一人一人に合った、最適の支援を提供できるようにしていくことが大切だ。
県内の小中学校で2023年度に30日以上欠席した不登校の児童生徒が前年度から792人増の4338人となり、初めて4千人を超えた。文部科学省の問題行動・不登校調査などによると、千人当たりの割合は33.6人で、19年度の16.4人から倍増している。
近年は保護者などの間に、学校に行きたがらない子どもを無理に登校させない方がいいとの考えが広まるなど、不登校の子どもを取り巻く環境は変化している。そうした事情を考慮しても、増加のペースは極めて深刻だ。
不登校の長期化は、学校への復帰を難しくする。学業の遅れなどで、進路選択の幅が狭まりかねないなどのリスクも軽視できない。子ども、家族と学校が話し合って、登校再開を目指してみるという場合には、全力でそれを支えることが重要だ。
登校が難しいという場合も当然あるだろう。復帰を目指すかそうでないかで線引きをするのではなく、子ども一人一人の状況に合わせ、ケース・バイ・ケースで対応していく必要がある。
学校では、休みがちな子どもを別教室で受け入れる「サポートルーム」などの取り組みが広がっている。不登校の子どもの受け皿となるフリースクールは県内にもいくつかある。また、県教委はインターネット上の仮想空間「メタバース」を用いて、教員と不登校の子どもらが交流する機会を設ける試みをしている。
子ども、家族と学校との接点が弱ければ、復帰の糸口がつかめないということにもなりかねない。ノウハウの蓄積を含めた対応を強化し、それぞれの子どもに合った学校や教員とのつながり方を提示できるようにすることが、各教委や学校には求められる。
不登校の子どもの支援と並行して進めなければならないのは、学校に行きたくないという子どもを増やさないための取り組みだ。不登校は、中学校進学時や学年の変わり目など、環境が変化する時期に増える傾向がある。県教委はこれを踏まえ、小学6年生を対象に学校生活の不安を把握する調査を行うなど、不登校の兆候に対する早期対応を進める考えだ。
不登校は、子どもが自身の抱える不安に対処しようとしている方法の一つと考えるべきだろう。その不安に学校も一緒に向き合うことで、学校が自身の味方になってくれる存在であると感じてもらえるようにしていくのが肝要だ。
増え続ける不登校の要因をつぶさに見つめ、学びの保障と「居場所」づくりを進めたい。
2023年度に全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒が過去最多の34万6千人となり、11年連続で増加した。前年度から4万7千人増え、40人学級で1・5人に相当する。
最も多かったのが「やる気が出ない等の相談があった」で約3割、「不安・抑うつの相談」が2割と続いた。
別に、不登校経験者と教師らを対象に昨年行った調査では、「いじめ被害」と回答した割合で子ども側が20ポイント以上、「教職員への反抗・反発」では30ポイント以上も教師側より高かった。
認識のずれは何か。詳しい検証が必要だろう。当事者の声をすくい取る調査、分析をいっそう深めてもらいたい。
文科省は増加の要因として、多様な学びを認める「教育機会確保法」の施行で、無理に通学しなくてもいいとの考えが保護者に浸透したことに加え、特別な配慮が必要な子どもへの支援の不十分さを挙げている。
教員が多忙で子どもに向き合う余裕が減っていることも影響してはいないか。人員体制を含めた再点検が求められよう。
受け皿となる多様な「居場所」の整備も欠かせない。
文科省は空き教室を活用した「校内教育支援センター」や、教育課程を柔軟に編成できる「学びの多様化学校」(不登校特例校)を設置してきたが、センターの設置率は7月現在46%、特例校は京都市などの35校にとどまる。さらなる拡充を急ぎたい。
オンライン授業の充実、民間のフリースクールへの支援も引き続き重要である。
いじめも深刻化している。
小中高などが認知したいじめの件数は過去最多の73万件超となり、身体的被害や長期欠席などが生じた「重大事態」も初めて千件を超えた。
文科省は今夏、重大事態の調査に関する指針を見直し、学校の初動体制の在り方などを明確化した。組織的な対応の改善につなげたい。
不登校最多 低年齢化と長期化が心配だ(2024年11月14日『読売新聞』-「社説」)
