皇族数の減少 多様な公務を担う策考えよ(2024年3月24日『読売新聞』-「社説」)

 皇族数の減少は、皇室制度の存続にかかわる問題だ。令和も6年となった。政府と与野党は様々な課題を放置せず、結論を出すべき時期にきているのではないか。

 自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」が4か月ぶりに会合を開き、皇族確保の具体策として、皇族女子が結婚後も皇族の身分を保持することが望ましい、との意見で一致した。

 皇室典範は、皇族女子が結婚した場合は皇族の身分を離れる、と定めている。

 皇室は現在、天皇、皇后両陛下を含め、上皇さま、上皇后さま、他の皇族方の計17人で構成されている。そのうち未婚の皇族女子は、両陛下の長女愛子さま秋篠宮家の次女佳子さまら5人に上る。

 皇族女子は、歌会始や国民の幸せを祈る 祭祀さいし など宮中行事に参加している。また、海外訪問を通じた国際交流も担っているほか、スポーツ団体の名誉総裁などの立場で競技の普及にも努めている。

 皇族女子の離脱が続けば、様々な公務の継続は難しくなる。婚姻後も皇族の身分を保持できるようにすることは検討に値しよう。

 民主党の野田内閣は2012年、皇族女子が結婚後も皇室に残ることを可能にする「女性宮家」の創設を提案した。民主党の流れをくむ立憲民主党も現在、女性宮家の創設を主張している。

 自民党は、女性宮家の創設に慎重だ。女性宮家に子供が生まれた場合、皇位継承権を与えるのかどうかといった議論が生じ、皇位継承は父方が天皇の血を引く「男系男子」に限る、という制度が揺らぎかねない、との懸念からだ。

 だが、女性宮家を認めずに皇族女子に皇室に残ってもらう、とはどのような仕組みになるのか、イメージが定まらない。自民党は具体的な案を示す責任がある。

 皇族数の確保策としては、政府の有識者会議が21年、戦後に皇室を離れた旧宮家の子孫を、今の皇族の養子とする案を示した。

 長く民間人として暮らしてきた旧宮家の子孫が、唐突に皇室の一員となることに国民の理解は得られるのだろうか。本人の意向を確認する作業も必要だろう。

 皇室を巡っては、安定した皇位継承も重いテーマである。

 天皇陛下の次の世代では、秋篠宮家の長男悠仁さまが皇位継承権を持っているため、政府、与野党とも検討を急ぐ気配はない。しかし、象徴天皇制を維持していくには、今から将来を見据えて議論することが大切だ。

 

皇室の課題|平成から令和へ 新時代の幕開け|NHK NEWS WEB