ライドシェア 日本に適した制度を育てたい(2024年3月24日『読売新聞』-「社説」)

 個人が自家用車を使い有償で人を運ぶ「ライドシェア」が4月から部分的に解禁される。安全性を確保しながら、タクシーの補完的な役割を果たせるか、慎重に点検すべきだ。
 国土交通省はライドシェアについて、東京、神奈川、愛知、京都の4都府県の一部区域で曜日や時間を限定して、4月から始めると発表した。今後、大阪や福岡、札幌なども対象に加える方向だ。

 政府は昨年末、タクシー会社が運行を管理し、タクシーが足りない地域や時間を限る形で、ライドシェアを導入することを決めた。タクシーの配車アプリのデータから、必要な地域を特定した。

 旅客運送事業は、乗客の安全が何より重要だ。自由営業の形で、タクシー運転手に必要な2種免許がない個人のドライバーが運行すれば、安全性が保たれず、責任の所在も曖昧になりかねない。

 タクシー会社が管理する形で限定的に始めるのは妥当だろう。

 ライドシェアは、米国や中国、東南アジアなど海外で広く普及している。国内でも、運転手の減少によるタクシー不足が広がっているため、それを解消する手段として期待する声が出ている。

 ただ、海外では、ライドシェアに関連した性的暴行や強盗などの事件が多発している。運転手が被害に遭う例もあるという。

 海外で定着しているからといって安易に導入するのではなく、試験的な運用でメリットとデメリットを見極めながら、日本に適した制度にしていくことが大切だ。

 新制度では、タクシー会社が、ライドシェアを担う個人のドライバーの勤務管理や運転技術の指導などにあたることになる。事故に備え、対人で8000万円、対物で200万円以上の任意保険に加入することも義務づける。

 ドライバーは過去2年間無事故であることを条件とし、タクシー会社と雇用契約を結ぶ方向だ。

 個人の副業としての就業が見込まれる。利用者の安全が守られるよう、国はタクシー会社の監視を徹底してほしい。

 政府は、海外のような全面解禁についても、6月に考え方をまとめる予定だ。拙速は避け、丁寧に議論を進めねばならない。

 タクシー運転手は、コロナ禍による利用客の急減で離職が増え、2023年3月末の運転手数は19年と比べ約2割減ったという。

 タクシー会社が、賃金を引き上げたり、働きやすい環境を整えたりして、運転手の確保に努めることも不可欠となる。

 

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