塩澤 崇(しおざわ・たかし) 日本最大の住宅ローン比較情報サイト「モゲチェック」COOを務める。SNSのX上では「モゲ澤」として住宅ローンを選ぶ上でのアドバイスを重ねている。2006年東京大学大学院情報理工学系研究科修了後、モルガン・スタンレー証券。2015年9月からMFS取締役COO。
◆激しい競争 変動金利は当面変わらず
住宅ローンを実際に借りる人の金利は「基準金利」という指標で決まります。銀行は短期プライムレート、通称「短プラ」を基準金利としています。この基準金利の過去20年間の動きから考えると、次に変動金利が上がるタイミングは日銀の政策金利が0.1%に上がってからと考えられます。
銀行は横並び意識が強い業界でもあります。日銀の政策だけではなく、各銀行の商品戦略などに左右されますが、結論としてはすぐに変動金利は変わらないと考えます。変数が多いので、ふたを開けてみないと正直分からないところもありますが。
◆ネット銀行も「他行の動き」注目
◆アメリカのような4%や5% 今は考えにくい
日銀の植田和男総裁のこれまでの発言から考えると、日銀は今回、マイナス金利を解除した後も極めて緩和的な環境を続けるというスタンスです。金融緩和というのは、金利を低く抑えて世の中にお金が回りやすい環境をつくるということです。米国のように4%や5%といった金利になる世界は、少なくとも今の日本では考えにくいです。
それに対して日本の今や将来はどうでしょうか。高い金利がつくというよりも冷温のままというのが現実という気がします。残念なのですが。
◆固定に借り換える理由それほどない
―夫婦でペアローンを利用して多額のローンを組む人にとっては不安が広がりそうです。
変動金利が仮に0.1%上がった場合、元本3千万円の住宅ローンは毎月の返済額が1500円ほど上がる程度。いま慌てて固定金利に借り換える理由はそれほどありません。そもそも、銀行側はローンを審査する際、その人や世帯の返済能力をみています。ローンの額が世帯年収の5倍程度であれば返済できるとみなされています。
◆家はいつが買い時?
―これから家を買おうとする人は、いつ動くのが得策でしょうか。
基本的に、日本は今後緩やかなインフレになっていくはずなので、マネー(現金)を不動産などの資産に変えることは理にかなっています。
住宅を選ぶ上では、資産性をどう考えるかがポイントです。都市部の人気が高い物件はマネーゲームのような動きがあるので、資産性を重視する人は参戦してもいい。
一方、郊外は将来的な資産価値の上昇が都市部よりも見込みづらい。それでも、居住性や庭付きの環境、家計のゆとりなどで選ぶ考え方もある。
資産性を選ぶか、居住性や環境を選ぶか、どちらを選ぶのがあなたにとって幸せですかと考えることが基本でしょう。買い時は自分がいいと思った時ではないでしょうか。
◆金融リテラシーが求められる世界に
―これまでのデフレ時代ならばモノよりもお金を持っていた方がお得でしたが、金利が上がる緩やかなインフレ時代では考え方を変えないといけませんね。
デフレ下はいわば、今持っている現金をいかに握り締めていられるかというゲームでした。インフレ下では、キャッシュをいかに早く資産に変えるかというゲームに変わります。時代の価値観は真逆になるのです。
住宅ローン金利が上がるから「早く繰り上げ返済をしよう」というのは今後、おすすめしません。昔と違い、今は繰り上げ返済をするくらいなら、投資をした方がましです。なぜなら、住宅ローンの金利よりも、資産運用をした方が利回りが高いからです。