社会問題(2024年3月23日『福島民友新聞』-「編集日記」)

 新聞に載った、ある社会問題を気にとめ、国の将来を深刻な顔で語るテレビ番組にも目を向ける。ただ差し当たっての一番の問題は傘がないこと。井上陽水さんの初期の名曲「傘がない」は、こんな情景で始まる

 ▼社会問題に背を向ける若者の心情を表現しているなど、さまざま読み解かれている。ごく単純に解釈すれば、最愛の人を思う歌。その人に会いに行くというのに冷たい雨。ぬれてでも行くしかない。社会問題は差し置いて、目の前にある現実にどう対処するかが、切実な問題として迫る

 ▼人口減、やまない戦争、貧困など克服しなければならない課題は国内外に山積している。それはそれとして、差し当たって花粉症が何とか収まらないものか。そんな思いの方は多いはず

 ▼増加傾向の花粉症患者は国民の4割を超えているとされる。もはや個人の問題ではなく、政府も「社会問題」と位置づけ、杉人工林の伐採や花粉飛散の少ない品種導入などの対策を進めている

 ▼薬を処方してもらい、洗濯物を外に干さないといった備えを講じたつもりでも、飲みきって薬がない、マスクがないといったこともある。春本番を前に心躍る半面、煩わしい社会問題で憂鬱(ゆううつ)になる時期でもある。