不登校の児童生徒が増え続けている。生活習慣が乱れ、登校に意欲が湧かない子供も多い。子供たちに何が起きているのか、しっかりと分析し、対策を講じねばならない。
学校以外での多様な学びを認めた教育機会確保法の施行で、無理をしてまで登校しなくてもいいという認識が社会に広がった。コロナ禍では休校が相次いだ。
こうした事情が重なったためか、毎日学校に行く習慣を失い、今も生活を立て直せない子が少なくないのではないか。
コロナ禍により、幼稚園や保育園での集団生活を経験しないまま小学生になり、学校になじめない児童も多いとされる。一度、不登校になると、翌年度もその状態が続く傾向がある。
様々な事情で、学校に行けない時期があるのは、やむを得ない面があろう。ただ学校生活は、多様な個性を持った他者と交流し、協調性や社会性を育んでいくために重要な場である。
子供の生活習慣が乱れている場合は、各家庭でリズムを整えることから始めてほしい。学校側にも、集団生活に不慣れな子が登校しやすい雰囲気作りを求めたい。
国は、クラスに溶け込めない子が校内の別の場所で学べる「校内教育支援センター」の開設を進めている。不登校の受け皿になっているフリースクールを増やすことも課題だろう。こうした対策を着実に実行していく必要がある。
今回の調査では、小中高校でのいじめや暴力行為の件数も過去最多となった。深刻ないじめを示す「重大事態」も最多となり、暴力行為は、特に小学生で10年前の6倍となっている。
学校が、いじめや暴力を積極的に認知する傾向が強まっているという事情もあるが、いずれも対応を誤れば、児童生徒の命に関わりかねない。兆候を見逃さず、速やかに対処することが重要だ。
2023年度に不登校と判断された小中学生は全国で34万人に達し、過去最多を更新した。
調査した文部科学省は、無理に学校へ行かせる必要がないと考える保護者が増えたことなどが背景にあるとした。
多様な学びを認める教育機会確保法の施行から7年が経過した。学校だけが学びの場であるとの認識が変わり、学校生活になじめない子への配慮が広がった側面はあろう。
しかし代わりの居場所は不足し、教員も多忙で子どもと向き合う時間の確保が難しい。学びをどう保障するかが課題だ。
不登校の理由はさまざまである。子どもの悩みに寄り添い、意思を尊重した上で必要な支援を届けることが欠かせない。
前回までは学校側が不登校の原因と判断した内容を聞いていたが、子どもの認識との違いがかねて指摘され、今回は客観性を高める質問に変えたという。
ただ学校側に聞くだけでは自らの不都合な事情に触れず、子ども個人の問題に矮小(わいしょう)化されかねない。やる気を失い、不安を強めるまで子どもを追い込んだものは何か、本人の声も反映させ分析を深める必要がある。
不登校の子の6割は学内外の組織から相談や指導を受けていた。残る4割の大半も担任と連絡を取り合っていたという。
文科省は不登校の子に応じた授業を行う「学びの多様化学校(不登校特例校)」を全国で300校設置する目標を掲げたが、現状は35校にとどまり、道内は札幌の1校のみだ。地方では居場所の確保はより難しい。一層の整備が求められる。
その上で担任が継続的に連絡を取り、スクールカウンセラーや民間の助けも借りて学内、学外を問わず学ぶ機会を提供していくことが大切である。
保護者の負担増も深刻だ。
家族の生活や心身に与える影響を直視せねばなるまい。公的支援を拡充する必要がある。
令和5年度に不登校だった小中学生が過去最多の34万6482人に上った。11年連続の増加で、30万人を超えたのは初めてだ。
文科省が全国の国公私立校を対象に行った調査によると、5年度に年間30日以上欠席した小学生は13万370人、中学生は21万6112人で、いずれも前年度より2万人以上増えた。全ての児童生徒に占める不登校の割合は3・7%(前年度3・2%)で、35人学級のクラスに1人以上いる計算である。
特に心配なのは、低学年になるほど増加幅が大きいことだ。過去2年間で小学2年生の不登校は1・88倍に、1年生は2・02倍に急増した。
いじめの被害者が長期欠席するなど「重大事態」も過去最多だった。文科省と各教委は、深刻に受け止めるべきだ。
