自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて衆議院政治倫理審査会が開かれ、安倍派の下村・元政務調査会長は、キックバックが続けられたいきさつについて「いつ誰がどんな形で決めたか本当に知らない」と述べ、関与を否定しました。
派閥の会計処理「全く関与していなかった」
今回の問題を受けて衆議院で18日政治倫理審査会が開かれ、安倍派の下村・元政務調査会長による弁明と質疑が行われました。
この中で下村氏は「国民に多大なる不信と疑念を抱かせてしまったことを心より謝罪する」と陳謝しました。
その上で派閥の会計処理に関して「全く関与していなかった。収支報告書について何らかの相談を受けたり、事務局に指示したこともなく、還付の事実も知らなかった。長年の慣行として会長と事務局長で不記載も含め決めてきたことではないか」と説明しました。
またおととし4月に派閥の会長だった安倍元総理大臣のもとで行われた幹部会合について「安倍氏から、『現金の還付は不透明だからやめよう』という話があったが、不記載であるとか、違法であるという話は全く出なかった」と述べました。
さらに、安倍氏が死去した後のおととし8月にパーティー収入のキックバックの取り扱いを協議した派閥幹部の会合について「還付をやめることを前提とした議論だった。還付以外の形での戻し方として議員個人のパーティー券を派閥が購入して協力する形が取れるのではないかと議論になったが、結論が出たわけではなく、この会合で還付の継続を決めたということは全くない」と述べました。
一方、この時のやりとりをめぐり、ことし1月の記者会見で「還付分は『合法的』な形で出すという案が示された」と発言したことについては、「派閥で個人のパーティー券を買うのは150万円以内という意味での合法的な形ということだ。還付が不記載であることは、私自身は知らなかったし、その前提で話をしたわけではない」と述べました。
政治資金規正法では、1回の政治資金パーティーで1つの団体や個人1人が購入できるパーティー券の上限を150万円としています。
立憲民主党の寺田学氏は「個人が開くパーティー券を派閥が買うのではなく、なぜ素直に派閥から寄付をするというアイデアが出なかったのか」とただしました。
これに対し下村氏は「還付の復活は、8月の会合では全く念頭になかった。ノルマ以上の人たちに、どういう戻し方があるかという中で、個人がパーティーを開いた時に派閥がパーティー券を協力するということについて、いろいろな方々から『そういう方向でいいのではないか』という議論があった」と述べました。
そしてキックバックが続けられたいきさつについては「私自身がいる場所で決めたということは全くなく、いつ、誰が、どんな形で、どのように決めたかは本当に知らない」と述べ、関与を否定しました。
【各党の反応】
自民 丹羽氏「幹部の説明には疑問が残る」
自民 茂木幹事長「政治的責任 しっかり対処していくこと重要」
自民党の茂木幹事長は記者会見で「これまで審査会に出席した議員以上の発言はなかったと聞いている。いずれにしても国民から非常に厳しい目が向けられており、事実関係を明らかにしていくと同時に、政治的責任についてもしっかり対処していくことが重要だ」と述べました。
立民 安住国対委員長「正直に話そうという姿勢 全く感じられず」
維新 遠藤国対委員長「真相解明はできないという質疑内容」
共産 小池書記局長「一切何も語らなかった 今までで最悪」
【政治倫理審査会でのやり取りは】
「国民に多大なる不信と疑念 心より謝罪」
「還付される扱いになっていることを知らなかった」
「派閥のパーティー券収入 ノルマ分だけと指示があった」
「ノルマ超過分は使用されることなく保管」
「『裏金』何かに使用した事実はなかった」
「派閥事務局からの誤伝達もあり不記載」
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「派閥の会計には全く関与していなかった」
「当時の安倍会長から『派閥からの還付をやめよう』と聞いた」
「不記載を知ったのは去年暮れ以降のこと」
「私が派閥からの還付金が派閥や個人の政治団体の収支報告書で不記載となっていることを知ったのは、私の事務所での派閥からの還付金の有無やその取り扱いについて秘書に確認した去年暮れ以降のことだ。それまでは知らなかった」
「清和政策研究会での収支報告書の不記載については私も告発を受けたが、検察官に対し私自身の認識を説明し、必要な捜査が遂げられた上で不起訴という判断になったと認識している。国民の政治への信頼を損なう結果となったことは痛恨の極みで、改めておわび申し上げる」
「今後 透明性を持った政治活動を行う」
「長年の慣行だったとはいえ、清和政策研究会の中堅や若手に大変な迷惑をかけてしまったことを、かつての幹部として申し訳なく思っている。今後は収支報告書の正確な記載を徹底し、透明性を持った政治活動を行うと約束する。資金の透明化を図る手立てもしっかり講じる対策を行うことで国民の信頼を取り戻せるよう努力し精進していく」
「政治資金問題の説明 経理・会計の報告 全くなかった」
幹部協議「寄付せずパーティー券 派閥購入は合法的という意味」
下村・元政務調査会長はおととし・2022年の8月の幹部協議でのやりとりについて「今後の派閥の運営の仕方や、安倍会長の葬儀についての話が中心だった。4月に還付をやめることを所属議員に連絡していたが、すでにチケットを売ってしまった人から、『還付してもらいたい』と言われたという話が出てきた」と説明しました。
