、国の審査も行われないため、事業者の責任で適正に販売することになっています。

効果や安全性を国が審査する「特定保健用食品」や、すでに科学的な根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含めば国が定めた表現によって機能性を表示できる「栄養機能食品」とは異なる制度となってます。

消費者庁 サプリメントの安全性再検証求める

消費者庁は紅麹を使った機能性表示食品として届け出ているサプリメントについて、会社側に対して、安全性を再検証して報告するよう求めました。

小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題では、会社によりますと、これまでに対象の商品を摂取し、体調不良を訴えて入院したと確認されたのは26人に上っています。

消費者庁は、会社からの報告を受けて、会社が紅麹を使った機能性表示食品として届けているサプリメント8件について、安全性の根拠となる情報を再検証し、報告するよう通知しました。

また、消費者庁は、あわせて福岡市の会社「ZERO PLUS」についても、紅麹を使った機能性表示食品1件について、安全性の根拠となる情報を再検証するよう求めました。

いずれも回答の期限を来月5日としています。

消費者庁 健康被害の発生がないか緊急の総点検 

小林製薬」が、機能性表示食品として届け出ていた、「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、消費者庁は現在、機能性表示食品として届け出がなされているおよそ7000の商品すべてについて健康被害の発生がないか緊急の総点検を行うことを決めました。

26日行われた会見の中で、自見消費者担当大臣は小林製薬が自主回収を決めた3つの商品など、紅麹の成分を含むサプリメント8商品について、小林製薬から機能性表示食品としての届け出を撤回するという申し出があったことを明らかにしました。

また、小林製薬が1月に被害を把握していながら今月22日まで消費者庁に報告していなかったことについて「誠に遺憾だ」としたうえで、現在機能性表示食品として届け出がなされているおよそ7000の商品のすべてについて、健康被害の情報が寄せられていないかや情報収集の体制がととのっているか、安全性と機能性の科学的根拠などを調査する緊急の総点検を行うよう26日指示したということです。

自見消費者担当大臣は、「機能性表示食品の安全性について疑念を抱かせる深刻な事案だと受け止めている。点検の結果も踏まえながら機能性表示食品の制度全体の検証もしていく必要があると考えている」としています。