花粉症の対策 「発生源」を減らしたい(2024年3月6日『東京新聞』-「社説」)

 花粉症の季節が到来した。日本人の約4割が症状を訴える「国民病」であり、経済活動にも影響を及ぼしている。被害を減らすには花粉の発生源であるスギの人工林を減らす対策が重要になる。
 花粉症の原因として代表的なスギ花粉の飛散は今年、例年より早く始まった地域が多い。飛散量は大量だった昨年より少ないものの、平年並みか平年を上回る地域が多いとみられる。
 個人ができる対策は、症状を抑える医薬品の服用や、スギ花粉が体内に入ってもアレルギー反応が出ないようにする免疫療法などがあり、広く普及している。
 日常生活ではマスクやメガネの着用に加え、飛散量の多い昼前後と夕方の外出は避けた方がいいとされる。花粉が付きにくい服装や玄関前で花粉を払うなど室内に持ち込まない工夫もしたい。自宅でのテレワークも有効だ。
 日本で花粉症は1960年代に初めて報告されたという。スギ由来を含む花粉症の有病率は98年の19・6%から2019年に42・5%に倍増したとの統計もある。
 政府は昨年10月、花粉の発生抑止、飛散予測、治療の3分野を柱とする花粉症対策をまとめた。
 飛散予測の精度向上や免疫療法治療薬の増産、医師が出す処方箋を繰り返し使えるようにして医療費を抑える「リフィル処方せん」の活用などを進める、という。
 発症を抑えるには発生源対策も重要だ。対策ではスギ人工林を伐採し、飛散量の少ない苗木への植え替えなどを加速させる。
 人口の多い都市から50キロ圏内の人工林に重点区域を設け、10年後に人工林を約2割減、30年後に発生量の半減を目指すという。
 伐採と植え替えを続けるには、人材の確保や林業の活性化、伐採した木材の活用が重要になる。
 対策では林業機械の導入支援のほか外国人材の受け入れ拡大、花粉の少ない苗木生産の拡大、住宅分野でのスギ材需要拡大などを進めるが、自治体や関係団体への継続的な財政支援も不可欠だ。
 厄介なスギ花粉対策を、逆手にとって新たな産業にするくらいの柔軟な発想で取り組みたい。

 

今から出来る!!花粉症対策 - 株式会社サンフーズ|富山県全域の ...