その上で「『戻してほしい』という方々にどんな方法がとれるのかということで、個人でパーティーを行った際の券を派閥が購入する方法があるのではないかということをある人が言った」と述べました。
そして「寄付をしないでパーティー券を派閥が購入することは合法的という意味であり、そのことについていろいろな議論があった。しかし誰が最初に言ったのかは実は私も覚えていない」と説明しました。
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幹部協議「還付継続を決めたということは全くない」
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「150万円以内という意味で合法的」
立憲民主党の寺田学氏は「派閥のパーティー券をノルマ以上に売った個人に返すときに、個人が開くパーティー券を派閥が買うのではなく、なぜ素直に、派閥から寄付をするというアイデアが出なかったのか。派閥で買う案を出したのは誰か」とただしました。
これに対し下村・元政務調査会長は「2022年4月に安倍会長から還付はやめるという話があり、皆さんに連絡していた。それを復活するということは、8月の会議では全く念頭になかった」と述べました。
その上で「ノルマ以上の人たちに、どういう戻し方があるかという中で、個人がパーティーを開いた時に派閥がパーティー券を協力するということについて、いろいろな方々から『そういう方向でいいのではないか』という議論があった。ことし1月31日の記者会見で特定できる記憶があったわけでなく『ある人が』ということを申し上げた」と述べました。
キックバック継続「どのように決めたかは本当に知らない」
還付 不記載「いつ始まったか はっきり申し上げることできない」
幹部協議「結論が出なかったのが基本」
「長年の慣行で会長 事務局長で決めてきたことではないか」
【発言が注目される下村博文氏とは】
1.なぜキックバックは継続されたのか?
これまで衆参両院で開かれた審査会で大きな焦点となってきたのが、安倍・元総理大臣が中止を指示したとされる議員側へのキックバックが、なぜその後、継続されたのかについてです。
キックバックの継続について話し合いが行われたとされる、おととし8月の安倍派幹部らの会合には、すでに審査会で弁明を行っている西村氏、塩谷氏、世耕氏、そして下村氏が参加していました。
今月1日の審査会では、西村氏が「ノルマ以上に売った議員から、返して欲しいという声があり、8月の上旬に幹部で集まってどう対応するかということを協議したが、そのときは結論は出なかった」と述べたのに対し、
塩谷氏は「還付をどうするか、困っている人がたくさんいるから、『しょうがないかな』というくらいの話し合いで、継続になったと理解している」などと説明しました。
野党側が「説明が食い違っている」と指摘する中、参議院の審査会で世耕氏の発言に注目が集まりました。
しかし、世耕氏は、そのときの会合では「何か確定的なことは決まっていない」とした上で、「どこで誰がキックバックの継続を決めたのか」と問われると、「誰が決めたのか、私自身知りたい」などと答え、派閥幹部による意思決定がどのように行われたのか、依然、疑問は解消されていません。
2.違法性の認識はあったのか?
おととし8月の協議をめぐっては、下村氏がことし1月の記者会見で「還付分は各議員個人の資金集めパーティーに上乗せし、収支報告書で合法的な形で出すという案が示された」と述べています。
この「合法的な形」という発言について、野党側は安倍派幹部が違法性を認識していた可能性を示していると指摘しています。
また、下村氏が言う「案」を誰が示したのかについても、世耕氏が「記憶にない」と述べるなど明らかになっておらず、下村氏の説明が注目されます。
3.いつキックバックは始まったのか?
もう1つの焦点は、キックバックが始まった経緯や時期についてです。
これまで塩谷氏が「20数年前から始まったのではないかと思うが、明確な経緯は承知していない」と述べ、世耕氏は「少なくとも10数年前には始まったと思うが、いつ始まったのか分からない」と述べています。
また西村氏は「派閥の歴代会長と事務職の事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことで、会長以外の幹部が関与することはなかった」などと語っています。
歴代の安倍派の会長は、安倍氏、細田氏、町村氏がすでに死去しています。
町村氏の前の安倍派の会長で、派閥への強い影響力を持っていた森・元総理大臣が関与していたかどうかについて、これまで出席した幹部らは、「自民党のヒアリングで森氏の関与は認められていない」などと述べるにとどまっていて、こうした点についても下村氏がどのような認識や考えを述べるのかが注目されています。
下村氏の修正の内容は
安倍派の事務総長を務めた下村氏は、自民党が行ったアンケートで、2022年までの4年間に不記載などの金額が、あわせて476万円あったとしていて、年ごとの内訳は2019年が36万円、2020年が124万円、2021年が188万円、2022年が128万円となっています。
自身が代表を務める政治団体「自民党東京都第十一選挙区支部」の2022年までの3年間の政治資金収支報告書に派閥からの収入、あわせて440万円を記載していなかったとして1月31日に収支報告書を訂正しています。
下村氏は自身のホームページで、ノルマを超えた派閥のパーティー券の販売代金について「専用口座で管理し、一切支出していない」とした上で、「寄付として記載されるべきものだったが、派閥事務局からの誤った伝達もあり、記載されないままとなっていた」などとしています。