<Q&A>日銀がついに解除した「マイナス金利」とは 効果はあった?解除されてどうなる?(2024年3月19日『東京新聞』)

 日銀の金融政策決定会合は18日から2日間の日程を終えました。春闘で大企業の賃上げが相次いで明らかになった直後の今会合では、大規模な金融緩和策の柱である「マイナス金利」を解除しました。2016年2月に導入されたマイナス金利がどのようなもので、解除後どうなるか整理しました。(大島宏一郎)
18日午前、金融政策決定会合に出席するため日銀本店に入る植田和男総裁=代表撮影

18日午前、金融政策決定会合に出席するため日銀本店に入る植田和男総裁=代表撮影

Q マイナス金利とはどんな政策ですか。
A 「銀行の銀行」である日銀が、銀行から預かる「当座預金」に通常は利子が付くところ、逆に手数料として支払ってもらう仕組みです。ただ預金全額に適用すると金融機関への影響が大きくなるため、政策の導入前に預けられた残高はプラスの金利を据え置き。その後増えた残高の一部を「ゼロ金利」とし、さらに超過した分に「マイナス金利」を課す3段階となっていました。解除後はマイナス部分がなくなり、0~0.1%程度に引き上げられ段階の区分も変わる可能性があります。
Q なぜ金利をマイナスにしたのですか。
A 銀行が日銀への預金を増やすと「損」をするため、代わりに企業への貸し出しや投資に使うことを期待した政策でした。ただ少子高齢化などで市場の縮小を見越した企業の資金需要は乏しく、「貸出先は少ない」(メガバンク関係者)のが実情。日銀の統計によると、1月の預金残高と貸出残高の差は約335兆円で「カネ余り」の状況が続き、思うような効果は得られませんでした。

普通預金金利が上昇しそう

Q 「余ったカネ」はどこへ。
A 「貸出先がなく困った銀行は国債や外債を買うようになった」(日銀OB)といいます。大手行(三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそな、埼玉りそな)の日銀への当座預金残高は1月分で186兆円ありますが、マイナス金利が適用される預金はゼロ。国内外の投資に強みのあるメガは、積み上がる預金を債券に回し、マイナス金利を回避してきました。一方、貸出先が限られる地方銀行はマイナス金利でも預金せざるを得ませんでした。
Q 生活者への影響はありましたか。
A 低金利の上、貸出先も見つからない銀行にとって「預金は毒にも薬にもならない」(大手行の関係者)位置付けに変化。メガは普通預金金利を年0.02%から年0.001%に引き下げるなど、預金金利は下がりました。短期金利の低下につられ、長期金利(10年物国債の利回り)も低下。生命保険会社の中には契約時に約束した利回り(予定利率)を確保できず、貯蓄性の高さが魅力とされた一時払い終身保険の販売を一時停止する例もありました。解除後は、逆に預金金利が上昇するなどの動きがありそうです。