不登校が急増した要因には、新型コロナ禍の影響などで生活リズムが崩れたことや、保護者らの意識が変化したことが指摘される。平成29年施行の「教育機会確保法」で、学校以外での多様な学びを支援する方針が示されたこともあり、「無理して学校に行く必要はない」という意識が急速に広まった。
29年度に14万4031人だった不登校は、同法施行後の6年で20万人以上も増えている。同法が示した方針が適切だったのか、根本から見直す必要があるのではないか。
教員が児童生徒の状況を把握していない懸念もある。
児童生徒はさまざまな事情を抱えている。「やる気」に責任をかぶせても、効果的な対策は十分には立てられまい。家庭訪問などでより詳細な状況把握に努めるとともに、教員の質を高める取り組みが重要である。
学校が果たす役割は、学習面だけではない。集団生活の中で子供たちは、嫌なことやうれしいことを体験しながら、人との関わり方を身につけていく。「行く必要はない」という意識を蔓延(まんえん)させてはならない。
多様な学びを支える体制をどう構築するか。学力偏重の教育課程に問題はないのか。政府は子どもたちの声に耳を傾け、問題の在りかと対策を探るべきだ。
文部科学省によると、2023年度に30日以上欠席した小中学生は過去最多の34万6482人に上り、11年連続で増えた。高校生も6万8770人で過去最多だった。
文科省は背景に、通学を無理強いしない保護者の増加や配慮が必要な子どもへの支援不足を挙げる。今回設問を見直し、不登校の理由を学校側の判断から「把握した事実」に変えた。「やる気が出ないなどの相談」(32・2%)が最多というが、子どもや保護者から直接聞き取る形ではなく、本音は見えにくい。
4万人近い児童生徒はフリースクールなどで指導を受け、学校の出席扱いとなった。民間の活動は大きな支えなのに、利用料助成は自治体ごとにばらつく。不登校を経験した世帯の約3割は減収したとの民間調査もある。私立の多様化学校に通う家庭も含め、負担軽減が求められる。
政府の教育方針が与えた影響も分析すべきだ。08年度に「ゆとり教育」からの転換が図られ、授業時間数や学習内容は大幅に増えた。子どもの負担増とともに、教員の多忙化に拍車がかかった。精神疾患で休職した公立学校教員が22年度に過去最多となったこととも無縁ではないだろう。
今回の調査では、いじめの認知件数と「重大事態」の件数も過去最多だった。学校自体を安心して通い、学べる場所にしなければならない。登校がつらい子どもの居場所を増やすのは当然としても、多様な受け皿への「排除」につながっては本末転倒だ。
昨年4月施行のこども基本法は、子どもの意見表明権を盛り込んだ。肝心の教育施策に当事者の声を反映させないなら、政府がうたう「こどもまんなか社会」実現など不可能だ。まずは子どもたちの意見を聞き、要因の分析や今後の施策に生かすべきだ。
学校に通うのが苦痛なら無理して通わなくていい。最優先すべきは子どもの心身の安全であると、保護者や教員、社会の認識が変わってきた。
とはいえ、不登校の子どもが増え続けている現実を見過ごすことはできない。
11年連続で増加し、新型コロナウイルス禍の20年度から10万人以上増えた。全体の3・7%に当たり、35人学級では1クラスに1人は学校に行っていない計算になる。
この数字に対する印象は、世代によって異なるかもしれない。驚きや不安を持つ人も多いだろう。
不登校の理由は子どもによってさまざまだ。実態と要因の把握、分析が対策の第一歩となる。
例年は「無気力、不安」といった子どもに起因する理由が最も多い。一方、不登校経験者らに調査すると、先生や友達との関係、勉強が分からないなど、学校に由来するものが多くなる。
文科省はこれを踏まえ、学校が把握した子どもたちの相談内容を複数回答できるようにした。
その結果、相談内容の上位に「学校生活に対してやる気が出ない」「不安・抑うつ」「生活リズムの不調」が挙がり、複数の理由が絡んでいることがうかがえる。
子どもたちが無気力や不安になったのはなぜか。その背景を掘り下げる必要がある。調査方法の改善を重ねてもらいたい。
問題なのは、不登校の子どもの4割が学校内外で専門的な相談や指導を受けていないことだ。
相談窓口や民間支援などの情報が行き渡らず、子どもだけでなく保護者も悩み、孤立している姿が目に浮かぶ。
17年施行の教育機会確保法には「学校以外の場での多様な学習活動」の重要性が明記されている。
