◆「メニューを見て、来る日を決める」
献立表は学校などを通じて子どもたちに配られる。「メニューを見て、来る日を決める。好きな給食のためなら外出できる」。普段は家からほとんど出ないという中1の男子生徒(13)は満足そうに話した。
週2、3回通う中3の男子生徒(15)は「同じ学校の子がいたら別室にしてくれる配慮にもほっとする。職員さんも必要以上に干渉してこないので、自分のペースで食べられる」。
◆給食をつくるためだけのセンターを…「雷に打たれたようだった」
取り組みは、昨年2月に始まった。安間英潮(ひでしお)教育長が市民向けの給食試食会の様子を見て「学校に来られない子も給食を食べたいのでは」と思ったのがきっかけ。不登校支援にセンターを活用する発想には、市学校給食課の東郷信一課長も驚いた。「雷に打たれたようだった」と振り返る。
市内に4カ所ある全センターを、給食をつくっている日は毎日開放。誰も来ない日もあれば、10人以上が来る日もある。市内には不登校の小中学生が約1800人いる。これまでに小学生は29人、中学生は38人が訪れた。学校だけではなく、不登校生が相談に訪れる療育施設や病院、フリースクールからの紹介も増えてきた。センターが学校に子どもの様子を報告し、学校によっては「出席」扱いにしている。
◆「安心して過ごせる居場所の一つに」
家族以外とのつながりを持つきっかけにもなっている。釜をかき混ぜたりして調理を手伝い「好きなことが見つかった」と食に関係した仕事を目指すようになった女子生徒、「思いっきり遊んでから食べるとおいしい」と児童館に寄ってから来る児童、センター職員らとの雑談を通じて、再び学校に行く意欲を取り戻した生徒もいる。
小学生は親の付き添いと予約が必要で、中学生はふらっと来やすいように予約不要。子どもは無料、親は300円。市学校給食課の安斉祥江(よしえ)さんは「安心して過ごせる居場所の、選択肢の一つになってくれたらうれしい」と話した。