公務が集中
天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが学習院大を卒業されることが3月11日、正式に決まった。卒業式は20日に行われる。コロナ禍にあって通学もままならず通常の学業生活とはほど遠い4年間だったが、4月からは嘱託職員として日本赤十字社に勤務されることが決まっている。その順調なご成長ぶりを喜ばぬ国民はいないだろう。が、皇室全体を見た場合には、長年放置されてきた課題があるのも事実だ。
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「愛子さまの今後」と「皇室の今後」について関係者らはどのように考えているかを聞いてみると、「失われた20年」のツケが回りつつあるようで――。
皇室を取り巻く状況はかなり厳しい。皇族方の数は少なくなり、公務の担い手となる現役世代の皇族方もまた減少の一途をたどっている。
「現在、いわゆる現役世代の皇族方は、天皇皇后両陛下、秋篠宮さまと紀子さま、佳子さまと悠仁さま、そして愛子さまということになるでしょう。皇后さまは体調回復の途上で公務がままならないことも少なくなく、秋篠宮家の方々に公務が集中しているのも否定できません」 と、担当記者。
佳子さまが結婚されたら
その秋篠宮家でも、あくまでも仮の話ではあるが、近年、佳子さまの結婚が取り沙汰されてきた。
「結婚自体はたいへんよろこばしいことではあります。が、かなりの公務を担っていた眞子さんが小室圭さんと結婚して皇籍を離脱した後は佳子さまが眞子さんの分を引き継いで公務をこなされてきた部分があります。今後、佳子さまが結婚されて皇籍離脱した場合、その分をどなたが担当されるのかという課題が当然想定され、皇室制度の安定という意味ではかなりの痛手と言えるでしょう」(同)
もちろん、こういった事態になるのはわかっていたことで、ずいぶん前から内外から指摘を受け、政府も検討を重ねてきた。
2005年には当時の小泉内閣で「皇室典範に関する有識者会議」が立ち上げられ、「皇位継承順位は長子優先で、女性・女系天皇を認める」との報告書が出されていた。が、翌06年に、悠仁さまが誕生され、小泉内閣での議論はある意味で“なかったこと”になった。
20年の停滞
「05年からすでにおよそ20年が経過しており、元号は平成から令和になりました。政府も手をこまねいていたわけではないのでしょうが、国民を巻き込んで皇室制度の安定について具体的に話が進んでいるとは言えない状況でしょう」(同)
経済と同様、長年、課題が放置されていたと言えそうだ。この点、政治部デスクに聞いてみると、
「日本の将来を見据えて行動できる政治家がなかなかいないということなのでしょう。日々の仕事とか次の選挙のことに忙殺されて、国の将来のことを展望する余裕がないと言うか……。国の将来を考えられない政治家を果たして政治家と呼んで良いのかという気もしますが、現実問題としては長期展望で考える人がほとんどいない。大森理森元衆院議長はかなり積極的に皇室の問題にコミットしていましたが、すでに議員を引退してしまい、その後を継ぐ人がほとんどいない状況です」
このデスクによれば、国会議員で皇室の現状を憂い、積極的に発信を続けているのは、野田佳彦元首相くらいなのだとか。
議論がタブー視
「野田元首相については、首相在任中に現在の上皇皇后両陛下と懇談するなどした際に、皇室制度の安定に強い危機感を持ったと聞いています。永田町だけに限らないでしょうが、天皇陛下の後、秋篠宮さま、悠仁さまとバトンが受け継がれることが想定されている中で、それ以外のシナリオに繋がりかねない議論がタブー視されているということもあるようです」(同)
いずれにせよ、皇室制度が一気に動きそうな気配があった時期から約20年。今後、どうなって行きそうなのか。
「愛子さまが学習院大を卒業され、4月からは日本赤十字社で働かれることになります。公務についてはこれまで以上に積極的に関与されることになり、その中で愛子さまの将来、具体的には結婚や結婚後の身分についても話題にのぼることが増えてくるのではないかと見られています」
と、先の担当記者。
「現在の皇室典範を改正し、女性宮家を創設する案や女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能にする案などが具体的に検討されるかもしれません。婚姻後も女性皇族が皇族のままである場合、その配偶者や子供の身分はどうなるのかという問題がかなりの議論を呼ぶことは間違いありませんが、議論を避けては通れない状況になっている可能性が高いのかもしれません」(同)
場合によっては、一家の中で皇族と一般国民という身分の差が生まれることもあり得るというわけだ。
皇室制度の安定をめぐっては、旧皇族の男系男子を養子に迎える「旧宮家の皇籍復帰」案も政府内で共有されている。明治時代に創設され、戦後に臣籍降下した旧11宮家51人の末裔は現在、一般人として生活しているわけだが、その中の若い男系男子を養子に迎えるというものだ。旧11宮家のうち、その候補がいるのは賀陽家、久邇家、東久邇家、竹田家の4家に絞られているとも言われている。
その男系男子のどなたかが仮に愛子さまとのご縁があれならば結婚後も皇籍離脱をする必要がなく、さらに男子が生まれた場合には皇位継承権を持つことになるわけだが……。むろん結婚は当人同士の問題で外部がとやかく言うことではない。それが大前提であるがゆえ、議論そのものがデリケートな問題をはらんでいるのは事実である。
が、皇室制度の安定という大きなテーマを放置していいはずもない。愛子さまの卒業後、様々なシミュレーションが進むことになるだろう。果たして政治は長期的な議論に取り組めるか。
デイリー新潮編集部