空き教室を活用し、一人一人の関心や能力に沿った学習ができる校内教育支援センターを開設する学校もある。
こうした学びの場を子どもと保護者が選べるようにするには、学校と自治体による情報提供が欠かせない。
子どもには教員に相談できないことがあり、カウンセラーのような専門職に気軽に相談できる体制は必須だ。
自治体と提携する民間団体が家庭訪問をして、子どもを支援する取り組みもある。学校に行けない子どもと保護者を孤立させてはならない。
▼映画『レナードの朝』の原作者で英国の神経学者、オリバー・サックスさんの場合は毎朝の水泳。泳ぐことで「心と体にスイッチが入り」、欠かすことができなかったという
▼やる気を起こすスイッチのようなものを自分で見つけられた人は幸せなのだろう。文部科学省の調査によると昨年度の小中学生の不登校は過去最多の34万人。不登校の理由で最も多いのは「学校生活にやる気が出ない」(32・2%)だった
▼悩む子どものやる気のスイッチをポンと押してあげたいが、そんな便利なスイッチはないのかもしれぬ。スイッチとは誰かが押すものではなく、自分でこしらえる習慣のようなものだろう。朝日にせよ、水泳にせよ、気が乗らない日にも日課に取り組む合図のようなものが見つかれば、しめたものなのだが
▼「生活のリズムの不調」を不登校の理由に挙げる児童生徒も多かった。朝は起き、夜ふかししない。学校へ行く習慣を身に付けるにはまず、ここからか
不登校の急増が迫る学校改革(2024年11月5日『読売新聞』-「社説」)
登校できず、十分な学びを享受できない子どもをこれ以上、増やしてはならない。文部科学省の調査によると、2023年度は30日以上欠席した不登校の小中学生が過去最多の34万人に達した。増加は11年連続で、不登校の低年齢化と長期化が進む。
不登校の小中学生の数は過去5年で約2倍に膨らんだ。新型コロナウイルス禍の長期休校による生活リズムの乱れなどが大きく影響したのは確かだ。だが、教員の若返りに起因する指導力の低下や子どもに向き合う時間の不足も背景にあるのではないか。学校の人員体制も含めた検証が待たれる。
調査結果によると、23年度に不登校になった子どもの3割が「学校生活に対してやる気が出ない」などの相談をしていた。学業不振が見られたケースも目立つ。
求められるのは学校の改革である。教え方を工夫し、理解度に応じた宿題や補習を提供することで授業が分からず取り残される子どもをなくす。学力の保障によって不登校は減らせることを、教員や教育行政は再認識してほしい。
23年度はいじめの認知件数も過去最多で、被害が深刻な「いじめ重大事態」が初めて1000件を超えた。早期の発見と対処が進んだ面もあるが、誰もが安心して過ごせる学校づくりは道半ばだ。
様々な事情で登校が難しい児童生徒も増えており、学校外の学習機会の充実は急務だ。千葉県は6月から中学生向けに授業のオンライン配信を始めた。市町村によって教科書が違う難しさもあるが、良質な学びを保障するうえでデジタル技術の活用は有効だろう。
不安や悩みを抱えた子どもへの支援が足りていない。きめ細かな対応ができる体制を整える必要がある。
文部科学省がまとめた2023年度の問題行動・不登校調査で、全国の小中学校で不登校(30日以上の欠席)になった児童生徒が34万6千人余りに上り、過去最多を更新した。単純計算すると40人のクラスに1・5人いることになる。
17年施行の教育機会確保法で学校以外での多様な学びが認められた。文科省は、無理に学校に行かなくてもよいという意識が広がったことが増加の背景にあると分析する。新型コロナウイルス禍での登校意欲の低下や、特別な配慮が必要な児童生徒への支援に課題があることなども影響したようだ。
調査で、不登校の要因に関し学校側が把握した事実は「やる気が出ない」「生活リズムの不調」といった本人起因の割合が高かった。
一方で、子どもと教員側双方に不登校の要因を尋ねた昨年の別の調査では、双方の認識のズレが浮き彫りに。「いじめ被害」「教職員への反発」などを挙げた子どもの割合は教員側を大きく上回った。
児童生徒のわずかな変化やSOSの早期把握が鍵を握る。しかし、学校現場からは、教員の職務は多忙で子どもと向き合う余裕がないとの声が聞かれる。教員志願者の減少などで教員も不足している。
教員らの勤務実態を含め、子どもの安全と成長を守る環境を整える必要がある。
