<Q&A>「金利のある世界」で暮らしはどう変わる? 日銀マイナス金利解除決定(2024年3月19日『東京新聞』)

 
 日銀は19日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を修正し、各銀行から預かったお金の一部に0.1%の手数料を課す「マイナス金利」の解除などを決めました。日銀が利上げするのは2007年以来となります。今後は金利がゼロを上回っていく「金利のある世界」が見えてきますが、経済や生活はどう変わるでしょうか。(大島宏一郎、白山泉)

◆今回の決定で住宅ローンへの影響わずか

Q 利上げで暮らしにどんな影響が出ますか。
A 今回のマイナス金利の解除では、住宅ローン金利などへの影響はわずかとみられます。ただ、今後ゼロを超えて金利を上げていく場合、住宅ローンの金利も上がりそうです。
 特に、ローン利用者の約7割が選ぶ変動型はマイナス金利解除の影響が及ぶ「短期金利」と連動。利上げで金融市場からお金が減らされると、銀行同士が市場でお金を融通調達する際のコストが増すため、変動型の金利が上がりやすくなります。企業への短期の貸出金利も上昇する可能性があります。

◆預金の金利は上がる可能性も

Q 金利上昇でメリットはあるのでしょうか。
A 預金金利が上がるかもしれません。利上げはこれまでの「カネ余り」の状態から変わるきっかけとなり、銀行は貸し出しで金利を稼げるようになるため「ビジネスの原資である預金を集める」(メガバンク幹部)必要がでてくるからです。マイナス金利導入後に引き下げられた普通預金金利は「元に戻る」(ニッセイ基礎研究所の福本勇樹氏)可能性があります。

◆経済の状況を見れば大幅な利上げは困難

Q 今後金利はどれくらい上がるでしょうか。
A 日銀の内田真一副総裁が2月の講演で「マイナス金利を解除しても、どんどん利上げしていくようなパス(道筋)は考えにくい」と語り、市場は24カ月先の政策(短期)金利を0.5%になると予想した資料を示しました。日本経済研究センターエコノミスト37人から聞き取った「ESPフォーキャスト」でも、政策金利について24年末、25年末ともに0.0~0.1%との回答がもっとも多く、日本経済の状況を考えれば大幅な利上げは難しいとみています。