部活生自死報告書 実効性ある再発防止策を(2024年3月24日『琉球新報』-「社説」)

 部活動の顧問から執拗(しつよう)な叱責(しっせき)を受け、2021年1月にコザ高校2年(当時)の空手部男子生徒が自ら命を絶った問題について、県が設置した第三者再調査委員会の報告書(概要版)が公表された。

 報告書は男子生徒と顧問の関係を、指導者と指導を受ける者との一般的な主従関係を超えた「支配的主従関係」だったと指摘し、再発防止に向け、生徒の人権尊重が最重要とする学校体制の確立を求めた。顧問は教職員評価で「よき指導者」などと高く評価されていた上、不適切指導を把握した管理職が部員への聞き取りをしていなかったことを問題視した。
 不適切指導に対する学校側の関与が弱く、事態への認識が甘かったことが最悪の結果を招いたのではないか。県や県教委、学校など関係者は生徒の尊い命が失われたことを重く受け止め、実効性ある再発防止策を取りまとめ、その実行に全力を挙げてほしい。
 報告書は他にも、生徒が自死に至る前日に顧問が理不尽かつ強烈な叱責をしたことが自死に至らしめたと認定。顧問による他の部員への不適切指導があったとも指摘した。
 その上で「子どもの権利条約」の理念を浸透させるための研修・授業の実施や、イエローカード制など「不寛容な指導」の廃止、「文武両道」という校風の再検討などを求めた。県や県教委、学校関係者は提言を真摯(しんし)に受け止め、再発防止策に反映すべきである。
 調査の在り方も問題視された。調査は当初、県教委の第三者調査チームが実施したが、調査が不十分とする遺族の訴えを受け、異例の再調査となった。2年3カ月もの間、遺族はつらい思いをしたに違いない。報告書が「遺族への十分な配慮」を求めたのも当然だ。
 文部科学省が示す「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」は、事実に向き合いたいとの遺族の希望に応えるため、不都合なことがあってもしっかり向き合う姿勢を学校に求めている。その姿勢を欠いていなかったか。
 県スポーツ協会によるスポーツハラスメント(スポハラ)に関する意識調査によると、「子どもが所属するチームでスポハラと思われる不適切な行為はあったか」の問いに約3割の保護者が行為を見聞きした旨の回答をした。全国では1割程度という。沖縄でスポハラを許容する風潮があるのなら問題だ。
 スポハラが生じる要因を複数回答可で聞くと「チームが勝利至上主義を容認している」が69%と最も高く、「指導者と選手間で強い主従関係がある」が52%と続いた。コザ高の問題の背景と一致する。
 スポハラや不適切指導をなくすには、勝利至上主義や強い主従関係を改めなければならない。コザ高に限らず、全ての部活関係者は部活の在り方を根本から考え直す課題に直面している。「指導死」を二度と起こしてはならない。