天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが20日、学習院大学を卒業した。目白キャンパスでの卒業式に臨んだ愛子さまは、春の季節を運んだような桃花色の本振袖に凛とした紺色の袴をお召しで、周囲はふんわりと花かおるような空気に包まれた。
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梅や桜、菊などがあしらわれた桃花色の本振袖と袴をお召しの愛子さまが、春風のようにほほ笑みながら、キャンパス内を報道陣の前へ歩いてきた。四季の花々が描かれた大振袖がひらひらと揺れ動くさまも、愛子さまの可憐な表情を一層引き立てた。
報道陣から卒業へのお祝い言葉をかけられると、頭をすこし下げて、「ありがとうございます」と柔らかな声で答えた。
愛子さまの笑顔からは、晴れがましさと同時に、すこしだけくすぐったそうな初々しさが伝わってくる。 「素晴らしい先生方や友人たちと出会えたことも、うれしく、また、ありがたく思っております」
■愛子さまの袴姿はうれしい驚き
愛子さまが今回、本振袖と袴姿で卒業式に臨んだのは、うれしい驚きだった。 若い女性皇族では、2013年に城西国際大を卒業した三女の絢子さまが、朱色の着物に紺の袴をお召しだった。
一方で、愛子さまと同じ内親王の卒業式を見ると、ICU(国際基督教大学)を卒業した秋篠宮家の長女、眞子さんや次女の佳子さまは、大学の黒い角帽にガウン姿。そして平成の天皇、皇后両陛下の長女で同じ皇女の立場であった黒田清子さんは、ほとんどの同級生は着物に袴のなか、ご本人は淡いサーモンピンクのスーツを着用していたからだ。
愛子さまが皇居・半蔵門を出発したのは午前8時半ごろ。周辺には、卒業式に出発する愛子さまにお祝いの声をかけようと、人びとが集まっていた。
「おめでとうございます」「愛子さま」と声があがると、ステーションワゴンの窓を少し開けて、柔らかな笑顔とともにペコリと会釈で応えた。
「愛子さまのお召し物ははっきり見えなかったのですが、スーツとはすこし違う印象でした。ニュースで振袖に袴姿の愛子さまを目にして、あまりに可愛らしくお似合いで、感激しました」 と、沿道にいた女性は話す。
■十六葉八重表菊の「菊紋」が本振袖に
昭和の時代から皇室に着物をつくり、納めてきた「染の聚楽」代表の高橋泰三さんは、愛子さまがお正月にお召しになった御地赤(おじあか)の着物も手掛けた。 この日、愛子さまが和装で卒業式に臨んだというニュースを知り、 「愛子さまの色白のお顔に、桃花色の総振袖が美しく映えていらっしゃる。頬にほんのり赤味が差してお似合いの色です」と、目を細めた。
愛子さまは、友禅染の本振袖に紺袴をお召しだった。
未婚の女性の第一礼装である本振り袖に三つ紋を入れた、格式の高い着物姿。 よく見ると、愛子さまの袖に菊紋が見える。天皇や皇后と、そのお子さま方など天皇ご一家にあたる内廷皇族は、十六葉八重表菊の菊紋を用いており、愛子さまの本振袖にあるのもこの菊紋だ。
「愛子さまによくお似合いの薄紅色の倫子(りんず)生地には、さや形の地紋が見えます。さや型は、卍(まんじ)つなぎを菱状にくずした意匠で、光の差し加減や角度によって陰影を楽しむことができます。格調高い文様である橘と笹が白く染め抜かれて全体にあしらわれています」(泰三さん)
総振袖をいっそう華やかにしているのは、斜め取りに配された意匠だろう。描かれているのは、染疋田(そめひった)や金色で表現された波や桜が浮かぶ流水文様、金箔に梅と桜、菊など四季の花が舞う美しい柄行だ。
泰三さんによれば、愛子さまの本振袖は、桃の花のような美しい淡赤色である「桃花色」を基調に、淡い梅の花にすこし紫がかった「紅梅色」、「撫子色」、「牡丹色」、「つつじ色」など、美しい日本の伝統色があしらわれているという。 愛子さまの学生生活も、四季の花が舞うような美しい思い出に彩られたものであったに違いない。 (AERA dot.編集部・永井貴子)
永井貴子