桜の開花まであと少し(2024年3月25日『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 天気に関するうんちくが盛り込まれた「すごすぎる天気の図鑑」(荒木健太郎著)を見ていたら美しい写真があった。アスファルトの道路などで見られる「逃げ水」に、道路脇の桜が映り込んでいる写真だ。

 まるで桜の花びらが水たまりに浮かんでいるようだ。お堀や川、池などに映る、いわゆる「逆さ桜」も美しいが、逃げ水に映ったそれはまた違った味わいがある。逃げ水といえば夏の感じがするが晩春の季語である。〈逃げ水の出発点は椿の木〉(櫛原希伊子(くしはら・きいこ))。

 きょうから5日間は七十二候の一つ「桜始開(さくらはじめてひらく)」。文字通り、桜前線が北上して桜の花が開き始めるという意味だ。また、あさって3月27日は「さくらの日」。27が「3×9(さんく=咲く)」であることと、この「桜始開」の時期が重なるため。

 昨年の本県のソメイヨシノの開花は19日だったが、今年はまだのようだ。平年は23日。きのう宮崎市の県総合文化公園に行き、ソメイヨシノの枝をつぶさに見て歩いたら、1本の木に2輪咲いているのを見つけた。夜空を眺めていて期せずして流れ星を見つけたような、何だか得した気分になった。

 満開になる日も遠くないだろう。今の時期の雨は開花を促す「催花雨(さいかう)」などと呼ばれる一方、強い風を伴えば桜を散らす「桜流し」にもなる。今週は雨の日が多いようである。桜が満開になる前にまとまって降り開花後は一日でも長く楽しめるようにと願う。