大館の2町内会解散 地域維持へ市も努力を(2024年3月24日『秋田魁新報』-「社説」)

 大館市で、町内会の在り方を考える機運が高まっている。市内の二つの町内会が昨年5月と11月に、それぞれ役員のなり手がいないとして相次いで解散したことが契機となった。役員の負担が重くなりがちな町内会の現状の見直しにつながるかどうか、注視したい。

 昨年5月に解散した町内会(加入約100世帯)では、十数年にわたり会長を務めてきた現在70代の男性が数年かけて後任を探してきたが、引き受ける人が見つからなかったという。

 解散は住民の判断として尊重されるべきだろう。一方で、解散に伴う弊害も出ている。それまで班ごとに行ってきたごみ集積所の管理や、回覧板による広報物の配布などのルールがなくなったことだ。

 これに対しては、地域課題解決に向けて市が設置した官民の組織「市支え合い推進会議」が支援。事務局の市社会福祉協議会が設けた住民の意見交換会では「町内会がなくなり、ごみ当番をしなくてもいいと思っている班もある」などの声が出た。一方で「分担してみんなでやらなければと思った」との意見もあり、当面は意見交換会出席者が協力してごみ集積所を管理することにした。

 市社福協は、昨年11月に解散した町内会に対しても状況確認を進め、支援も行うとしている。二つの町内会の解散を市全体に波及しかねない課題と捉え、活動する姿勢を評価したい。

 2町内会が解散する前の昨年1月に、市支え合い推進会議が全341町内会を対象に行ったアンケートがある。「運営の悩み」(複数回答)で多かったのは▽役員のなり手がいない(227)▽役員の高齢化(197)▽特定の人しか参加しない(162)―などだった。

 町内会が市町村から依頼される行政協力業務は、ごみ集積所の管理や広報物配布以外にも多岐にわたる。総務省所管の有識者研究会によると、行政協力員など各種委員の推薦、防災対策、高齢者の見守りを求められる町内会は全国的に増加。その多くを町内会役員が担わなければならなくなっていることが、なり手不在の理由の一つだ。

 有識者研究会は、町内会の存続には、行政協力業務を減らすなど市町村側の取り組みも重要だと説く。大館市の町内会対象のアンケートでは「(市などからの)依頼が多過ぎる」という自由記述があった。市には「地域社会を支えるパートナー」と位置付けている町内会の負担を軽減し、支援することが求められる。

 総務省の調査では、県内の町内会は5400余り(2021年4月現在)とされる。少子高齢化核家族化が進む中、災害時の共助や伝統行事の継承にも関わる地域コミュニティーを、いかに維持するかが問われている。県内の他市町村でも、町内会の在り方に関する議論が深まることを期待したい。