23年度は小中高などでのいじめの認知件数も約73万2500件と過去最多だった。
うち身体的被害や長期欠席が生じた「重大事態」は約1300件で、前年度から約4割増えた。13年施行のいじめ防止対策推進法への理解が進み、学校側が積極的に認定したことなどが背景にあるとみられる。
しかし、学校側の初動の在り方は各地で問題化している。北海道旭川市で21年に中学生が自殺した問題では、学校側が当初いじめと認知せず、重大事態としての調査を行わなかったことが判明している。今回も、重大事態のうち4割弱が事前にいじめと認識されていなかった。
文科省は8月、重大事態の調査に関する指針を改定し、学校現場への周知を進めている。早めの対応へ体制の整備が欠かせない。
高知県も厳しい状況に変わりはない。不登校者数は前年度から141人増えて1604人。千人当たりでは過去最多の34・3人となった。全国15番目の少なさとはいえ、依然として高い水準にある。いじめの認知件数は166件減り3583件。重大事態は千人当たり0・12件で全国30位だった。
県教委はスクールカウンセラーらの配置や教室に入りづらい生徒が校内で過ごす「校内サポートルーム」の設置などを進めてきた。だが、小学校低学年の不登校者や交流サイト上でのいじめの増加といった課題も浮き彫りになった。適切な支援で子どもたちを救いたい。
不登校11年連続増 保護者の支援に力を注げ(2024年11月5日『琉球新報』-「社説」)
不登校11年連続増 保護者の支援に力を注げ(2024年11月5日『琉球新報』-「社説」)
文部科学省の2023年度の問題行動・不登校調査で、全国の小中学校で不登校の児童生徒が11年連続で増加し、3・7%に当たる34万6482人になった。学校内外の居場所づくりや教員の働き方改革など、文科省はさまざまな対策をとっているが、追いついていない。不登校の保護者は困難の中にある。学校での対策とともに、不登校の児童生徒とその保護者への支援にもっと力を注ぐべきだ。
沖縄県の不登校も小中高合わせて8240人で、小中は過去最多で合計も最多だった。割合は小中高とも全国平均を上回り、小学校はワーストだった。今年6月に公表された県の「沖縄子ども調査」では、不登校、いじめ、ひきこもり、高校中退、ヤングケアラーなど子どもが抱える困難の経験は、所得が低いほど割合が高かった。沖縄では貧困対策も合わせた総合的抜本的な取り組みが必要だ。
22年にNPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」の保護者への調査で、不登校により支出が増えたという回答が91・5%に達した。増えた理由は、食費が最も多く、フリースクールなどの利用料と交通費、通院・カウンセリング料が続いた。勤務日数を減らさざるを得ず、約30%が世帯収入が減ったと答えた。
今年10月公表された東京のフリースクール運営会社SOZOWの調査では、保護者の5人に1人が仕事を辞めざるを得なかったと答え、半数以上が「気分の落ち込み」があると答えた。同社代表は「自治体によって相談窓口の整備状況や取り組みにばらつきがある。親が孤立しない環境の整備が必要だ」と訴えた。
不登校急増の原因は明確ではないという。文科省の前回22年度の調査では不登校の理由については、本人に起因する「無気力・不安」が過半数の51・8%を占めた。しかし、不登校を経験した小中高生や担任らに尋ねた委託調査とは大きな隔たりがあった。そのため、今回は相談など具体的な事実があったかを尋ねる形式にしたが、傾向は変わらなかった。学校側だけでなく、児童生徒本人に答えてもらう方法を検討すべきである。
この間、文科省は教員数の増加や働き方改革、「校内フリースクール」と言われる校内教育支援センターの設置などを進めてきた。「校内の居場所」を民間と連携してつくる動きもある。こども家庭庁は来年度の概算要求に、専門の支援員を自治体に配置し、地域と連携しながら保護者向けの相談を受ける制度を盛り込んだ。多種多様な支援の動きは評価したい。
不登校急増の背景に「過度な決まり事や指導で、子どもが安心できない学校になっていないか」と問う声も現場にある。一人一人それぞれの学びの形として、学校が変わり、学校以外の方法も認められ保障される教育政策が求められている。